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白百合革命(最終回/全4回)

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白百合革命(最終回/全4回)

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第4章 友を信じ

 百合園に残っていたイコンを屋上に配備し、優子は、アレナと共に百合園の屋上に出ていた。
 アレナの側には康之がおり、2人をサポートしている。
 ロザリンドの緊急放送を聞き、有力者と百合園生の多くは避難していった。
 しかし。
「円が……ここに、戻ってくる、から」
 百合園生としてでも、ロイヤルガードとしてでもあるけれど、パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)は、恋人の円の力を受け止める。そんな風にも思い、優子と共に屋上に来ていた。
「小夜子も戻ってきます。戻ってくる場所を、小夜子の日常をわたくしは守ります。……去年、クリスマスの約束も、しましたもの」
 泉 美緒(いずみ・みお)は切なげな目で、空を見ている。
「鈴子ちゃん……アルちゃん……」
 ミルミは涙を必死にこらえていた。
 ライナの姿はない。ルリマーレン家から迎えに来てもらい、家に連れて行ってもらった。
 不安で、怖くて仕方がなかったけれど、大切な人をここで待たなければいけない気がした。
「他にも沢山来てるな、白百合団員も、そうじゃない子達も」
「はい」
 康之は屋上に上がってくる女生徒達を見ながら言い、アレナが頷く。
「百合園を狙っている砲撃が、アルカンシェル級のものならば、人の力で抑えられるものではない。早く避難するように」
 優子は生徒達にそう言うが、訪れた少女達は皆不安げな顔ながら、首を左右に振り。
「お姉様達と一緒に、護ります」
「校内にまだ残っている人がいます。……主に、ここに! だから私だけ避難するようなことできません」
「放たれる攻撃が人のエネルギーなら、わたくしたちの命のエネルギーで受け止めるまでです!」
「私は体力はないですけれど、魔法が使えますから。お姉さまたちを癒すことくらいさせてください!」
 怖がりながらも少女達は強い意思でここにいることを望んだ。
 優子は生徒一人一人を見回して、再び帰るように言う。
「未来ある学生のキミ達がそこまでする必要はない」
「それは神楽崎先輩だって同じです」
 はっきりとそう言ったのは、白百合団副団長のティリアだった。
「百合園のことは、後輩の私達に任せてロイヤルガードの宿舎に戻ってください。先輩達はパラミタに必要な人なのですから」
「キミ達だって……」
「私たちだって、1人1人、学院と世界に必要な存在なので、誰も命を粗末にはしません。たた、この場で倒れて、少し疲れて眠ってしまう程度の時間は、私達にはありますので」
 モニカから電話があったためか。
 すべきことがわかってきたからか。
 ティリアは随分と元気を取り戻していた。
「一緒、です」
 アレナが優子とティリアの手をとって、繋がせた。
 優子は少し驚いたような顔をして、軽く苦笑すると「わかった」と言った。
 頷いてアレナは優子の少し後ろに立つ。隣にいる康之と顔を合せて、軽く微笑んで。手を繋いだ。
「あの砲台の弱点、分からないか?」
 アレナと微笑み合った後、康之はアレナとパッフェルに尋ねた。
「砲台の装甲が薄い、部分。バリアーが切れたら、狙えば……」
 パッフェルは空を見ながら、そう答えた。
「外からじゃ構造がわかりませんが、エネルギーを溜めてる部分とか、壊してしまったら砲撃は出来ないと思います」
 パッフェルとアレナの言葉に頷いて、康之は考える。
「砲台がついてる本体があるんだろけど、時間もあまりなさそうだから、内部に突撃〜ってのは無理だしなぁ」
「……既に中にいる者がいる。やってくれるさ、彼女が」
 ハンドへルドコンピューターを見ながら、優子が不敵に微笑み、その隣でティリアが頷いた。
「それじゃ、それを信じて俺達は万が一に備えてここを守る! それでいいんだな?」
 康之がアレナにそう問いかけると、アレナは微笑んで「はい」と頷いた。

