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【空京万博】子猫と子犬のお散歩日記

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【空京万博】子猫と子犬のお散歩日記
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「このようなもの、何に使うというのか」
 ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)は、わんにゃん展示場の一角にテーブルを運び入れ、借りてきた鍋や湯呑やどんぶりやら、さまざまな容器を並べていく。
「にゃにゃー(何に使うのかって? それはもちろん究極的ラブリーな動画や写真をとってもらう為に使うんだよ)」
「……何を言っているのかわからぬ」
 白くてふわふわな猫に変身したカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)の言葉は、ジュレールには理解できない。
 変身する前に、容器を大量に用意してほしいということと、写真を撮ってほしいということは聞いてあった。
「にゃあんにゃんにゃんにゃあ(なべ猫って犯罪的なまでに可愛いからねぇ。このなべ猫素材を万博で広めて、シャンバラの平和に貢献するよ〜)」
 カレンは並べられた容器を見て回り、どの容器から入ろうか考えていく。
 なべ猫の愛くるしい姿を見れば、争いやらいがみ合いやらその他もろもろ、負の感情なんて一発で吹き飛ぶに違いないのだ!
「ふむ。子猫の撮影会といえば、我のメモリーにも、以前このようなブームがあったと記録されているぞ」
 言って、ジュレールは容器と一緒に準備した子猫用の学生服と鉢巻を取り出す。
「コレをまとえば、立派な不良猫に」
「にゃうぅ!(どこから持ってきたのそれ! ボクが撮ってほしいのは、なべ猫。不良猫とかなんなのソレ? ブームかなんだか知らないけど、そんなの誰も知らないでしょ」
 白猫カレンがジュレールに爪をガリガリ立てる。
「痛っ!? 何だ、これじゃないのか」
 なんだかよく解らないが、カレンが変身する前に言っていたことを思いだしながら、ジュレールは展示会場の方に目を向けた。
 そして客達に声をかけだす。
「子猫の撮影会を行うらしい。記念に撮っていかぬか?」
「なべが沢山」
「コップもあるよ。あの仔なら入れそうだね!」
「撮る撮る〜」
 声をかけた途端、興味を持った人々がパラパラと寄ってくる。
「デジタル一眼レフカメラの貸し出しもやってるよ」
 コハクがカメラと貸し出しノートを持って、手伝いに現れる。
「どうやって使うの?」
「簡単ですよー」
 コハクは使い方を教えながら、一緒にカメラを構えて撮りはじめる。
「にゃん(よーし、頑張るよ)」
 カレンはジュレールが用意してくれた、小さな土鍋の中に入り、うずくまって大人しくポーズ。
「うっわーかわいい!」
「にゃーーーーん、かわいい」
 客達が白猫カレンの可愛らしさに、感激の声を上げながら客達は写真を撮り始める。
「なーなー」
 数分の時間が経った後、ちょこんと顔を上げて白猫カレンはジュレールに訴えかける。
「ん? ああ、容器交換か?」
 何を言っているのかはよく解ってないが、ジュレールはとりあえずカレンを土鍋の中から抱き上げると、今度はコップの中へと入れた。
「にゃーん」
「うおーっ。プリティ!」
「かわいいかわいい」
「きゃーんっ☆」
 客たちはまた声を上げながら、写真に白猫カレンの姿を収めていく。
「機材の準備もできたぞ。自分のペットや、借りたペットと一緒に写ることも可能だ」
 ジュレールはカメラのセッティングを終えて、人々に案内をしていく。
「お散歩から帰ってきた方も、これからお散歩に向かう方も、よろしければお立ち寄りください」
 一緒に、アルメリアも客たちに声をかけていく。
 飼うかどうか迷っていた人が、後にその写真を見たら引き取りたくなりまた来てくれるかもしれない。そう、アルメリアは考えて、ジュレールと一緒に、来客の撮影も行っていくことにした。
「ボクはこの猫ちゃんと!」
 子供が白猫カレンをなでながら写真を求める。
 子供とコップ入り白猫カレンのツーショットはジュレールが綺麗に撮った。
「写真は後で取りに来てくださいね。必要なら、お世話の仕方も、お教えしますよー」
 アルメリアはお散歩にいく人々にそう話していき、子犬と子猫の簡単なお世話の仕方をも教えてあげる。
 捨て犬、捨て猫を引き取ってくれる人が増えることを願いながら。
「ママ、しっぽ振ってるのはうれしいからなんだよね。私もうれしい。この仔と一緒に帰りたいな」
 幼子が、母親にお願いをしている姿。捨て犬、捨て猫達に魅かれていく人々の姿が、アルメリアの目に入る。
「良い仔達ばかりですよ。よろしくお願いします」
 アルメリアの顔にも、客たちの顔にも。自然と微笑みが広がっていく。
「この動画は……ネットにアップしてもアクセス稼げそうよね」
 リーアが近づいてきて、動画の撮影をしているジュレールにそう言った。
「この仔達連れて、総合案内に戻るんだけど、この動画、総合案内で流したらどうかな?」
 美羽が子犬、子猫が入ったみかん箱を抱きしめながら尋ねる。
「それいいかもね、すっごい宣伝になりそう」
「にゃん!(任せて、可愛いポーズしまくりだよ)」
 白猫カレンは前足をちょこんと出して、可愛く鳴いた。
 それから、構って欲しそうににゃあにゃあ鳴いて、コップの中から出してもらって。
 続いて、丼の中に入る。
「猫丼か。腹は満たされぬが、心は満たされるようだな」
 人々の笑顔を見ながら、ジュレールはそう言い、カメラを回していく。

