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【3】スーパードクターのサマーホリデイ……2


「は、犯罪幇助……」
 焔の魔術師七枷 陣(ななかせ・じん)は一部始終を見たあげくボソリと言った。
 人聞きの悪いことを言うヤツである。
「ま、まぁそれはさておき、噂はかねがね聞いとるよ、ドクター。お近づきの印に食いもんとかどうや?」
「ほう。美味そうだな。やはり祭りと言えば夜店に限る」
「わかるわかるー。お祭りの食べ物って特別美味しいよねー」
 リーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)は両手に抱えた食べ物をドクターに差し出す。
 フライドポテトに焼き鳥、ハンバーグくじにバーベキュー串、イカ焼きたこ焼き、焼きそばetc……。
 それから、戦うメイドさん小尾田 真奈(おびた・まな)がよく冷えたビールを手渡す。
「どうぞ、梅様。ご主人様はこちらのラムネをどうぞ」
「おう、ありがとな、真奈」
「ご相伴にあずかろう……ん?」
 ふと、リーズが期待に満ちた目配せしてるのに気付く。視線の先を追うと夜店の親父達がニコニコしている。
「もしかして、私に金を払えと……?」
「お医者さんだもん。梅さん、沢山稼いでるんでしょー。だからいいよね」
「いいよねっ……じゃない。つか、もう焼きそばバクバク食ってるし……あ、焼き鳥は残しておきたまえ!」
 育ち盛りのリーズにはめられ、しぶしぶ支払うドクター。感謝して召し上がって頂きたい。
 それから四人でブラブラしていると、ふと、真奈が熱のこもった目でこんなことを呟いた。
「それにしても不思議ですね……。梅様を見ているとどうも落ち着かない気分になるんですが……」
「ほう。私に惚れ……」
ハウンドドックRの残弾全てで、ヘッドショットしたくなるのですが……どうしたのでしょう、私……」
「……ほんとにどうしちゃったんだろうね」
 ドクターの頬を冷たい汗が流れる。
 カルテには『冥界急行ナラカエクスプレス(第3回/全3回)』の9ページ目との記述があった。
「あの、梅様……?」
「なに、何の問題もない。いたって健康だ。健康だから勿論、月のない夜に暴れたりもしない。OK?」
「は、はぁ……?」
 新月の晩は家にこもって大人しくしてる、と言う誓約書を無理矢理書かせ、ドクターはほっと胸を撫で下ろす。
「おっ、ええなー、真奈。折角やし、俺もドクターに診察してもらおうかな?」
「君も……? まぁいい、詳しく話を聞かせてもらおう」
「それがなぁ、按条MSに【焔の魔術士】ってカコイイ称号貰ったんや。けどそのあとに出た同MSのシナリオ『予報センチメートル』に凸ったら、1ページ目で雨の日無能つってフルボッコにされてなぁ……。んで【雨の日無能】称号をゲット。それからと言うもの、MS補正か何か知らんけど、リーズがなんつーか、辛辣っつーかドSっつーか……」
 複雑な表情でドクターの持つカルテを指差す。
「この『【海を支配する水竜王】孤島からの救出手段を確保せよ』の9ページ目とか。まぁ中の人的にはおいしいんやけど、これは愛のあるイジメとかそんなアレなんかって思うんすよ。そこんとこ、ドクターはどう思います?」
「残念ながら、按条MSとは面識がないので直接伺うことは叶わなかったが……」
 カルテから顔を上げて陣を見る。
「MSなりの采配でPCを動かすと言うことは、MSがPCに魅力を感じている証しだと、私は考える。それこそキャラクターが立ってなければ動かしようがないからな。雨に弱いと言う設定もとても魅力的な弱点だと個人的には思う」
「ほんまですか?」
「うむ。心配せず按条MSのシナリオに励むといい。あと梅村のシナリオのほうもよろしく頼むぞ
 そんな風に診断していると、俺も私もと診察希望者が集まってきた。
 やれやれ、参ったな……と肩をすくめるドクターの前に、こんなことだろうと思ってましたよ、と助っ人があらわる。
 ドクターの右腕を務めるピンクの象獣人、スーパーナースの【アエロファン子】だ。
 実は彼女、休日でも仕事をしてしまうドクターを案じ、あえて同じ日に休暇を申請したのだった。
「すまないな、ファン子くん……」
「それは言わない約束ですよ。ドクターが人助けをしているのに、助手であるわたしが夏休みなんてとれません」
 それから本腰を入れて診察を始める2人。
 場所は何か爆破された鍋物屋の前だったが……、まぁ誰もいないようなのできっと問題ないだろう。
「スーパードクター梅、お久しぶりです! 医学部のラルクです!!」
 そして、続く患者は新婚のラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)だった。
「ああ、君か。ご結婚されたそうだな。おめでとう、ラルクくん」
「あ、や、ははは……。ご存知でしたか、ありがとうございます。実はそれも今日の相談に関係してるんですが……」
「言ってみなさい」
それが最近よく全裸になってるんすよ……
 ひどく沈痛な面持ちの割りに、ひどくどーしようもない悩みである。
「『アグリとアクリト』の5ページ目で酒を飲んでたら全裸になった上に変なこと呟いてたり……、『泥魔みれのケダモノたち』の9ページ目じゃ脱がされるんだったら自分で脱ぐとか言って、しかも巨根と亀の頭を背比べしたりとか……」
 ドクターはカルテに目を通し、ふむぅ……と唸る。
「なぁ、先生、こんな事でいい結婚生活を送れるとは思えねぇ。治療法をおしえてくれないか!」
「ちなみに禁酒とか……」
無理だ。お、俺が耐えられねぇ……、酒がない人生なんてつまらねぇ……
……あんた、治す気あんのか?
 とは言え、本人にとっては深刻でマジで悩んでいるようだ。
「まぁ私の見たところ、主たる原因は君の股間に搭載された巨砲にある。よほど自信があるのか知らんが、ほとんど巨砲を見せびらかしたいがために脱いでるようなものだ。既婚者としてはあるまじき奔放さだが……、心配することはない」
「な、なにを!?」
 おもむろにドクターはラルクの服をひっぺがした。
 情けない声を出す彼を無視し、巨砲を鎖でぐるぐる巻きに、『砕音』と書かれたネームプレートを括り付ける。
「あだだだだっ! な、な、なんなんすか! なにするんすか!?」
ボトルキープだ。こうしておけば、脱ごうとした時に君にとって一番大事なものを思い出せるだろう」
「そ、それはそうかもしんないすけど、これ、膨張したら締め付けが大変なことに……」
「ボトルキープしてるんだ、配偶者のいないところで膨張する必要はない」
「そ、そんなぁ……。別になにもしなくても膨張する時もあるのに……」
「はい、お大事に」