 少女達は空を見ながら祈った。
 友達が、戦っている友人達が。
 自分達の元に、戻ってきますように。
 せめて自分達は、皆の学び舎を、家を護ろうと。
 そして、エネルギーに地球人の力が使われているのなら。
 皆の力を、心を、命を――受け止めてみせると。

○     ○     ○


『インターネットテレビで怪しい動きがあります。放送が流れてからでは遅いので、基地局を……お願いできますか』
 百合園の会議室で全体指揮を担当しているロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)から、インテグラルナイトに乗り待機していた祥子に連絡が入った。
「わかったわ。ここでの作業を終わらせた後、私は情報伝達の為にヴァイシャリーとの中間点に向かうわ」
『お願いします』
「もしかして屋上に、生徒達集まってるんじゃない?」
『……はい』
 ロザリンドの返事を聞いて、祥子はふっと息を漏らした。
「シャンバラ女王に仕える女官を育てることが目的の白百合女学院。
 側仕えの女官は軍やロイヤルガードの護りが破れた時、女王陛下の最後の盾となる立場だと思ってる」
 優子とパッフェルとアレナ。
 ティリアに白百合団員。
 そして、その後ろにいるであろう、美緒や一般の百合園生を思い浮かべながら祥子は言う。
「白百合団で経験を積んだ者なら、尚の事。どんなに追い詰められても切羽詰まっても、冷静に、自分の出来る事、しなきゃいけないことを見極められるようになれればいいわね」
『はい』
 ロザリンドのしかりとした返事を聞いた後「そちらも気を付けて」と言葉を送ると、祥子は通信を切った。
 そして、モニターに基地局を映し出す。
「これからは暴力の時間ね……。百合園の一般生徒にはあまり見せられたものじゃないわ」
 ここの基地局は鉄塔だ。付近に人の姿がないことをもう一度確認しておく。
「イングリット・ネルソン班長。こちら、実行に移します」
『了解しました』
「いくわよ……!」
 イングリットに連絡を入れた後、祥子は黒色チャクラム・ホロウで一気に鉄塔を破壊した。

「優子お姉様! 突然崩城さんの反応が強くなりました。同時に、砲台全体に張られていたバリアーが消えたみたいです」
 砲台を探っていた舞香は変化を察知し、優子へ連絡を入れた。
『舞香、エネルギー炉を破壊できそうなポイント分かるか?』
「はい!」
『それを直接現地の団員に連れてくれ。自身は早急に退避だ』
「わかりました」
 舞香は優子との連絡を終えると、すぐにイングリットに攻撃ポイントを教えて、自分自身はその場から離れる。

「基地局を破壊した後、受信した砲台のポイントを撃ちますわよ。
 百合園への砲撃は止めなければなりませんが、代わりにわたくし達がターゲットになるわけにもいきません。こちらに砲口を向けられてしまった際に素早く退避できるよう、一か所に固まらないようにしてください」
「了解!」
 イングリットの指示に、ホワイトスノゥ・オーキッドを操るネージュ達白百合団員は従って、攻撃ポイントを確認しつつ、互いとの間に距離をとる。
「目標確認、基地局破壊するよ!」
 ネージュは先に、任されていた基地局の破壊を行う。この付近にあったのは、道路脇に立っているコンクリートの柱のみだった。
 ネージュがウィッチクラフトライフルで基地局を破壊した直後。
「撃て!」
 ティリアから指示を受けた、イングリットが号令を発した。
「行けー!」
 ネージュはすぐに方向を変えて、ホワイトスノゥ・オーキッドで砲台の根元、エネルギー炉と思われる部分を狙い、魔力の弾丸を射出した。
 白百合団員達が付近に攻撃を加える中、ネージュの弾丸はまっすぐ目標ポイントに直撃し――爆発が起こった。
 砲台の一部が破壊されたことで、砲身の向きが変わった。
「退避!」
 イングリットがスピーカーを用いて命令をする。
「了解!」
 イコンの中でネージュは答え、直ぐにその場から離れる。
 少しして、また爆発が起きた。
 爆音が響き、大地が揺れた――。

