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リアクション
★プロローグ
2022冬季ろくりんピック――。
それは地球の国と国がスポーツを通して戦うそれとは似て非なり、東西の2つに分かれて勝負事を行う。
そうして始まった冬の祭典は今日、大型モンスター狩り――即ちハンティングで争われる。
「ちょっと、ろくりんピックのVにしては簡単すぎません? え? もう(マイク)入ってる? (カメラ)回ってる? んっ、オホンッ! 失礼しました。私、今回の雪山モンスター狩り対決の実況を務めさせていただきます、卜部 泪(うらべ・るい)です」
「晴れ舞台でいきなりの失態だネ! ミーを見るネ。ろくりんピックに合わせて新調したタキシードネ! ビシッと決めてきたネ」
「素敵です! というわけで――」
「ウェイ、ウェイ、ウェイ(Wait!)、ヘイ、泪、ちょっとはミーのフリで話を広げてみたりしないのかネ!?」
「今回の公式実況は私、卜部泪と茅ヶ崎 清音(ちがさき・きよね)さんのパートナーでマスコット的立場でもあるキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)でお送りしていきたいと思います」
「オーマイガッ! でも晴れ舞台だし、ミーは寛大な心で許しちゃうネ! なんたってミーはパラミタオリンピック機構の理事ダカラ、当然、正式競技のルールは全部網羅してるワヨ。今回のビッグ・モンスター・ハンティング・バトルはネ〜――」
「さてさて、舞台となる雪山ステージにてリポートをしてくださるリカインさ〜ん」
「Oh――」
*
泪に言い様に流され頭を抱えながらオーバーリアクションするキャンディスの画から、雪山が頂上から舐めるように下へ下へ移されていき、視聴者は、
「てめぇら、寒いからって縮こまってちゃ話にならねぇッ! 心の導火線に火はついているかッ!? ボンバァァァァッ!」
――喋るアフロを目撃した。
「はーい、色々と寒いです。そんな私は今、東シャンバラチームの雪山ステージにいます」
アップで映っていたアフロ――ヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)がフェードアウトすると、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が引き攣った笑みを浮かべながらマイク片手に手を振った。
「現在氷点下うんちゃら度は間違いないですわ」
そう言ってリカインはヴィゼントの頭をコンコンと叩くと、小気味よい音が跳ね返ってきた。
「お嬢……こいつを溶かすには、後塵を拝んでいる東軍に熱い戦いで勝ってもらわないと、いけないですぜ……」
「えー、そういうわけで、この『寒さ』ですので、負傷したら大変です。『ケガ』なされる前にアナウンス等々を試みたレポートをしていきたいと思いますわ」
画面端の小窓のワイプで泪がウンウンと頷いていたのが、視聴者に――リカインと泪に対して――大変だなー、と共感を呼んでいた。
「それでは、実況席にお返しします」
*
「はい、では改めまして、雪山モンスター狩り対決のVTRをご覧ください」
「Check it outネ!」
「ちょっとキャンディスさん、かぶちゃってます――ッ」
ドガフッ――!
泪にキャンディスが押しつぶされた所で、再び画面が切り替わった。
*
舞台は連なる雪の双子山で行われ、それぞれ片方の山を自軍のステージとして狩場とする。
雪山は大きく4つに分類され、山肌の北――狭いが高所をとれる――を雪山1、同じく南――広く視界良好な平坦――を雪山2、そこから繋がる洞窟をそれぞれ洞窟1――狭く迷路のような構造――と2――広く高低差がある――とする。
ハンター達は自軍山であれば移動は自由である。
なお、狩りはポイント制になっており、その総合点で最終的に決着をつけるとし、対象となるのは以下のものである。
1つ、大型モンスター。
雪火竜と大猿獣が生息しており、捕獲すると300点となる。
なお、捕獲に失敗しても討伐すれば250点を加算する。
2つ、小型モンスター。
こちらは氷小龍、突撃猪、痺れ虫が生息し、契約者たる諸君らとしては道の小石にすぎないだろう。
従って、1匹につき2点を加算する。
3つ、採取。
全ての場所からキノコ、希少草、結晶が採取できる。
争いごとに自信がない物は採取に力を注ぐとよいだろう。
加えてその希少価値次第ではあるが、1つに付き1〜5点を加算する。
以上、3点の総合点を制限時間30分で争っていただくことになる。
それではハンター達よ、用意はできたか――!?
*
「雪山モンスター狩り対決ぅ――」
「Startネ!」
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