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王子様とプールと私

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【ヴァレリア、知識修正中】

 ヴァレリアは、キロスに連れ回されていた。デート開始早々、とんでもない光景を目の当たりにしているヴァレリアがこれ以上変な知識を身につけないよう、キロスは真っ当なデートをしているカップルや真っ当に友達同士で遊んでいる人を探したのだ。
「いいか、デートってのはああいうものだ」
 デート論を説くキロスというのは、滅多なことではお目にかかれない光景である。
「それだけじゃないぞ、友達同士で遊ぶってのはああいうものだ」
 というわけで、キロスがチョイスした模範的な遊び方をしている人々を紹介しよう。



「キロスくんデートみたいですね」
 杜守 柚(ともり・ゆず)は、高円寺 海(こうえんじ・かい)と一緒に遠巻きにキロスとヴァレリアを見ながら、心の中でキロスたちを応援していた。
「こちらを見て何だか騒いでいるみたいだな……」
「お二人とも楽しそうですね。私たちもたくさん楽しみましょう」
 柚は海と並んで、とりあえず歩き始めた。
「海くんはどのプールに行きたいですか?」
「……オレはどれでも」
 海は施設をぐるりと見回しながら答えた。
「色々とまわってみたいですね。できれば、あんまり速くないのがいいですけど??あ、あの流れるプールとかどうですか?」
 柚は、早速目についた流れるプールを指した。二人は流れるプールに入る。
「涼しいですねー」
「……そう言えばこれ、前より速さが増してるらしいぞ」
「えっ? そうなんですか!?」
 プールに入ってから海に指摘されて気付く柚。途端、柚はふっと水の流れに足を取られた。
「ええっ、思ったより速いです!」
 ふわふわと流されて行く柚の手を、海がぎゅっと握った。
「……これで大丈夫だろ」
 海に手を引かれて、柚はゆっくりとプールサイドまで戻ってきた。
「びっくりしました……」
 波に流されたことにも、海がすぐに助けてくれたことにも。柚は少し頬を染めて、海と次のアトラクションへ向かったのだった。

「海くん、ウォータースライダーに行ってきますか? そうしたら私は下で待っていますけど……」
 ウォータースライダーの近くに来ると、柚がそう提案した。
「……いや、一緒に楽しめるものでいい」
「えっ?」
「あのプールなら、あまり速くなさそうだぞ」
 海なりに気を使ってくれたのかもしれない。柚と海は、のんびりと色々なプールを回って楽しんだのだった。

「いっぱい泳ぎましたね」
 ひとしきりプールで遊んだ柚と海は、プールサイドを歩いていた。
「ちょっと何か飲んで休みませんか?」
「そうだな」
 柚たちはプールサイドにある売店に向かった。柚はオレンジジュースとイチゴのクレープを、海はアイスティーを頼んだ。
「いただきますっ」
 おなかが空いていた柚は、美味しそうにクレープを食べ始めた。
「美味そうに食べるな」
「そうですか?」
 笑顔を浮かべて、ニコニコと食べる柚。
「海くんも食べませんか? 美味しいですよ」
「じゃあ、一口」
「はいっ」
 柚はフォークに一口サイズのクレープを乗せて、海に差し出す。
「……ん、甘いな」
「美味しいですね」
 こうして柚は海と一緒に、プールでののんびりとした時間を過ごしたのだった。