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 第四章


「えー、それではぁドラゴンを倒した勇者たちに! 乾杯ッ!」

 掛け声とともにあちこちで歓声とグラスのぶつかりあう音、拍手などが鳴り響く。
 ドラゴンを倒し村を救ったとあって特別に地上へ戻ることを許された。おかげで討伐チームのメンバーは特に持てはやされているようだ。
 ようやく叶った念願にみんなが本当に心から嬉しそうにはしゃいでいる中、ニケは一人室内から様子を見ながら顔を曇らせていた。


「お嬢さん、すまなかったなぁ。わしの調整が不十分だったせいで、あの子が暴走してしまったんだろう。本当に申し訳ないことをした」
「いえ、いいんですよ。あなた方はできる限りの事をしてくれましたから……」
「でも、わしらがもっと外の技術を知ってさえいればこんなことにはならなかったかも知れないと思うと……」
「……いいんですよ。私が、未熟だから。だから彼女を止められなかっただけです。なおしてもらっただけでも、本当に嬉しかったんです。彼女がただの形だけの人形にならなかったのは、あなたが精一杯頑張ってくれたから、だから……」

 頭を下げたドワーフの技術者との会話を思い出して、ニケは深く溜息をつく。
 そう。誰が悪いわけではないのだ。

「私の力が、足りないから……」

 メアリーの起こした落盤で痛めた足をさすりながら、ニケは彼女を思うのだった。


「……あ、青夜さん、す、ストップ……!」
「あるぇー? おかしいなぁ。なんでこうなっちゃうんだろう〜」

 村で作ったお酒を注いでいるだけなのに、なぜか久遠がグラスに注ぐとお酒の色が鮮やかなドドメ色に変わっていく。

「兄さん、青夜さん、作る料理が暗黒化する呪いか何か受けているんじゃないでしょうか……」
 海月がくらりと頭痛を感じて御宮にしがみつく。

「うーむ……青夜、怖ろしい子……!」

 御宮もまたむぐむぐとモグラ焼きを頬張りながら海月とともに久遠の動向を見守っているようだった。


「さすが私の見込んだ連中なだけあるわね」

 いつも以上によく笑うエルサーラを見て、ペシェはカップを慌てて奪い取る。

「エル、嬉しいのは分かるけど飲みすぎだよ。それになんでお酒をティーカップで飲んでるのさ」
「あらいいじゃない。ペシェ、あなたもたまには付き合いなさい」

 ぐぐっとカップになみなみ注がれたお酒をペシェの口元に無理やり運んでいく。

「ちょ、エル、やめてよ! 僕まだ未成年なのに!」
「なぁに? 私のお酒が飲めないっていうの?」
「うわーん! この人酔ってるよぅー!」

 いつも以上に上機嫌な彼女。
 ペシェが振り回される日々は続きそうだ。