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機甲虫、襲来

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機甲虫、襲来

リアクション

 一方、アルト・ロニア中央部。
(殺気……!)
 機甲虫の殺気を察知した富永 佐那(とみなが・さな)は、即座に行動に移った。
 特殊力場【небесный】を足がかりにして跳躍すると、佐那は頭上より飛来する機甲虫の背後を取った。
 すかさず雷顆閃を射出し、機甲虫の羽の付け根を撃ち抜く。
 ……ウゥゥゥゥン……
 如何に全身を装甲で覆われた機甲虫と言えど、羽の付け根は無防備に近いはず。
 佐那の読み通り、雷顆閃を受けた機甲虫は羽の付け根から炎を噴き出し、地上に落下した。
「これで……!」
 佐那はパラキートアヴァターラ・グラブで風を球状にすると、渾身の蹴りを放った。球形に凝縮された風が機甲虫の羽の付け根を貫き、爆散させる。
「……良し」
 機甲虫が機能停止したのを確認すると、佐那は次の敵を求めて歩き出した。
 佐那が行った後――近くの瓦礫の陰から、歩み出る者がいた。
「気は進まないが……これもドクターのためだ」
 アリス・バックフィート(ありす・ばっくふぃーと)は佐那が倒した機甲虫に走り寄ると、虫の破片を鞄に入れた。

 アリス・バックフィートが機甲虫の死骸を回収しているのは、理由がある。
「アリス! アレを捕まえて来るのだ!」
 理由というのは他でもない。アリスの契約者、ドクター・ハーサン(どくたー・はーさん)がそう命じたのだ。
「あの虫を研究しておけば、今後何かしらの役に立つかもしれん! 死骸でもいい! 一刻も早く捕まえて来るのだ!」
 宿屋の一室からアルト・ロニアから見下ろすハーサンに、アリスは告げた。
「住民はどうするの?」
「放っておけ! 今は、研究が第一だ!」
 アリスは宿屋から出ると、被災現場に向かった。

 まだ足りない。
 虫の破片を鞄に入れたアリスは、死んだ機甲虫を求めて再び辺りを探し始めた。
「ヨルクさん、次はどの倉庫に向かうんですか!?」 
 通りから何者かの声が聞こえてきたのはその時だった。
 アリスは崩れ落ちた建物の陰に隠れると、声が聞こえてきた方角に視線をやった。
「四番倉庫! アルト・ロニアで最も大きい倉庫だ! 時間がない、急ぐぞ!」
 視界の隅を、白衣姿の若い男が通り過ぎて行った。男を追う形で、契約者と思しき人物たちが目の前を駆けていく。
 奇妙な一団だとは思ったが、今の自分には関係のない話だ。彼らが通り過ぎた頃を見計らい、アリスは表に出た。
 鞄には、機甲虫の破片が溢れ出すまでに詰め込まれている。後は、近くに停めてある小型飛空艇に乗ってハーサンと合流すれば良いだろう。
 だが、小型飛空艇を停めた場所に向かう途中、思いも寄らぬ人物が立ち塞がった。
「そこで何をしているの?」
 シャンバラ教導団少佐、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)とそのパートナー、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)だった。