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【創世の絆】冒険の依頼あります

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◆第四章3「サル捕獲大作戦と見学者」◆


「フリューネ、ラクシュミ、セレスティアーナたちの『三種の下着』が用意できないとは。残念だよ」
 心底残念がっているブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)の呟きに、ステンノーラ・グライアイ(すてんのーら・ぐらいあい)がやや冷たい目線を送った。
 ブルタはサル型ギフトを説得しようと考えているのだが、その説得の材料として上記3人の下着をと思っていた。しかし盗みがサル型ギフトのせいだと気づいた時にはセレスティアーナ・アジュア(せれすてぃあーな・あじゅあ)フリューネも旅立った後であり、ラクシュミ(空京 たいむちゃん(くうきょう・たいむちゃん))は、忙しく会えなかった。

 非常に残念である!(強調)

「あ、そういえば不可思議な籠はどうだったの?」
「駄目ですね。やはり時間が短かったようで」
 ヒントが何も書かれていない紙を、ステンノーラがひらひらと振る。ならばあとは、真っ向勝負で行くしかない。
 決意しながらブルタが取り出したのはバナナと、女性ものの下着。……誰のであるかは、きっと聞かない方が良い。
 そんな彼らの元へ、走って来る人影が――サルを抱えた東雲だ。ブルタがバナナと下着をそっと差し出す。
「ききっ」
 サルは下着の方を見ず、バナナに跳びついた。そんなサルをじっとみる。大きさや背に風呂敷を背負っていることから、このサルが犯人だろう。
「さて、あなたと話合いをしたいのですが」
 東雲はサルに向かって何を、と首をかしげる。
『話とはなんですか?』
 が、あっさりとサルがそう聞いてきたので驚く。
「ぜひ、私たちに協力をしてほしいのです」
 サルはバナナをもぐもくと食べながら、ブルタを見た。それから食べ終えると、ピョンと地面に降り立ち
『ならば、僕を捕まえてください』
 そうして逃げていく。ブルタは納得した。つまり、この盗難騒ぎは試練であったらしい。
「仕方ありませんね」
「交渉が無事うまく行く事を祈っていましたが……やはりこうなりましたか」
 ため息をついたブルタをみて、ステンノーラが一歩と言わず、だいぶ遠ざかった。ブルタは気にせず、近くに用意していた投石機へと近づく。
「発射!」
 そうしてあるものを投げた。茶色く、異臭の漂う……恐竜のフンを。
 サルはそれを避けたが、地面から跳ね返ったフンが身体の一部に付着した。これで匂いで追いかけることができるだろう。

 ……周囲にも大ダメージだが。

 そのまま追いかけようとしたブルタは、周囲からの圧力でフンの掃除をすることとなった。


* * * * * * * * * *



 サルがフンの匂いをまきちらしながら逃げている頃、リナリエッタは、飲食店へと足を運んでいた。
 そんなリナリエッタの目が、食事中のハーリーをとらえる。そして、彼女には分ったのだ。彼が、金持ちイケメンである、と。
 すぐそばにより、色目を送る。
「ねぇお兄さん。面白い話があるんだけど、知ってる〜?」
「へ〜? 面白い話、か。気になるな」
 しなだれかかるリナリエッタを、慣れた様子で受け入れながらハーリーが話の先を促す。ちなみにニコーラはそんな様子を見て顔を真っ赤にし、俯いていた。
「今、盗難事件が発生しているんだけど、その犯人がどうもおサルさんのギフトらしくてぇ」
「ギフトが盗みを? どんな奴か見て見たいな」
「おサルさんですか!」
 続けられたリナリエッタの言葉に、ハーリーはもとより、意外なことにニコーラが目を輝かせた。どうやら、動物好きらしい。

 次に向かう場所が決まったようである。


* * * * * * * * * *



「日記が盗まれた? って、ああ。例のサルか」
 瀬乃 和深(せの・かずみ)ベル・フルューリング(べる・ふりゅーりんぐ)の言葉を聞いて、「しょうがねぇ。捕まえるか」と腰を上げた。
「うむ。ならば、和深のえっちなほんを餌にするとしよう」
「ああそうだなって、ちょ、おい待て!」
「なんだ?」
「なんだ、じゃねぇよ。どうしてお前は俺が持っていることを知っているんだ」
 和深が睨むと、提案をしたアルフェリカ・エテールネ(あるふぇりか・えてーるね)
「どうしてこんな往来の場でそんなものを持ち込んでいるんだ?」
 そう逆に問いかける。もっともな話である。
 ぐっと詰まった和深に、「ほら、さっさと出せ」とアルフェリカが迫り、和深はしぶしぶえっちなほんを差し出した。それでもぶちぶちと文句を言うことは忘れない。
 和深たちのやり取りを見ているだけだったベルは、ふふふ、と上品に笑った。