 撮り終えた後。
「ただ今、雅羅。お土産沢山あるよ」
「お帰りなさい、美羽先輩。私も早く見たいなー」
 美羽は、撮ったばかりのデータを持って、雅羅のいる総合案内所に戻り、子犬、子猫の紹介に勤しむ。
 めいやかりん、カレンのとてつもない可愛らしさに、これまでより更に沢山の人々が足を止めたという。

○     ○     ○


「うわー、拾われた仔達がいっぱいだね」
 レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)は、子犬、子猫達が集められた部屋を見て、驚きの声を上げる。
「可愛いけれど、このまま放置しておいたら、パビリオンが大変なことになっちゃうよね」
 そういうわけで、レキもパートナーのミア・マハ(みあ・まは)と一緒に集められた子犬と子猫の世話を手伝うことにした。
「小さい仔が多いよね。ご飯は……まだミルクがいいかな。お皿から飲めるかな?」
 ちょっと心配に思いながらも、レキは犬猫用の皿にミルクを注いでみる。
「哺乳瓶あるわよ」
「ホント! よかった」
 リーアに手渡された哺乳瓶の中にもミルクを入れて、お皿から飲めない子猫、子犬には哺乳瓶から飲ませていく。
「しかし、何故外にも溢れているんじゃろうな」
 ミアは外で保護してきた子猫を、部屋の中で解放する。
 子猫は鳴き声をあげながら、ミルクのそそがれた皿に向かっていき、他の子猫達と一緒にミルクを飲み始める。
「首輪のついている仔で、人間と一緒な仔は気にすることはないわよー。それ以外の仔は見つけたらこちらに連れてきてね」
 リーアは2人にそうとだけ説明をした。
「今は、この仔らが飛び出していかぬよう、世話をせねばな」
 面倒は嫌いなミアだが、動物は嫌いというわけではない。
 何よりレキが楽しそうなので、仕方なくとしう姿勢で手伝うことにする。
「きゃんきゃんきゃんきゃんきゃんきゃんきゃん(おなかすいたー。ミルクだけじゃ足りないー、全然たりないー)」
 一匹、とっても元気な柴犬の子犬もいる。
「ドッグフードが必要か? ちょっと待っておれ」
 ミアは急いでタオルやドッグフード、食器類や盥、その他世話に必要そうなものを部屋の中の棚から出していく。
「ほれ、食べ過ぎぬようにな」
「きゃんきゃんきゃん(いただきまーす)」
 柴犬の子犬――清良川 穂須勢理之空佐知毘古(きよらかわ・ぽち)は、尻尾を大きく振りながら、餌を食べ始める。
 食べながらも、落ち着いてはおらず、ミアに飛びついて、顔を舐めたり、スカートの中に入ろうとしたり、胸に飛びついて「きゃうーん」と声を上げたり。
「これこれ……ってお主もか」
 しかし、少し経つとレキとレキのもとに集まっている子犬、子猫たちの方へ突撃していく。
「レキの方が人気がある理由は、分からなくもないが……ううむ。失礼じゃろう」
 そうミアは一人呟く。
「はいはい、順番だよ、順番順番」
 レキはふくよかな胸の中に、子犬、子猫を順番に抱きながら、小さな哺乳瓶でミルクを与えていく。
「みぃー」
「くぅーん」
 子犬、子猫達はとても気持ちがよさそうだった。
「きゃんきゃんきゃんきゃん」
「にゃー、にゃー……にゃあっ」
「こらこら、じゃれすぎじゃれすぎ」
 柴犬の子犬が、他の子猫子犬の上に乗ろうとしたり、尻を執拗にくんくんしたり、じゃれついたり、ハイテンションではしゃぎまわっている。
 レキがひょいっと持ち上げても、するりとその手を逃れて、レキのスカートの中へと入り込む。
「こらこらっ、も〜」
 レギンスを穿いているので、めくれても大きな問題はないのだが、足の中をうろうろされたり、舐められたりすると、困ってしまう。
 レキはちょっと照れながらこんどはきちんと両手で強く掴んで柴犬の子犬を抱き上げ「ダメだよ。めっ!」と言って、頭を撫でた。
「きゃーん、きゃんきゃんっ」
 子犬は変わらず嬉しそうに尻尾を振っている。
「ああ、ミルクも身体についちゃってるね。身体洗ってあげるよ。暴れたらざばっと水かけちゃうからね〜、あ、こらっ」
「きゃんきゃんきゃんきゃん」
 子犬は遊び足りないらしく、再びレキの手の中から脱走して、他の子犬、子猫達に絡んでいく。