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うそ!?

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うそ!?

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    ★    ★    ★
 
「うーん、先回りしたつもりだったけど、もっと早く来ているのがいたかあ」
 すでにあちこちでカオスを発生させている鷽の巣をぐるりと見回して、アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)が言いました。
「だが、しかし、けれども、ていうか、というわけで、ここは目玉帝国とするぅ!」
 高らかに、アキラ・セイルーンが宣言しました。
「そういうことで、先生、お願いいたします」
「おう」
 アキラ・セイルーンに呼ばれて、目玉の パッフェル(めだまの・ぱっふぇる)が右肩に現れました。とたん、アキラ・セイルーンの姿が目玉になります。
「これからは、あなた様を目玉帝国の国家神といたします」
 アキラ・セイルーンが、目玉のパッフェルにうやうやしく言いました。
「オイ、アキラ。国家神は、ワタシじゃないのネ!」
 アキラ・セイルーンの左肩に乗ったアリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)が、文句を言います。
 ブロンドのカツラを被った目玉の姿で、下半身はカボチャパンツに被われているみごとな二頭身です。
「うん、アリスじゃない」
 あっさりと、アキラ・セイルーンが言いました。
「ということで、後は世界樹があれば、国として成立するんだ。発動!! 真・全人類目玉化計画オペレーションメダマ・イクス!! いでよ、ジャイアント目玉ピヨ!!」
 アキラ・セイルーンが、ジャイアントピヨを呼び出しました。銀砂の中からもこもこと盛りあがってきて姿を現したジャイアント・ピヨは、短い翼を前後にのばして片足立ちをしています。どうやら、世界樹の物まねをしているようです。そして、そのふわふわの羽根毛の下からぞろぞろと目玉の姿をした鷽目が湧き出してきました。ちょっとキモいです。
「うそめめめめめ……」
 なんか、変な鳴き声をあげながら、鷽目が周囲に散らばっていきます。
「ははははは、すべて目玉にするのだあ!」
 どんどん周囲の物を目玉化していく鷽目たちを見て、アキラ・セイルーンが勝ち誇りました。
 
    ★    ★    ★
 
「おのれ妖怪! みんなどこに行ったのです。下がってください!」
「ちょっと待ってください、ボクです、ボク!」
 目玉と化したイグナ・スプリントに追いかけ回されて、非不未予異無亡病近遠が悲鳴をあげました。
「ちょっと、あたしたち、目玉になってしまっていますわ」
「いやー、でございます!」
 ユーリカ・アスゲージとアルティア・シールアムもパニック状態です。イグナ・スプリントに追いかけられながら、非不未予異無亡病近遠と一緒に逃げ回っています。
「むぎゅ……」
「何か踏みましたわ!?」
「そんな物に構っていられないでございますー」
 途中で何かを踏んだようですが、確認する暇もありません。周囲には、鷽目が飛び回っています。
「でたな、妖怪共。この魔界ハンター貴仁が現れたからには、一匹残らず倒してくれる。さっさと冥府へと還れ!」
 月光をバックに現れた鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)が、ネクロマントを颯爽と翻して名乗りをあげました。
「月虹に霞め。影なき者共よ!」
 月狂いの刃・煌の鞘に携帯電話をセットすると、鬼龍貴仁が細身の剣を鞘から引き抜きました。うっすらと、青白い光に刀身が輝いています。
「うそめ!」
「めめめめめめ……」
 ばしゅばしゅと書き文字効果音を撒き散らしながら、鬼龍貴仁が周囲の鷽目を斬り倒していきました。真っ二つにスライスされた鷽目が、銀砂となって次々に崩れ落ちていきます。
「大型の魔物か!」
 鬼龍貴仁の目が、非不未予異無亡病近遠たちにむけられました。
「ボクたちは人間ですよ!」
 あわてて、非不未予異無亡病近遠たちがクルリと後ろをむいて逃げだしました。
「むぎゅ……」
 途中、また何かを踏みます。
「ちっ、恐れをなして逃げたか。だが、深淵の理に縛られている限り、この魔物ハンター貴仁からは逃げおおせることは不可能だ。大丈夫ですか、お嬢さん。不浄の存在は、この俺が封土の外へと追いやりました。もう大丈夫です」
「でも、私……」
 しくしくと顔を伏せて泣きながら、娘が言いました。さんざん非不未予異無亡病近遠たちに踏まれたためか、すでに全身ボロボロです。
「なあに、何があっても、俺がなんとかしてみせます」
「ありがとう、なんだか、惚れてしまいそうですわ」
「はっははははは、何をおっしゃいます」
 べたべたな展開に、鬼龍貴仁が照れ隠しに大声で笑いました。
「こんな綺麗なお嬢さんに惚れられるなど、魔界剣士の誉れです」
 あっ、ちょっと設定がぶれた気がします。
「こんな私でも……」
 そう言って顔をあげた娘の頭は、巨大な目玉でした。
「私、なくなっちゃったんです。大事な物を返してください!」
 すがりつく輝新閻魔に、鬼龍貴仁がドン引いて後ろに下がりました。いったい、何をなくしてしまったというのでしょうか。
「男には興味ないし、妖怪だし、じゃ、そういうことで」
 なんだか、気味の悪い感覚を覚えて、鬼龍貴仁はあわててその場から逃げ去りました。全部、退治するのではなかったのでしょうか。とりあえず、自らの貞操の危機を感じたようです。
「あ、何か、今のボクと同じ匂いがする……」
 目玉化してしまった下川忍が、クンクンと鼻を鳴らして、完全に輝新閻魔と化してしまった新風燕馬に近づいてきました。
「目玉ー、女ー、きゃー!!」
 おたがいに顔を見合わせて、新風燕馬と下川忍は別々の方向へと逃げだしました。