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王子様とプールと私

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王子様とプールと私
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 プールの入り口にて。柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)は、父母清 粥(ふぼきよし・かゆ)と一緒に遊びにきていた。
「おー! ここが人気のプーリュ、プールなんだ!」
 何故かプールに来てまで信楽焼の狸「ポン太」を手にしている粥は、キョロキョロと周囲を見回して感嘆の声を上げる。
「さて、どのプールから行くか?」
「とりあえずここ!」
 粥は早速、目の前にあるプールに飛び込んだ。――ポン太と共に。
「わっ、しじゅ、沈む!」
「そりゃそうだ! むしろ何故大丈夫だと思った!?」
 恭也は素早く駆けつけた。通りかかった周囲の客がぎょっとする中、ポン太は無事プールの底から救出されたのだった。

 粥を説得してポン太を更衣室に置いてこさせた(粥曰く、ロッカーに入らなかったので泣く泣く置いてきた)恭也は、粥とプールを巡っていた。
「流れるプールでぷかぷか浮いてみるか?」
 恭也に促されて、プールに入った粥は背泳ぎをするようにぷかっと浮いた。
「おおー! 流れちぇ、流れてる!」
 楽しそうにニコニコと笑う粥を見て、恭也も小さく笑みを浮かべた。
「おまえも名乗る名前が決まったし、そろそろ落ち着いたか?」
「たぶん落ち着いた!」
「……なあ、他に名前の案はなかったのか?」
 恭也は、以前から疑問に思っていたことを訊ねる。
「違う並び方の?」
 粥はうーん、と思い出すように首を捻った。
「確か、『冬星 清香(ふゆぼし きよか)』とか『冬清 かぼし(冬清 かぼし)』とかも考えちゃ、考えた気がする!」
「でも、『父母清 粥』が気に入ったと」
「そんな感じ!」
 粥は水面をぷかぷか漂いながら楽しそうに答える。
「いろいろ考えたけど、やっぱり『粥』って感じがした!」
「確かに言われてみれば、粥は粥って感じがするな」
 恭也も納得したように頷いた。

 その日一日、恭也と粥は、プールを回って楽しんだ。
「たくさん遊んじゃ、遊んだ! 楽しかった!」
 粥は終始ハイテンションで、十二分に楽しめたようだった。
「ま、すぐに他の連中とも仲良くなれるさ。こんな風に遊んだり、一緒に冒険したりな」
「うん!」
 粥は、誰かと一緒に遊びに行くことの楽しさを覚えたようだった。