シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

学生たちの休日12

リアクション公開中!

学生たちの休日12
学生たちの休日12 学生たちの休日12 学生たちの休日12

リアクション

    ★    ★    ★

「うっ、どこを見てもリア充の巣窟やないか。こんなことなら、ちゃんとHIKIKOMORIしておくんやった……」
 フィリーネ・カシオメイサ(ふぃりーね・かしおめいさ)に空京神社まで連れてこられた上條 優夏(かみじょう・ゆうか)が、周囲の参拝客を見てぼやきました。
 さすがに今年は受験なので、願かけにやってきたわけなのですが、普段引き籠もっている身にとっては、この人混みは少しきつかったようです。
「だいたい、リア充の巣窟などに……」
あら、私たちだってそのリア充じゃない
「あっ……」
 フィリーネ・カシオメイサに指摘されて、あらためて気づいたように上條優夏がはっとなりました。えてして、リア充は、自分がリア充であることを忘れているものです。リア充爆発しろと叫んで自爆したリア充は数知れません。
「さあ、ちゃんとお参りしましょ」
 そう言われて、上條優夏はお賽銭を投げ、おみくじを引くという一通りのイベントをこなしていきました。
「中吉……、まあまあかな。合格するかなあ」
「きっと大丈夫よ」
 どうかなあと言う顔の上條優夏に、フィリーネ・カシオメイサが保証します。
 思えば、フィリーネ・カシオメイサと出会ってからの三年間で上條優夏はずいぶんと救われたような気もします。
「優夏が頑張ったからよ、それは。あたしは、そのお手伝いしただけよ」
 そう言われて、ちょっと上條優夏がはにかみます。今日一日ぐらいは、ずっとフィリーネ・カシオメイサにつきあってもいいのかもしれません。
「あら? あたしとデートしてくれるの♪ 優夏もまともな男の子になったのかしらね」
「リア充の心理を知るのも、HIKIKOMORIの神になるために重要やからや!」
 なんだかよく分からない理由を叫ぶと、上條優夏はフィリーネ・カシオメイサと手を繋いで歩いて行きました。

    ★    ★    ★

「それにしても、なんだかむかつく山笠ですわね。壊してしまおうかしら……」
 空京神社の片隅にある桜井 静香(さくらい・しずか)の褌姿の像が載った山車を見あげて、お嬢様が言いました。
 以前、曳き山笠で負けたので、ちょっとこの奉納された山車には悔しいようです。
「破壊活動はどうかと思いますが……」
 さすがに、執事君こと彩九龍が諫めます。隣で、メイドちゃんこと流竜も肩をすくめました。
「やれやれ、相変わらずだなあ」
 一緒にいたキーマ・プレシャスがちょっと呆れて見せました。
「で、いいかげん帰ってこないか?」
「帰るって言っても、すでにお屋敷はないでしょう」
 キーマ・プレシャスに言われて、お嬢様ことシルフィール・プレシャスが言い返しました。プレシャス家は破産しているので、すでにヴァイシャリーにあった財産は全てなくなっています。幸いなのは、これといった借金はないことでしょうか。
「別に、なければ作ればいいだけじゃないか」
 あっさりとキーマ・プレシャスが言いました。そのために、ずっとバイトをしていたのですから。
「まあ、どうしてもというのでしたら、戻ってさしあげてもいいですわよ……」
 ちょっとツン気味に、お嬢様が言いました。実際には、放浪生活もそろそろ限界です。
「後は、マサラだけれど……。まあ、あの子はあの子でよろしくやっているか」
 帰りたくなるときのために、帰れる場所は作っておこうと思うキーマ・プレシャスでした。

