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【創世の絆】冒険の依頼あります

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◆第三章4「セレスティアーナ調査隊出動!」◆


「ふん。歌を歌ってアイドルアピールしようってことね。でも残念ね。蒼空学園のアイドルは、このラブちゃんよ!
 あ、ハーティオン、未来。ぐちょげろのモンスターが来たらささっと片付けてね」
 何やら歌に対抗心を燃やし始めたラブ・リトル(らぶ・りとる)が、歌い始めた。トップアイドルを目指しているだけあって、中々の歌唱力だ。ここが暗い遺跡の中じゃなければ、聞き入ったかもしれない。
 薄暗い中でどこからともなく(反響)聞こえる歌。……中々にホラーチックだ。
「うむ。了解した。私は蒼空戦士ハーティオンだからな! 仲間達の盾となり戦うぞ!」
 コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)がラブの言葉に力強くうなづく。
 実は当初、レッドタイフーン退治に向かおうとしていたハーティオンだが、ラブの強い意志(イノシシ倒して何が面白いのよ〜! それよりも新発見をして、あたしの名前を世界に残すのが先でしょ!)により、調査隊に参加している。
 殺気を読み取ろうとしつつ、彼の目はペカーと光って足場を照らしていた。

 説明しよう!
 これはサーチアイといい、【顕微眼(ナノサイト)】と【ダークビジョン】を組み合わせた彼の必殺技のことである。

「え、うん。分かった。任せて」
 同じく同意しているのは夢宮 未来(ゆめみや・みらい)。ハーティオンを真似して周囲の殺気を感じ取ろうとしている。
(でも、ラブちゃん……歌を歌ってたらモンスターの的になりそうだけど、大丈夫なのかな?)
 ラブとしては、美しい歌を歌うことで可愛らしい生き物をおびき寄せる作戦なのだが……未来の心配ももっともな話だった。
 そう心配する未来の頭には、奇妙な物体が乗っている。暗闇と同じ色の丸いボディに、目が一つ。身体からは手のようなものがたくさん生えている。名を夢宮 ベアード(ゆめみや・べあーど)という。ポータラカ人である。

「イセキ。
 キタコトアルヨウナ……ナイヨウナ。ヤッパナイカナー……マ、ドッチデモイイカ」

 ベアードは、ハーティオンと同じように目を光らせて地面を見ていた。ただ彼? の場合は食べ物がないかどうか探しているだけだが。
 歩いていると、やがて暗闇だった空間は抜け。再び明るい場所へと出た。そこには何やら繭のようなものがある。
「なんだ、あれは――?」
 セレスティアーナが興味津津に近づく。何かを察したハーティオンがそんなセレスティアーナの前に身体を割り込み、牙を受け止めた。
「やらせはしない! ……む、ギフトか!」
 軟体オオカミかと思って反撃しようとしていたハーティオンが、動きを止める。それはウルフアヴァターラ。誰かが持っているものと思われた。
 実は先ほどの繭。あの中には東 朱鷺(あずま・とき)がいる。単独で行動していた朱鷺は、少し疲れたため、ギフトにその間のことを任せて繭の中で眠っているのだ。そしてギフトは、そんな朱鷺を必死に守ろうとしていた。
 ハーティオンは、ギフトが守ろうとしている繭の中に彼らの主がいるのだろうと気づくが、どうするべきかと悩んでしまっていた。
 倒すわけにもいかないが、このままでは遺跡の先に進めない。

「ふっ。セレスティアーナ様、ここは我にお任せください。てやぁ……へぷすっ」
 戸惑っているハーティオンの横を越えて2体のギフトへ突撃したイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)が、あっさりやられて吹き飛ばされる。
 落下してしばし転がりまわった後、柱にガンっとぶつかって動きを止めた。よれよれと身体を少しだけ起こしたイングラハムは
「これで終わりではないぞ。次の犠牲者が必ず……」
「縁起でもないことを!」
「ぐぺらぁっ」
 パートナーの葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)によるとび蹴りでとどめをさされ、最後まで言うことができなかった。
「この蛸、無茶しやがって……」
 鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)がそんなことをいいながら、完全に身体から力が抜けているイングラハムを遺跡の外に捨てた。

 ……パートナーって、どういう意味でしたっけ?

 思わず辞書を引きたくなった、という個人的なことはさておき。
「ハーティオン! さっさと倒し……きゃあっ」
 文句を言いつつ石の一つの上に乗ったラブが悲鳴を上げた。石、と思われたソレがぐにゃりと自らをゆがめた。表面がピンク色になり。細長い。目は無く、ただ大きな口を開けた――巨大なミミズへと変貌した。
 どうやら擬態して待ち伏せしていたようだ。
「ぐっ」
 ハーティオンの意識が逸れる。その隙をついて二体のウルフアヴァターラがハーティオンへと飛びかかり、弾かれたように吹き飛んだ。
 二十二号が弾き飛ばしたようだ。ウルフアヴァターラは空中で体勢を整え、こちらを威嚇してくる。
「さて。どうしたものやら」
 道をふさがれている上に、攻撃してくる。いざとなれば壊すつもりで向かうしかないだろうが……。二十二号は冷静に呟く。

