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王子様とプールと私

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「無事か?」
「ええ、何とか」
 キロスとヴァレリアは、更衣室に続く廊下に立っていた。「何とか」もなにも、ヴァレリアはノリノリで攫われていたわけだが、キロスはあえてそこには突っ込まない。
「……わたくし、もっともっと色々と覚えることがあるのだなと、感じましたの」
 真面目な顔になったヴァレリアは、キロスの顔を見て頷いた。
「まだまだわたくしは、この世界を見て回りたいと思いますわ」
「あんまり無茶するなよ?」
「大丈夫ですわ。だって、また何かあっても、キロス様が助けてくれるのでしょう?」
 ヴァレリアの無邪気な問いかけに、キロスはにやりと笑った。
「初めから助けてもらうつもりで危険を冒すなら、俺はパスする」
「大丈夫ですわ。多少の危険くらいなら、自力で何とか致しますもの」
「そうか」
 キロスは少しの間沈黙し、それから口を開いた。
「……結婚、しなくていいのか?」
「ええ、今は。いずれ、わたくしを一番多く助けて下さった方と結婚することに致しますわ」
「あの野郎、最後に変なこと教えやがって……」
 更衣室へと消えて行ったヴァレリアの背を、キロスは眺めていた。――そのどことなく寂しそうなキロスの背を、フリューネやユーフォリアたちも眺めていた。

 そう遠くない未来、攫われたヴァレリアが皆に助けを求めることになるのは、また別のお話。


担当マスターより

▼担当マスター

八子 棗

▼マスターコメント

 初めましての方は初めまして。そしてこんにちは、八子 棗です。
 今回はコメディということでしたが、何かひとつでも楽しんで頂けましたでしょうか。

 またどこかでヴァレリアが暴走をしていたら、皆様の力をお貸し頂ければ、と思います。
 それでは、また他のシナリオでお会いする機会を楽しみにしております。