    ★    ★    ★

「今年もいい年になりますように」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、福神社の本殿で手を合わせました。ローゼンクライネを連れたコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)も一緒です。
「さあ、おみくじを引きましょう」
 小鳥遊美羽が、率先して社務所にむかいます。小鳥遊美羽は綺麗な晴れ着を着ていますが、なぜかミニ丈なので健康的な生足が顕わです。ローゼンクライネも、誰かの趣味なのか、小鳥遊美羽とお揃いのりっぱな晴れ着ですが、さすがにこちらは普通の丈で脚を見せてはいません。綺麗に着飾った小鳥遊美羽たちとは違って、コハク・ソーロッドはラフなセーター姿でした。
「今年は、大吉ですように……」
 念を込めて、えいっと小鳥遊美羽がおみくじを引きました。三十八番……凶です。
「なんで……」
 これ、間違っているんじゃないかと、小鳥遊美羽が社務所の中にいた福の神 布紅(ふくのかみ・ふく)を恨めしそうにジーッと見つめました。私のせいじゃないもんと、布紅が思わず物陰に隠れます。
「あまり気にしてもしょうがないよ」
 そう言って、コハク・ソーロッドがおみくじを引きました。四十二番……大凶です。
「な、なんで……」
 思わず過去の悪夢がよみがえって、コハク・ソーロッドがぽとりとおみくじを落とします。
 小吉を引いたローゼンクライネが、風に飛ばされていったコハク・ソーロッドのおみくじを追って行きました。
「ねえねえ、このおみくじ壊れてませんかあ!」
 社務所の中に身を乗り出して、小鳥遊美羽が叫びました。
「ひっ、おみくじは、おみくじです……」
 そう答えると、布紅があわてて姿を消します。
「逃げた!」
 小鳥遊美羽が叫びましたが、布紅の言うとおり、一度引いてしまったおみくじに文句を言っても仕方がありません。とりあえず、福神社の境内にある木の枝にでも縛って帰るしかないでしょう。
「あれ? ローゼンクライネは?」
 このとき、やっとコハク・ソーロッドがローゼンクライネがいなくなったことに気づきました。あわてて、探しに行きます。
「まったく、なんておみくじ運がないのかしら。コハクもここに縛って厄払いを……。コハク? あれ、どこ行っちゃったの?」
 いつの間にかコハク・ソーロッドの姿がいなくなっているのに気づいて、小鳥遊美羽はあわてて探しに行きました。
「ローゼンクライネ。どこだーい」
 さて、ローゼンクライネを探して、コハク・ソーロッドは見知らぬ境内に入り込んでいました。空京神社はいくつもの神社が合祀されたものですので、場所によってはまだ知らない神社があったりするのです。
「ああ、いたいた」
 やっとローゼンクライネを見つけだして、コハク・ソーロッドはホッとしました。
 すると、ローゼンクライネが、拾ってきたおみくじを差し出します。
「ああ、これを取りに行ってくれたのか、ありがとう」
 じゃあ、早く、小鳥遊美羽の所に戻らなくっちゃと、コハク・ソーロッドが踵を返そうとしたときです。
「にいちゃん、にいちゃん。いいおみくじあるよー」
 なんだか、バナナの叩き売りみたいにして、おみくじを売っている巫女さんがいます。よく見ると、頭には烏帽子のようにパンツを被っていました。
「ここは、はく神社。頭にパンツをはく、由緒正しい今年できた神社だよ」
「また、Pモヒカン族のおみくじ売りか!」
 コハク・ソーロッドが身構えました。Pモヒカン族の弱点は分かっています。
「えい!」
 一瞬の早業で、コハク・ソーロッドが、Pモヒカン族の頭からパンツを剥ぎ取りました。
「きゃああああ、何をするのよ!!」
 パンツを剥ぎ取られて、Pモヒカン族の巫女が地面に倒れて苦しみました。
「コハクー、いたいた。どこに行ってたのよ」
 そこへ、コハク・ソーロッドを探して小鳥遊美羽がやってきました。それに気づいたPモヒカン族の巫女が、地面から小鳥遊美羽を見あげます。絶妙なアングルです。
「パ、パンツ……。パンツをくれー」
 Pモヒカン族の巫女が、小鳥遊美羽の生足にしがみついて、その手を上へのばしました。
「きゃあああ!!」
 すかさず、小鳥遊美羽がゲシゲシとPモヒカン族の巫女を踏みつけました。
 ゲシゲシゲシゲシ……。
「ストーップ、美羽。それ以上蹴ったら、原型なくなっちゃうから」
 さすがに、見かねてコハク・ソーロッドが小鳥遊美羽を止めました。
「確かに、凶だったわ」
「うん、大凶だ……」
 そう言ってお互いに顔を見合わせると、軽い溜め息をつく二人でした。