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ツァンダを歩く

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ツァンダを歩く

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 セレンフィリティとセラアナの二人は慣れた足取りでアウトレットモールの中を歩いている。どこに向かうのか教えられていない耀助の期待が高まる中、含みを帯びた表情を絶やさないセレンフィリティは角を曲がる。
「はい。あたしが見せようと思っていた場所よ」
 角から彼女の声が響き、耀助も同じように角を曲がる。そこには壁一面にポスターが貼ってあった。耀助はその光景に何度も驚き続ける。そこには、壁のポスター全てにはセレンフィリティと、セレアナが映っているのである。耀助の視界は二人の女性に埋め尽くされ、その中心に本物のセレンフィリティが立っている。
「これはなんというか……そのすごいですね」
「すごいでしょ? とある高級ブランドがリリースした今年の最新水着のポスターよ。ちょうどセレアナと一緒にモデルをやったから」
「今日はこれを確認しに来たのよね」
 セレアナが分かり切ったような表情をしており、カメラを見つけると落ち着かないように手を後ろに回していた。
 ポスターには水着姿の二人が映っているが、ただ映っているだけではない。大胆に肌を晒している二人はその水着をアピールするように扇情的な格好で映っているのである。ポスターは何種類もあるがそのどれもが、胸の谷間や、腰のくびれが強調されており、大人としての魅力を醸し出していた。
「これで興奮しなかったら逆に失礼かというくらい似合っています。モデルをやるくらいですね」
「そう思う? ねぇ。このポスターと同じ水着をこの服の下につけているとしたら、どうする?」
 周囲の人間がセレンフィリティの言葉を疑った。いたずらに彼女は微笑むと、チムチムの隣で服の上着のボタンに手をかける。
 真っ先に反応したのはセレアナであった。額に青筋を立てて彼女の手に腕を伸ばす。
「何をするつもりなの? まさかとは思うけれどカメラの前で肌を晒すつもり?」
「だって、ここにあるポスターを映してもらうよりかは、本物を映すほうがよりよいと思わない? 耀助とチムチムと私のスリーショットなら迫力あること間違いないわ。男女とぬいぐるみなのだから」
「それはいい案アルね」
 意外に乗り気なチムチムの隣で、レキはポスターを眺めていた。反面耀助はというと、火照ったように顔を惜しげもなく見せて、口からは念仏のように水着と繰り返している。
「水着……水着……」
「あれ? ちょっとからかいすぎちゃったかな? 意外に押しには弱いのね」
「あんまり羽目をはずしなさんな」
 セレアナが彼女の頭を軽く小突くと、セレンフィリティは舌をぺろりと出して、子供じみた仕草で悪ぶれる。結局、その場は普段着のセレンフィリティとチムチムたちを中心とした集合風景を取ることで彼女たちの活躍は終わりを告げるのだった。





 セレンフィリティたちとレキたちと別れた耀助はアウトレットモールの出口を探していると、見知った顔に出会う。
「あれれ? よーちんでしょ? 偶然だね?」
 ノベルはソフトクリームを片手に耀助とばったり出会う。耀助は先ほどの興奮がまだ冷めきれていなかったが、ノベルの素直な表情が新鮮に映っていた。
「やぁノベル。偶然だね。今日はずっとここにいたの?」
「ちょっと前に来たばかりなんだ。この食べているものはね……」
 どうやらソフトクリームが彼女の目当てだったらしい。耀助も彼女に話を伺う姿勢へと変わっていた。クリーム色のソフトクリームを舐めている様子が一番様になる位置をカメラが探していた。
「そこのよーちん!! ちょっと邪魔させてもらうで!!」
 突然カメラが映すものが黒く変わると思うと、カメラマンの意志に反してカメラがぐっと動く。突如として現れたその人物がカメラを掴み、自分の顔へと移動しているらしい。やがてその人物がカメラの前に姿を現す。
「はーい、スタジオの卜部さん見ていますかー? 妬み隊隊長の瀬山 裕輝(せやま・ひろき)といいます。よろしくな〜」
 カメラを自分の顔で占領したまま、裕輝は大声を張り上げる。彼の背中を眺めているノベルと耀助はどう声をかけたらいいのか言葉に窮していた。しかしぐるりと裕輝は首を曲げると今度は耀助に対して顔面を近づける。
「なんやねん。固まってしまって『今日はどうして来たのですか〜』とか『妬み隊とは?』とか聞いてくれてもいいやろ?」
「あはは。すみません。あまりの奇抜な登場でしたので。それでは気を取り直して、今日はどうして来たのですか?」
「愚問やな。俺がここに来たのは一つやで。この妬み隊の栄華を見せつけるためや」
 前髪をさらりと払うと、裕輝は得意げに言い放つ。口をぽかんと開けて、呆然としている耀助を前に、もう一度得意げに笑う。その二人の様子を、ノベルは傍でソフトクリーム片手に眺めていた。