 一方、ミミズの方はというと
「さてっと。油断せず連携して戦うとするか。ヴァイス、エヴァっち、行くぜ」
 桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)は、大きなその口を剣で受け止め、不敵に笑う。
「了解しました。オーバードライブ起動します」
 煉の声にこたえたヴァイス・フリューゲル(う゛ぁいす・ふりゅーげる)の身体が、白銀に輝く。音を立てて、六連ミサイルポッド二門が動き出す。煉が巻き込まれないよう、後ろに跳び退る。
「目標捕捉。全弾発射します」
 ミサイルが放たれる。見事に命中。しかしヴァイスの顔は怪訝そうだった。そんな彼女の横を駆け抜けていくエヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)
「二番手いくぜ! さぁ壊れちまいなッ!」
 凄まじい速度でミミズに迫ったエヴァが念動式パイルバンカーをぶち込む。……が、はじかれる。
「何っ? ちっ」
 驚くエヴァだったが、追い打ちは書けず後ろへ跳躍する。ミミズの尾が彼女のいた位置を通過していった。
「エヴァっち、どういうことだ?」
「あいつ、硬くなりやがった」
 煉がミミズを見やる。どうみても硬くは見えないが、先ほどは確かに攻撃をはじいていた。
「どうやら硬度を自在に操れるようです」
 再びミサイルを放ち様子を見たヴァイスが冷静に呟く。
「なら……これならどうだ」
 魔力で強化した身体能力で一瞬のうちに懐へと入りこむ。そのまま力の限り剣を振り抜く。剣がミミズの身体に食い込む。
 そして跳ね返される。
「柔らかくもなれるのか」
 迫った口を横に跳んで避けながら、煉は冷静に考える。後ろをちらと見れば、セレスティアーナたちがいる。
「とにかく、少し場所を移動させるぞ。エヴァっち」
「ああ、分かったよ」
 名前を呼んだだけで意図が分かったのだろう。一撃を加えた後、「こっちだぞ、ミミズ野郎」と叫ぶ。

(さて。まずはミミズをなんとかした方がよさそうでありますね)
 先ほどパートナーを静めた吹雪は、再び気配を消していた。そのまま敵の動きを観察。弱点を探す。
「とはいえ、あれだけの強度と軟体生物のような柔らかさ……どうしたら」
 考え込んでいる間にも、ミミズが大きな口を開けて煉たちを追いかけている。
「本当に大きな口であります……口? ああ、なるほど」
 何かに気付いた吹雪はライフルを構えた。
「外がダメなら、中はどうでありますかっと」

 ライフルから放たれた一撃が、見事にミミズの口の中へと吸い込まれていく。大きな口が一瞬閉じ、ミミズが苦しげに暴れだした。
「なんだっ?」
 驚くエヴァの隣で、煉が「そういうことかよ。助かったぜ」と見えない味方――吹雪へと礼を言った。
「ヴァイス! 俺とエヴァっちでひきつけている間に、口の中に放り込んでやってくれ」
「了解しました」
「行くぜ、エヴァっち」
 弱点が分かれば、もう彼らの敵ではない。身体の中へと吸い込まれたミサイルが、ミミズの身体を粉砕した。

「ハラ……ヘッタ」
 場違いな緊張感のない声を出したベアード。数本の手が身体をおさえ、空腹をアピールしている。
「じゃあ、これ焼いて食べようよ。火を通せば鉄とか以外は食べられるもんね」
 コレ、とミミズの一部を見下ろした未来が、名案だ、と言わんばかりに手をたたいた。「え?」聞き間違いかと振りかえった煉たちの前で、未来は父親、ベアードのために火を用意し、焼いていく。エヴァが口もとを押さえた。
 誰か。彼女を止めてくれ!
 そんな願いもむなしく、あっという間にできあがったなんだか良く分からない物体を、ベアードは戸惑うことなく完食した。
 食べ終わった彼は、とても満足そうであった。

「あちらは大丈夫なようだが……どうしたものやら」
「うむ。持ち主を起こすしかないだろうな」
 ハーティオン二十二号が、アヴァターラたちの攻撃を受けとめながら、思案していた。
 問題は簡単だ。繭の中にいる人物を起こせばいい。だがアヴァターラたちがいて、近寄れない。普通の音で起きないことは、先ほどからミサイルなどの大きな音でも起きてこないことから明白で。
 かといって下手に繭を攻撃してしまえば、中にいる人物がどうなってしまうことか。

「こっらー! いつまで寝ているのよ! あたしの歌を聞きなさーい!」
 怒りの叫び声を発したのはラブだ。可愛いどころか、気持ち悪いミミズを呼び起こしてしまいご立腹らしい。……あれ。八つ当たりですか、ラブさん?
「なんか言った?」
 すみません。

 しかしその叫び声で目覚めたのか。繭が解けていく。
「う……今の声は一体……?」
 声が響いたのか。朱鷺は頭を押さえていた。顔を上げ、状況を確認しようとした朱鷺の目に、アヴァターラたち――試作型式神・壱式【黒麒麟】と試作型式神・弐式【白澤】が威嚇の唸り声をあげている姿が飛び込んでくる。
 そして彼らについた複数の傷……ハーティオンや二十二号も気をつけてはいたが、やはり無傷とはいかなかったのだ。
「っ!」
 慌てて試作型式神たちに駆け寄る朱鷺。彼女にとって、試作型式神たちは大事な存在らしい。キッと目つきを鋭くさせる。
 だがハーティオンの背後にセレスティアーナの姿を見かけ、我へと返ったように頭を下げた。

「こっちこそ悪かった。だが、そいつらは凄いな。決して傍を離れなかったぞ」
「あなたたち」

 セレスティアーナの一言に、朱鷺は驚いたように式神たちを振り返る。傷つきながらも自分を守ってくれた大事な存在。自分を見つめ、近寄って来る彼らを「朱鷺の宝は、直ぐ近くにあったんですね」そう優しく抱きしめた。
 アヴァターラたちが、朱鷺の腕の中で幸せそうに尻尾を振った。
 彼女たちはこれからも共に危険をかいくぐって行くのだろう。

 アヴァターラと人間との絆にほっこりしつつ、セレスティアーナたちは先へと進んでいく。