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リアクション
姉妹仲良く夏祭り♪
夏祭りと聞いた芦原 郁乃(あはら・いくの)は、早速妹達を誘って既に賑わう祭り会場へと足を踏み入れていた。
しかし――
「あ〜〜〜〜〜〜〜」
文字通り、人の波に押されまくった郁乃や荀 灌(じゅん・かん)、芦原 揺花(あはら・ゆりあ)は、3人揃って小柄な事も相まって右から左へ流れる人と一緒に流されていった。
「手……手を離しちゃダメだよ、2人共〜……むぎゅう」
「お姉ちゃーーーん、きゃあ!」
「うきゅ……っ、目……目が回るよーー」
何とか手を離さないように頑張る3人に、祭りの試練は更に続いた。
「や〜〜〜〜〜〜〜!」
今度は左から右へ流され、もまれる内に両手を上げてバタついてしまう始末だった。前へ押され、後ろへ押されと流されている間に漸く人混みから逃れる事が出来た。
「すごかったねぇ〜」
「もうびっくりしたです…」
郁乃と灌は顔を見合わせて笑い合った。互いに着崩れた浴衣を直し合いっこしていたものの、あまりの惨状と試練に揺花はもう涙目である。
「こ、怖かった……すっごく怖かった」
フルフルと全身を震わせて大粒の涙が揺花の目を濡らしたと思った途端、人目も憚らず泣き出してしまった。
揺花の着崩れてしまった浴衣を郁乃が直し、灌はひたすら揺花の頭を撫でて落ち着かせていた。
「よし! これでオッケーだよ。それにしても私達……さっきのは酷かったよね……」
人混みから出てきた郁乃達は、浴衣が着崩れて肩が丸出しになっており、かろうじて胸はセーフだったが幼い少女の姿とはいえ、ちょっと酷い有様になっていたのだ。
「さあ、楽しむよー!」
郁乃の号令(?)で灌と揺花もそれに倣うのでした。
少し人混みが落ち着いた食べ物の出店が並ぶ通路では、暑さからまずカキ氷にしようと揺花が言い出すと早速目に付いたカキ氷屋へ向かった。
「どれにしよう?」
「皆で違うものにしますか?」
あれこれと店先で悩む3人だったが、定番で落ち着いた。
「お姉ちゃんはレモン? 私はやっぱりイチゴにしたの!」
3人並んでベンチに座り、シャクシャクと食べる揺花は満足気だ。
「私がレモンで、灌がブルーハワイ……揺花がイチゴと見事にばらけちゃったのね」
「ねえねえ、カキ氷と言えば……これだよね!」
揺花が舌を見せると見事に赤く染まってイチゴ色になっていた。顔を見合わせた郁乃と灌も揃って3人で一斉に舌を見せっこする。やっぱり郁乃と灌もシロップの色に合わせて染まっており、笑いあっていたが彼女達に近付く3つの影があった。
「君達可愛いねー、俺達と一緒に遊ばねえ?」
テンプレ通りのナンパ言葉である。郁乃の浴衣をそれぞれギュッと握る灌と揺花を護るように一睨みし
「はいはい、間に合ってます。灌、揺花行こう」
カキ氷のカップをゴミ箱へ捨ててくると、ナンパ男が付いてこないように威嚇も忘れなかった郁乃であった。
たこ焼き屋の前を通った郁乃達は、ソースの匂いにつられて今度はたこ焼きを買って3人で仲良く分けて食べていたが――!?
「ん……? あー! これタコが入ってない!? ちょ、ちょっと文句言ってこないと……!」
「待って待って、もう人並んじゃってるから! ね? そういう事もあるです」
むぅーっと悔しそうな顔をする郁乃を灌は必死で宥めた。残りのたこ焼きを灌と揺花は郁乃に譲ると、最初は断った郁乃だったが2人の優しさに甘えて口の中へ放り込む。
「……どうやら、入ってなかったのはあの1個だけだったみたい」
郁乃がポツリと呟くと灌と揺花は何となく笑い出してしまい、郁乃もそれにつられてしまった。
「お姉ちゃん、テンション高いし……愉しそうですね」
「あたりまえじゃない、可愛い妹と一緒にお祭り来てるのよ! テンションMAXだよ」
灌は本当に楽しそうに答える郁乃を見ると、「もう一つたこ焼き買ってきます」と2人の側を離れた。未だ並ぶたこ焼きの列に入りながら、改めて思うのは『大好き』という気持ち1つだった。
その後もナンパは続いたが、その度に郁乃は
「ごめんなさいね、わたし達10万年後まで予定がビッシリなんですぅ」
「さっさと消えてね? でないと……泣かすよ」
凄みを利かせる美少女は立派に妹達を不埒なナンパから護り通した。
「全くしつこいわね! 私は妹達と楽しんでるの! お呼びじゃありません!」
灌と揺花は郁乃の頼もし過ぎる姿に見惚れるばかりであった。
「でも、お姉ちゃん……背中にぬいぐるみ背負って凄んでも、可愛いんだよね。カッコいいけど可愛いんだもん」
ぬいぐるみ――3人で射的に挑戦し、協力して大きなぬいぐるみを落としたまでは良かったが、サイズが大きすぎて持つには大変過ぎると郁乃が背負っていたのだった。
◇ ◇ ◇
祭りを遊び倒した3人は、お待ちかねの花火を見ようとちょっと穴場の場所を陣取り、出店でゲットしたお菓子を摘みながら最後の花火が上がるまで姉妹仲良く過ごしたのでした。
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