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リアクション
第五章 残りの皆にツッコめ!
「なんで『賢者の石』を売ってくれないの? ボクじゃ駄目なの?」
「いや、そう言われましてもこちらは病院ですから……」
病院の受付で押し問答しているアゾート・ワルプルギス。
「アゾート……言いたい事は山ほどあるが、とりあえず元にもどしてやらなきゃな」
彼女の元に現れたのは、ヴェルデ・グラント(う゛ぇるで・ぐらんと)。
「そのうち、物々交換とか言い出して服とか脱ぎそうな勢いだな」
ヴェルデの振りに、アゾートが反応する。
「物々交換だね! ほら、ほら」
「お、ちょ!」
ぱっぱっと着ている物を脱ぎ捨てていくアゾートを、ヴェルデは慌てて押しとどめる。
「普通に賢者の石とか売ってるわけねーだろ! 希少価値もあったもんじゃねぇ」
「ひゃうっ!」
ヴェルデの軽いツッコミに、びくんとアゾートの身体が動く。
「そんな簡単に手に入ったら、賢者の石関連のシナリオの存在意義がなくなるだろ」
「ん……やぁあん」
正論からの攻めに、びくびくと反応していくアゾート。
よし、とヴェルデはアゾートに向かってポーズを決める。
「病院は量販店じゃねぇし、賢者の石は売り物じゃねぇ!」
「ひゃアん……っ」
ふるふると身体を震わせるアゾート。
しかし、ヴェルデはそこに何か違和感を感じる。
(昇天、してねぇ?)
アゾートの様子は先程までと変わっていない。
どこか、ぼうっとした様子のままだ。
「くそっ、何がいけなかったんだ?」
「あの、ね…… もうちょっと……」
「ん?」
ヴェルデの手を、アゾートが取る。
「量販店じゃなくて……病院には、誰がいる?」
「誰って、医者とか?」
「そう。だから……?」
アゾートは、俺を導こうとしている?
彼女の言葉から、必死で答えを探すヴェルデ。
医者、イシャ……そうか!
「ここは『石屋』じゃなくて『医者』だ!」
「そ、そこ……あアぁああンっ!」
アゾートのたどたどしい言葉に導かれ、ヴェルデが掴んだツッコミ。
そのツッコミに、アゾートは昇天させられた。
「いけませんわイングリットさん!」
イングリット・ネルソンに駆け寄ったのはセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)。
ツッコまれるかと期待に満ちた表情を浮かべるイングリットに、セシルはごくごく真面目に告げる。
「女性の場合は胸を隠すためにさらしを巻きませんと」
そう言うとさらしを取り出して、イングリットにぐるぐると巻き始める。
「あぅ……そ、そうなのですか? 勉強になります」
「あとは、ヘアスタイルも重要ですわ」
更には髪の毛を纏めると、髷のように結い始める。
イングリットの髪を纏め終わると、次は自分の髪を。
このままでは、女性二人で相撲が始まってしまう!
そこに、セシルのパートナー、グラハム・エイブラムス(ぐらはむ・えいぶらむす)がふらりと近づく。
「おー、やってんな。俺も応援するから、がんばりな」
ボケ煽り!
ツッコむかと思いきや、更に二人をたきつけるグラハム。
「ちょうどここに、RIKISHIの空中SUMOU映像があるぜ」
何でそんな特殊な映像を所持しているのか、携帯を開くと謎映像を見せる。
「なるほど…… これは、『気』を使うのですね」
「『気』! さすが古流武術!」
頷くセシルとイングリット。
残念なことに、セシルは真剣だ。
(ボケと天然の連鎖で面白れーことになったが…… こっから、どうすっかな)
煽ったグラハムにツッコむ気配なし。
「こんな時こそ、わしらの出番やでえ〜!」
そこに現れた救世主。
「我ら、ツッコミ五人衆!」×5
「行け、瀬山!」
「おう!」
日比谷 皐月の声に、瀬山 裕輝が前に出る。
「いや、相撲って古流武術でもあるけど、一応神事なんやからなぁ」
「あっ」
瀬山の軽いジャブに、今まで一度もツッコミを受けたことのないイングリットの身体が早くも反応をはじめる。
「どうしたんですの、イングリットさん?」
「真面目か!」
不思議そうな顔をするセシルにも、一応ツッコむ。
反応がないのを確認すると、瀬山はイングリット一人に標的を絞る。
「そこで、衣装から入るとかないやろ! 恥ずかしないんか!」
「はぐぅううっ!」
ツッコミ完了。
昇天するイングリットに驚き介抱しようとするセシルらに、瀬山は背を向け歩き出す。
次の獲物へ。
「中の人なんていないんだからぁあ! 証拠を見ろよ、見てくれよぉおお!」
往来で一人叫ぶ魔威破魔 三二一。
そこに現れる5人の人影。
「……イラスト入りの公式NPCなのに、誰も構う人がいないとかなんじゃらホイ!」
「……あぅううんっ!」
蚕 サナギの言葉に、手に持っていたナイフを取り落し地面を転がる三二一。
「やったぜベイビー☆」
得意の死語を操りガッツポーズを決めるサナギだが、三二一のソレはツッコミへの反応なのか、純粋にダメージを受けたのか判別が難しい。
「いや、まだだ」
皐月の言葉に、瀬山が続ける。
「……服の『中』には着とる奴がいるからなぁ」
「あふっ」
「着ぐるみじゃなくて生身やないか!」
「あ……ひィいいいっ!」
三二一、昇天。
ずるずるずるずる。
「全く、ソルはだらしがないね。すぐ女にデレデレしがやって! べ、別に嫉妬してるわけじゃないぜ。ただちょっと面白くない気持ちになっただけで……
雅羅へのツッコミが失敗したソル・レオンフィールドは、まだリータ・バーニングに引きずられていた。
「く、くそぅ、雅羅……」
悔しそうに呟くソルの耳に、聞き覚えのある笑い声が届いた。
「あははははははっ!」
「いい加減にしろよ、姉さん!」
サニー!
ソルが雅羅に会う直前まで考えていた少女、サニーの声だ。
そうか、彼女も取りつかれていたのか。じゃあここで彼女を……
再び下心に火のついたソルの眼前で。
「そりゃ『可笑しい』じゃなくて『お菓子』だ!」
「あはんっ!」
皐月にツッコまれ、サニー昇天。
「あ……」
「ほら、行くよ」
そのままソルはリータにお持ち帰りされることになった。
説教後、リータに身も心も慰められたとかされなかったとか。
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