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王子様とプールと私

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 さて、その頃。紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は更衣室の出口付近で、二人の女性を待っていた。
「お忍びでやってきてみれば……上手く企んだでありんすね」
 唯斗の用意した濃いグリーンの上品なビキニを着たハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)がそう言って、ルシア・ミュー・アルテミス(るしあ・みゅーあるてみす)と連れ立って歩いてきた。
「折角の休みなんだし、姉妹で仲良く過ごすのも悪くないだろ?」
「ま、それも良いかもしれないでありんすね」
 一方、薄い青のセパレートタイプの水着を着たルシアは、
「たくさんアトラクションがあるんだね」
 と、わくわくしたように周りを見ている。
「ルシアはどれに行きたいでありんすか?」
「私はどれでも楽しめそう。一通り全部行ってみたいな。どこから行ってみる?」
「わっちはまず、あれをやってみたいでありんす!」
 ハイナが指差したのは、ウォータースライダーだ。
 唯斗たちがやって来た時、ウォータースライダーは多少混んでいた。先ほどまで不具合があったらしい、と掲示が出されている。
「今日は二人のためにセッティングしたんだからな。同時に滑り降りてくるのをここで待ってるよ」
 唯斗はそう言って、二人をウォータースライダーへと送った。
 ……しばらくして、大笑いをしながらハイナが滑り降りてきた。
「なかなか楽しいでありんすね。ルシアは?」
「まだ出てきていないようだ……が」
 唯斗の視線の先から、水着のトップスがずり上がってお腹が見えているルシアが滑り降りて来た。
「これすっごく楽しいのね。もう一回乗ってもいい?」
「ルシア、お腹! お腹!」
 状況に気がついておらず、頭に疑問符を浮かべてニコニコと笑うルシアの水着を、ハイナは素早く直してあげたのだった。
(……む!? コレは野郎共の視線……)
 唯斗は、そんなハイナとルシアに集まって行く視線に気がついた。二人ともウォータースライダーを降りてくる途中で、少し水着がずれてしまったらしく、少し露出が増えている。
「ええい、折角苦労して調整した休暇を邪魔されてたまるか! 暗殺もといお帰り願おうか、力尽くで」
 ドボン、と水中に飛び込んだ唯斗は、ハイナとルシアをちらちらと見ている男たちの背後に忍び寄った。
「ん……!?」
 男たちに勘付かれる前に、霊気剣で素早く男たちを倒す。
「雑作もないな……」
 一仕事終えた唯斗の元に、ハイナとルシアがやって来る。
「唯斗、次は流れるプールに行くでありんすよ」
「すごく速くなっているみたいで、楽しみだね」
 この後、炎天下の中ハイナとルシアに連れ回され、近付く男たちをこっそり排除しに飛び回っていた唯斗は、熱中症で倒れたという。