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うそ!?

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うそ!?

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 連絡の途絶えた調査隊を調べに、第二調査隊がやってきました。そして、倒れているオプシディアンたちを見つけます。先に救出したブリッジの者たちの他にいた乗務員だと思ったポータラカ人たちは、オプシディアンたちも同様にポータラカへと搬送しました。
 その後のことです。突如としてヴィマーナの中から現れたサテライトセルたちが、調査隊を襲いました。十二人の剣の花嫁を捕らえ、他の者たちをすべて排除すると、サテライトセルたちはヴィマーナの中へと戻っていきました。しばらくして、ついにヴィマーナが動きだしました。
「そういうことか……。そういうことか!」
 緋桜ケイが唸りました。
 どうやら、ヴィモークシャ回廊の外へと飛び出したヴィマーナ母艦は、時間と空間を超えて遥か昔のパラミタに出現したようです。以前聞いたメイちゃんたちの話からすると、ほぼ5000年前の戦争が始まる直前あたりになるのでしょうか。
 ここで新たなパイロットとしての剣の花嫁たちを手に入れ、世界樹イルミンスールへとむかって侵攻を開始したわけです。おそらくは、機晶エネルギー低下フィールドが変質した魔力吸収能力を獲得はしたものの、リミッターが存在せず、そのまま際限なくエネルギーを吸収し続けて自爆を起こす魔道爆弾と化してしまったのでしょう。
「でも、なんで、イルミンスールを狙ったんだ?」
 当然の疑問を、緋桜ケイが口にしました。
「おそらくは、ソルビトール・シャンフロウの悪意が残っていたのではないのかな。あやつは、最後には、世界樹を滅ぼしてシャンバラとエリュシオンを滅亡させるという悪意のみの存在になりはてていたからな。ヴィマーナ艦隊は、すべて奴のその悪意の支配下にあったとするのが妥当であろう」
「うーん。だが、それよりもオプシディアンたちだ。なんで、あいつらがここで出てくるんだ?」
「それは、先を見なければ分かるまい。だいたい、なんで、ここが鷽の巣になったのかが、まだ分からぬ。この銀色の砂が、変質したイレイザー・スポーンの破片らしいというところまでは分かったが……。ほれ、早く、次を見せるのだ。早く、早く!」
 そう言って、悠久ノカナタが、ローブの中の鷽をバンバンと叩きました。
「カナタ、そんなに強く叩いたら……」
 緋桜ケイが止めようとしましたが、間にあいませんでした。
「うそおぅ……きゅう……」
 ボンと、袋の中で小さな爆発のような物があり、風景がぐにゃりと歪みました。どうやら、中の鷽を叩き潰してしまったようです。
「痛たたたたたたた……。頭があ……」
 ボンと、元の砂原の上に投げ出されて、緋桜ケイと悠久ノカナタが頭をかかえました。
「なるほど。少し前にゴアドー島を騒がせた事件が関係していたとは。驚きですね」
「誰だ?」
 突然、近くで少年の声がして、緋桜ケイたちが振り返りました。初めて見る顔です。鷽討伐隊の誰かでしょうか。
「まあまあ。ここは、まだまだ謎解きを楽しみましょう」
 意味ありげに、少年が言いました。
「で、どう見ますか、トラロック
「そうですね。本来であれば、ナラカからパラミタを目指していたはずのボクたちの分霊が、あのヴィマーナに引っ掛かる形でイレギュラー的に過去のパラミタに出現してしまったと考えるのが妥当かと思います」
 ルビーに聞かれて、アクアマリンが答えました。
「わざとらしい偶然ね。でも、それって、時間軸が滅茶苦茶じゃないの?」
 エメラルドが、アクアマリンにツッコミました。
「お前たちは!」
 エメラルドの姿を見た、緋桜ケイたちが身構えました。
「まあ待て。少し謎解きをするのも面白いだろう。こちらも、お前たちが知っていることに興味がある」
 いつの間にか、オプシディアンとジェイドに背後をとられて、緋桜ケイたちは身動きがとれなくなりました。こう取り囲まれていては、迂闊に攻撃もできません。
「ということで、少し聞かせてもらいますよ」
 ジェイドが、指先を悠久ノカナタの頭に軽く当てました。
「なるほど。私たちが勝手にシトゥラリと呼んでいたあの巨大イコンは、元々はそのヴィマーナだったというわけですか」
 悠久ノカナタの記憶を読みとったジェイドが、独り合点しました。
 おそらくは、最初にヴィマーナ母艦が回廊の内壁に接触したときに、バリアの外に繋がっているナラカからオプシディアンたちが取り憑いたのでしょう。それは、地球にいたパラミタ人たちのような、形の見えない魂のような物だったのかもしれません。その後で、回廊を飛び出したヴィマーナは別の時代のナラカと接触し、そこを経てなぜか五千年前のパラミタに出て来たということのようです。
 ヴィマーナにくっつく形でやってきたオプシディアンたちの魂は、意志を失って融合の能力だけが残ったイレイザー・スポーンに取り込まれて拘束されていたわけですが、そこへやってきたポータラカ人たちの身体を乗っ取って今の姿へとなったわけです。
「つまり、私たちが無意識下で世界樹に固執しているのは、その男の意識の残照が影響しているということですか。気持ちのいいものではありませんが、分かってしまえば排除は可能ですね」
 ルビーが苦笑しました。
「また、何を企んでいる!」
 緋桜ケイが、ルビーを問い質しました。
「今のところは何も。しばらくは、何物にも囚われず、そう、他人のくだらない思惑などにも囚われず、勝手気ままに過ごしますよ。ただ、私たちは見ている。あなた方の世界がふさわしくないと判断すれば、新たなサイクルを開始するために、すべてが滅ぶ手助けをする。それだけのことです。そうでなければ、不干渉でいましょう」
 ルビーがパチンと指を鳴らすと、背後で突然木の葉が舞った。
『どうぞ、お乗りください』
 隠れ身を解除して現れたスイヴェンの中から、アラバスターの声が響きました。
 真紅のイコンの左右には、漆黒のイツパパロトルとホワイトブルーのミキストリの姿もあります。
「では」
 スッと、ルビーたちの姿がかき消えました。それぞれのイコンに乗り込んでいったようです。
「ま、待て、まだ……」
 緋桜ケイの叫びをかき消すように、三機のイコンは飛び立っていきました。