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飲みすぎにはご用心!?

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飲みすぎにはご用心!?

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「キャー!」


 と、突然人ごみの中から叫び声が上がる。
 声をあげたのはどうやら神社で働く巫女さんのようだ。

「貴様、私を見ているなっ! ならばじっくりと見てもらおうか!」
「イ、イヤーッ!」

 巫女さんはそういうと全速力で走り去る。

「ふっ、俺様の肉体が美しすぎて直視することが出来なかったようだな」

 そんな事を言いながらご満悦そうな笑みを浮かべるのは赤いマスクに赤いマフラー、筋肉質な身体を薔薇学マント一枚のみで覆うへんた……ではなく、変熊 仮面(へんくま・かめん)
 彼の目的は初詣なのだが、そのついでにといまは巫女さんに自分の肉体美を見せ付けていた。

「さて、次はどの巫女に俺様の肉体美を見せてやろうか?」

 マントを翻し、次の獲物を探し出す変熊仮面。
 そんな彼の後姿をじっと見つめる青い瞳をした白金の髪の女性――ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)はぽつりとつぶやく。

「日本のお正月という風習はずいぶんと変わっているのですね」

 外国人である彼女には日本風の初詣や縁日のようなものは珍しく、こうして見物に空京神社にやってきていた。
 だがガートルードは大きな間違いを目にしてしまった。しかし残念なことにそれを正すものは彼女の近くにはいなかった。

「正月からなんか変なのがいるみたいね」

 と、ガートルードと同じように変熊仮面を見ていた晴れ着姿のセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が隣にいた恋人セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)にいった。

「そうね。まあでも正月だし別にいいんじゃない?」

 セレアナはあまり興味がないのか素っ気なくそう返事を返す。

「いいのかなー」
「そんなことよりせっかく神社に来たんだし、おみくじでも引きましょうよ」
「あっ、そうね。おみくじを引かなきゃ神社に来た意味がないわよね」
「……セレン、それって何気なく神様に対して失礼なこといってない?」

 2人はそんな会話を交わしながら近くにあったおみくじ売り場へ向かう。
 そして売り子の巫女にお金を払うと、たくさんの棒が入っている箱を受け取った。

「よーし、狙うは大吉よ!」

 セレンはそういうと晴れ着の袖を捲くってジャカジャカと勢いよく箱を振る。
 すると箱に開けられていた小さな穴からスルリと棒が出てきた。そこに書かれていた番号をセレンは巫女に伝える。

「はい、ではこちらになります」

 巫女からおみくじを受け取ったセレン。彼女はセレアナには見えないようにゆっくりとそれを開いていく。

「セレン、結果はどう?」
「……」
「もしかして悪かったの?」

 俯いたまま何の反応もしないセレンに対してそういったセレアナ。
 だが顔を上げたセレンは満面の笑みを浮かべ、おみくじを大きく広げてセレアナの前に突き出した。

「じゃじゃーん! 見てよセレアナ、狙い通りの大吉よ!! いやーこれは幸先がいいなー」

 セレンがそういった時だった。
 少し離れた場所にあったおみくじ売り場から悲鳴があがった。

「なに? またさっきのアイツ?」

 大吉を引いて盛り上がっていたところに水を差されたような気持ちになったセレンは眉をひそめる。
 だがその顔はすぐに驚きの表情に変わった。

「なっ、なによアレ……まさかこれが、“大当たり”ってことなんじゃないでしょうね?」

 セレンは突如として現れた巨大ゆる族の姿を見ながらつぶやく。

「まだ去年の厄を祓い切ってないんじゃない?」

 セレンと同じように巨大化したゆる族を見上げながら、セレアナはそんなツッコミを入れた。