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うそ!?

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うそ!?

リアクション

 
「うしょしょしょしょ!!」
 勝ち誇った鷽の周囲から、謎の古代遺跡のような尖塔が次々と生えてきました。
「あれこそは、『機関』の本拠地!」
 突然現れたドクター・ハデス(どくたー・はです)が、鷽の周囲の遺跡を指さして言いました。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス! ククク、いよいよこの世界を征服する日がやってきたな! 世界を裏から操る『機関』の本拠地を我らが乗っ取り、そのまま世界の支配権を我らオリュンポスの物とするのだ!」
 高らかに、ドクター・ハデスが宣言しました。設定的には、何を隠そう、実は秘密結社オリュンポスは、世界を『機関』の支配から解放するために組織された秘密結社なのです!
「あっ、ハデスさんだ」
 オーバーアクションで目立つドクター・ハデスを見つけて、下川 忍(しもかわ・しのぶ)が走ってきました。百合園女学院に通う以上、当然ですが、フリルのついた白いエプロンドレスの魔法少女コスチュームメイドCを着ています。心なしか、足取りが軽くなっているようです。何かを取り外したのでしょうか。
「はははは、『機関』の先兵である鷽に手こずっているようだな! 男を見せてみろ!」
 なぜか、勝ち誇ったようにドクター・ハデスがコア・ハーティオンにむかって呼びかけていました。
「そうだな。そうか、僕が男だってことは、前にも言ってあったな。でも、今は身体は女になれたんだ。だから、逆にちょっと男っぽい言葉になってるけど……」
 下川忍が、ドクター・ハデスにむかってしゃべりかけました。どうやら、ここでちょっとしたカミングアウトをしたいようなのですが……。
 けれども、肝心のドクター・ハデスは、マッドの血が騒ぐのか巨大メカ戦に夢中で、下川忍の姿も声も知覚範囲内にありません。おかげで、なんだかかみ合わないちんぷんかんぷんな会話が聞こえてきます。
「見かけ倒しだな。いいかげんに主旨換えをして、オリュンポスに転向したらどうだ」
「確かに、いつもは見かけでごまかしてはいる。そうか、転校か。本当は、僕は自他共に男らしいと認めているから百合園むきじゃないんだ。なら、なぜ転校しないのかと思うかもしれない。だけど、僕はパートナーの願いを叶えてあげたいんだ。だから転校はしない」
 コア・ハーティオンを勧誘するドクター・ハデスに、下川忍が一方的にカミングアウトを続けていきました。二人とも、主語がかみ合っていません。
「いいだろう。ならば、貴様の願いを叶えてやろう。俺の好意に甘えるがいい」
「いいのかい? 僕は、ずっと誰かの思いを背負いっぱなしだから、誰かに甘えたいんだと思う。だからこそ、未だに僕は君のことを単なる面白い人としか見てないんだろう」
 なんだか、ドクター・ハデスと下川忍も一方的です。相手の話を聞いちゃいません。
「面白い物を与えてやる。ククク、我が発明で強化されたカリバーンだ!」
 ドクター・ハデスがそう言うと、聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)が飛び出していきました。
ブレイドチェンジ!
 聖剣勇者カリバーンが、人型から聖剣形態へとフォームチェンジしました。さらに、どこからともなく現れた神剣勇者エクス・カリバーンに神剣合体していきます。
「ふはははははは、我が好意、甘んじて受けるがいい!!」
 ドクター・ハデスが、神剣勇者エクスカリバーンに命じました。
「そう。つまり、僕は君に甘えたいんだ。それが傲慢だとしても、僕は百合園に通う僕を受け入れてくれる人が欲しかったから」
「俺の名は聖剣勇者カリバーン! 勇者よ、俺を使え!」
 聖剣形態へと変化した神剣エクス・カリバーンが、クルクルと回転しながらキング・ドラゴハーティオンの手に収まりました。巨大メカ戦の方では、足許のちんまい会話など、当然聞こえてはいません。
「ふ、甘んじて受け入れたか!」
 勝ったなと、ドクター・ハデスがドヤ顔をしました。
「君なら僕を受け入れてくれると思った。だから君が悪人だろうと突っぱねたりはしない。この気持ちは偽りなんかじゃない。偽ってるのは、性別だけだ。ハデスさん……ありがとう。運命の悪戯でも、君に会えて本当によかった」
 そう言いきると、恥ずかしさのあまり、下川忍は走り去っていきました。
「か、会話についていけない……」
 どっと疲れたように、ラブ・リトルが四つん這いになって脱力しました。律儀に聞いていたようですが、突っ込む気力もなかったようです。
『アルティメット・ソウル・オーバテクノロジーエネルギー……U・S・Oエネルギー!』
『ばぐべあーどトノ、えねるぎーりんく確立シマシタ。U・S・Oえねるぎー、充填率120%……150%……200%……1000%』
 キング・ドラゴハーティオンの中枢コンピュータを担う星怪球バグベアードと、神剣エクス・カリバーンの動力コントロール装置となっているハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)が、突然エネルギー共振を起こしました。
 星怪球バグベアードは魔道書となる前はポータラカ人でしたので、同じくポータラカ人を素材として作られているハデスの発明品との間に、何かが引き合ったのかもしれません。
「う、しょ!?」
 なぜか、鷽までもが星怪球バグベアードとハデスの発明品との間に共振を起こし、突然動けなくなりました。これはどうしたことでしょうか。
『このときを待っていた! 剣神一閃! ファナルカリバアアァァン! ブレエエエエエイクゥッ!!』
 激しいエネルギー放出によって黄金色に輝く神剣エクス・カリバーンを、キング・ドラゴハーティオンが縦一文字に鷽の頭上に振り下ろしました。
「うそおぉぉぉぉぉん!!」
 鷽の装甲がぱっくりと割れ、ボンという音と煙と共に鷽が銀砂となって飛び散って消滅しました。
「あわわわわ、く、崩れる!?」
 とたんにガラガラという音をたてて、コア・ハーティオンと龍心機ドラゴランダーと星怪球バグベアードと聖剣勇者カリバーンとハデスの発明品がドクター・ハデスの上に落ちてきます。みな、元の通常サイズです。
「うぎゃああぁぁ!」
 ぺちっ。
「うんうん。やっぱり、組み体操の最後は潰れないとねえ」
 一人納得する、ラブ・リトルでした。