リアクション
エピローグ8
数日後 シャンバラ教導団本校 校長室
数日後。
白竜は先日、イリーナの口から語られた情報と、それをもとに仲間達が調査した内容を団長である金 鋭峰(じん・るいふぉん)に報告するべく、彼が待つ校長室へと赴いていた。
「――以上が現時点で判明している『偽りの大敵事件』に関する事実です」
報告を終えた白竜はただ黙って、鋭峰が口を開くのをじっと待つ。重い沈黙の後、ややあって鋭峰は口火を切った。
「今になってこの事件が関わって来るとはな。当時行われた調査の結果、結局は実行犯である人物が鏖殺寺院の関係者だったという結論に達したが、確かに一部の者が『九校連が裏で糸を引いていた』などという陰謀論を騒いだのも事実だ」
そう切り出した後、鋭峰は白竜に問いかけた。
「まさか叶白竜中尉、君ほどの男ともあろうものがそんなゴシップを信じているのかね?」
鋭峰から鋭い眼光とともに問いかけられ、さしもの白竜も思わず返答に窮してしまう。だが、鋭峰は白竜の返事を待たずに言い放った。
「――いいだろう。やってみるといい」
些か唐突な言い方に、白竜は問いかけられた時の緊張も一瞬忘れ、思わず聞き返していた。
「と、仰いますと……?」
鋭峰は別段声を荒げたりなどせず、いつもの落ち着き払った面持ちと声音で答える。
「そのままの意味だ。そこまで言うなら今回の調査で君が得た『偽りの大敵事件』の真相とやらをもう少し調査してみたまえ。私はもとより、他校の幹部にもその件に関してやましいことなど一つもないのでな。調べたければ好きにすればいい。たとえ小さな嫌疑とはいえ、この際、完全に潰しておくのも悪くない。どうせこの調査も私や他校の幹部――九校連の潔白を改めて証明する結果に終わるに違いないだろうからな」
淡々と言い切った鋭峰の言葉を聞き終えると、白竜は背筋を正して敬礼する。
「叶白竜中尉、了解しました」
すると鋭峰は満足そうに頷き、白竜へと言葉をかけた。
「期待しているよ。私は叶白竜という男を高く買っている」