 砲身からエネルギー弾が飛び出すことはなかった。

○     ○     ○


「ぐは……っ」
 地面の下から、男性が少女と女性を抱えて地上に飛び出してきた。
 そのままその男性――ゼスタ・レイラン(ぜすた・れいらん)はその場に倒れた。
 彼の肩からは、激しく血が吹き出ている。
「ぜすたん!」
 地面に投げ出された少女、リン・リーファ(りん・りーふぁ)が彼の傷を見るが、癒す能力は無く、手で傷口の傍を押さえて血の量を減らそうとすることくらいしか出来なかった。
「んー。これはすぐに魔法で直さないと危ないですね。とっても危ないですねー」
 共に地下から現れた女性、牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)も彼がかなり危ない状態だと分かるが、回復の手段を持ち合わせておらず、飛ぶ道具もないので。
「運ぶしかないですねぇ……。リンちゃんが彼を姫だっこして、私がリンちゃんを姫抱っこ。それともその逆がいいでしょうか」
「最悪……カッコわりぃ……」
 ゼスタは片手で自分の顔を覆い、弱くそう呟いた。
「動かすより、誰か魔法を使える人連れてきてもらった方がいいかも。あたし、ここで見てるから」
「そうですね。止血さえできれば、あとは血を上げればなんとかなるでしょうし……」
 アルコリアが人を探しに、出発しようとしたその時。
「大丈夫ですか? ……もしや、レイラン先生ですか?」
 近くの――鍾乳洞の方から白百合団員のアルファ・アンヴィル(あるふぁ・あんう゛ぃる)が走ってきた。
「そう、ゼスタ・レイランせんせーです。早急に手当てが必要なのですが、アルファさん、回復魔法使えます?」
「はい、多少ですが」
 急いで駆け寄って、アルファはヒールをゼスタにかけた。精神力が尽きるまで何度も。
 おかげで、血の噴出は止まり、ゼスタの症状は安定していく。
「はあ……」
 大きく息をつくと、ゼスタはリンの手を借りて、半身を起こした。
「ぜすたん、起き上がって大丈夫?」
「みっともねー」
 ゼスタは片手で顔を覆ったまま、苦笑していた。
「みっともなくないよ」
 リンは彼の頭の上に手を置いて、お疲れ様と言いながら撫でた。
 ゼスタは顔を隠したまま、力なく笑っている。
『百合園女学院、生徒会執行部です! 急いでここから離れて』
 ネージュが操るイコン、ホワイトスノゥ・オーキッドが近づいてきた。
「はい、百合園の生徒ですー。お風呂まで運んでくださいー!」
 アルコリアが手を振りながら大声を上げる。
 早くお風呂に入ってさっぱりして、みるみ分を補充したかった。
『あ! アルコリアさんに、アルファさん! それにゼスタ先生と行方不明の魔女さん。大変大変』
 ネージュはイングリットに連絡を入れながら、4人に近づくと。
『乗って。ゆっくり運ぶけど、ちゃんと掴まっててね』
 イコンの手の上に大切に4人を乗せて、ヴァイシャリーまで運んだのだった。

 同時に、崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)の反応があった場所を頼りに、亜璃珠と、共に向かったはずの錦織 百合子(にしきおり・ゆりこ)の捜索が行われた。
 砲台の斜め下。瓦礫で潰された砲台をコントロールしていたと思われる部屋の中に、重傷を負った亜璃珠と、重体の百合子がいた。
 それから、同じ場所で、マリザ・システルース(まりざ・しすてるーす)ファビオ・ヴィベルディ(ふぁびお・う゛ぃべるでぃ)も瀕死の状態で発見されたという。