リアクション
○ ○ ○ 「康之さん、いらっしゃいませっ」 アレナが訪れた友人、大谷地 康之(おおやち・やすゆき)にぺこりと頭を下げる。 「面白い出し物やるって聞いてきてみたら……アレナ、その耳」 「えっ、変ですか」 アレナが自分の頭に手を伸ばした。 彼女はピンク色の兎の耳カチューシャを付けている。 「いやいや、逆! 目の色も相まってすげぇホントにうさぎみてぇだ!」 「そ、そですか」 「うん、最高に可愛い!」 言って、康之は親指を立てた。 「ありがとうございます……っ」 アレナは少し赤くなりなりながら、微笑む。 「凄い盛況だな。猫とうさぎの数も半端ねぇ!」 「お客様でもペットを連れてきてくれた方がいるんです」 猫&うさぎガーデンには多くの客が訪れており、大盛況だった。 「ところでアレナは猫と兎どっちが好き?」 「どっちの方がというのは、特にないです。康之さんは?」 「俺は猫も兎もどっちも好きだ! 猫は自由気ままにゴロゴロしてる姿が可愛いし、兎はちょっとした仕草に愛嬌がある!」 「ふふ、そうですね」 「ああっ、わたげうさぎがいる!!」 「はい、お客様が連れてきてくださったんです」 「もふもふさせてもらえるかな? 写真でしか見たことなくてさ、一度触ってみてぇ〜って思ってたんだ!」 「はい、触らせてもらえると思いますよ〜」 康之はアレナと一緒に、行進しているわたげうさぎへと向かって行き、ミリアとティナの許可を得て、触らせてもらことにした。 「うおおっ、もふもふだ、ホントもふもふだ」 康之が抱き上げて、抱きしめて、もふもふ撫でた。 それからアレナへと渡す。 「ふわふわです。ふふ、ふふふっ」 アレナは大切そうに両手で包み込んで、そっと頬を寄せて目を閉じて感触を楽しんだ。 「なんか、癒されるなぁ」 猫やうさぎ、そして微笑むアレナの姿をみて、康之はそう言葉を漏らした。 「しっかしこういう出し物を考えるってことは、ゼスタも猫やうさぎが好きなのかなぁ?」 ゼスタは猫を抱きながら、女の子のグループの接客にあたっていた。 「好きみたいですよ」 「そうか……話によるとすげぇ甘党だって話だから、案外そういうのに目がないのか」 「女の子が好きなもの、好きですよね。だから女の子とあんな風にお話し、弾むんですね……」 アレナは少し複雑そうな顔で、女の子達と笑い合っているゼスタを見ていた。 「どうだな……。確か日本でこういう男の事ってなんていうんだっけ……そうだ、乙男だ!」 「オトメンですか? イケメンって言葉なら、聞いたことあるんですけれど」 「まあ、イケメンでもあるけどな」 「イケメンのオトメンなのですね」 アレナは納得したのか、うんうんと小さく頷いた。 (けどまあ、こういう皆が楽しめるような事を考える事ができるなら、ゼスタは根は悪い奴じゃないのかもしれないな……って、本人知らないのに勝手な評価はできねえか) アレナと2人で彼の元に向ったら、会話くらいできるだろうか。 だけれど、何を話すべきか。 アレナという共通の話題はあるのだけれど……。 (ゼスタと話せる機会ないかなぁ……ゼスタから見たアレナの事とかで色々と聞いてみたいしなぁ) ふと、そのゼスタがこちらに目を向けた。 彼はアレナに微笑みを向け、それから隣にいる康之に目を留めて。 目を煌めかせて、くすっと笑みを浮かべた。 すぐに目を逸らして、彼は少女達の接客に戻る。 「康之さんも今度、若葉分校行きましょう。ゼスタさんがたまに、スイーツの差し入れ持ってきてくれるんですよ。あ、ゼスタさん、一応パラ実の先生なんです。分校では遊んでばかりですが……」 「そうなのか、機会があったら行ってみてぇな!」 「はい」 アレナは温泉でゼスタと話をして以来、彼のことを嬉しそうに話すようになった。 康之はその日の事をアレナに詳しく聞いてはいないけれど。 康之の助言通り、歩み寄れたのだと……少し、仲良くなれたのだと康之は感じていた。 「康之さん、あそこのうさぎさんが沢山集まってるベンチに行きませんか?」 アレナが笑みを向けてくる。 勿論康之は大きく頷いて、アレナと一緒にベンチに向かい、うさぎと、猫と、大切な人と、楽しい時間を過ごしていく。 |
||