「そうでございますね。早く見つけて、アレを誰かに見られる前に窃盗犯と共に処分しなくてはなりませんもの」

 上品な笑みを浮かべたまま、なんとも物騒なことを呟いている。罠を作ろうとしていた和深が思わず
「どんなことを書いてるんだよ」
 突っ込んでしまうが、
「もちろん秘密でございますよ」
 笑みが深まったことにより、内容は謎のままだった。そしてきっと、知らない方が幸せなのだろう。
 せっせと罠作りをしていた和深は、ふいに顔をゆがめた。どうした、と問いかけたアルフェリカも、ベルも、鼻を押さえる。
「なんだこのにお……「うきーーっ」うわっ」
 あまりの臭さに片手で鼻を押さえた瞬間、下からにゅっと現れた猿が、えっちなほんを掴み、去っていった。
 一瞬呆けたの後、和深は大声を出して追いかけていく。

「ごらー、がえじやがれーーー俺のだがらーーー」
 鼻を押さえたまま。


* * * * * * * * * *



「む、盗難事件でござるか。それはゆゆしき問題でござるな」
 見回りをしていた武蔵坊 弁慶(むさしぼう・べんけい)は、サルの話を聞いて顔をしかめた。治安の維持は非常に大事な問題だ。
 すぐに捕まえなくてはいけない、と捜索&捕獲に乗り出す。意識を研ぎ澄ませながら基地の中に罠を張る。餌には日記を使用。
 と、ふいに弁慶の鼻を突く強烈な臭い。彼の顔が別の意味でしかめられる。それでも手にした得物を離さないのはさすがと言うかなんというか。
「うきーーーっ!」
「おぬしが盗難事件の犯人でござるか!」
 臭いをこらえつつ、弓を引き、罠へとサルを誘導しようとする。小さな爆風に上手く乗り、攻撃を避けていくサル。「なかなかやるでござるな」と、思わず感心する弁慶。

「そ、そこまでです!
 大人しく観念して、盗んだ下着……い、いえ、盗んだ物を返しなさいっ!」
 なぜか涙目のアルテミスも加わったことで、サルは中々前へ進めなくなる。アルテミスの動きが若干いつもと違うが、追及はしないでおこう。

「まてーーーー!」

 後ろからは、サルを追いかけている大勢の契約者。みな、鼻を押さえている。
 こうして挟み撃ちとなったサルは、逃げ道を完全にふさがれ、とうとうお縄についたのである。

 そこへやってくる見学者一行。案内していたが、顔をしかめて言った。
「とりあえず、風呂に入れるべきだろう」
 反対の声は上がらなかった。サルはすでに大人しくなっており、みんなでとにかくサルを綺麗にする。

『すごいです! これが皆さんの大切なものを守ろうとする力、なのですね』

 綺麗になったサルが、キラキラ輝く目でその場にいる全員を見回した。
 なんだか、あまりにも予想と違う態度に、誰もが戸惑う。
 というより、『大切なもの』と言う言葉に、ほとんどが首をかしげた。
「たしかに、大切だけど」
 足をもじもじさせながら言ったのは、咲耶。うむ。たしかに大切である。すっごく大切である。

 どうやらサルの中で、大切なもの=必死に奪い返すもの=恥ずかしいものという公式が構築されているらしい。

 おい、製作者出てこい。

 『みなさんにお返しします』

 全員の脱力を知ってか知らずか。キラキラした純真な目をしたサルは、風呂敷を降ろし、盗品を返して行った。


 少し離れた所からそんな様子を見ていたハーリーは、足元に落ちていた大学ノートに気がついた。
「なんだ、これ?」
 ペラリ、と開く。

=====     =====
2023年
オリュンポス、ニルヴァーナ征服

2024年
オリュンポス、ニルヴァーナの発掘兵器の力を用い、パラミタ全土へ宣戦布告

2027年
オリュンポスとパラミタ地球連合軍との3年戦争。
双方、大きな被害を出すも、外宇宙からの侵略者ニブルヘイムの出現により、両軍一時停戦。
ニブルヘイムの出現を予見していたオリュンポスの真の目的、地球圏の統一という理想が連合軍にも理解され、オリュンポスを中心とした全世界同盟が誕生

2032年
ニブルヘイムとの最後の戦いオペレーション・ラグナロク発動。

以下略
=====     =====

 それはドクター・ハデス(どくたー・はです)の厨二病妄想ノー……げふん。オリュンポスの作戦計画書だった。
「ぶふぁっなんだこれ! まじかよ、面白ぇ! はーはっはっはは。腹いてぇ」
 大笑いするハーリー。
 そしてニコーラはというと
「はふぅ、おサルさん、可愛い」
 とうっとりしていた。

 この日、ハーリーとニコーラがニルヴァーナへの出店を決めたのであった……めでたしめでたし?