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■年の瀬の大告白大会&隠し芸大会!

「セイニィ、今年もおつかれ」
武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が、軽いお酒を運び、
セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)へと渡す。
「ありがと」
2人はグラスを傾け、乾杯した。

「それにしても、真冬なのに、すごいな」
セイニィは、私服もスポーティーな衣装を好んでいるようだった。
もちろん、パーティーに合うように、動きやすさと華やかさを兼ね備えている。
また、真冬にもかかわらず、ホットパンツ姿であった。
「このくらい普通よ。
おしゃれに妥協したら乙女じゃないでしょ?」
「はは、たしかに。よく似合ってるよ」
「……ありがと」
ストレートな牙竜の褒め言葉に、
威勢の良いことを言っていたセイニィも、少ししおらしくなる。

「そういえば」
牙竜が、ふと思い立ったように切り出した。

「唐突な話だが、地球の作品で星の王子様の作者、
サン・テグジュペリが残した言葉に
『愛する……それはお互いに見つめ合うことではなく、
いっしょに同じ方向を見つめることである』と……セイニィはどう思う?」
「どうしたの、急に。そういえば、ホワイトデーのとき……」
セイニィに、牙竜がホワイトデーにプレゼントした、
水晶製の獅子置物。
それに添えられていたメッセージカードには、同様の引用が書かれていた。

「俺は見つめ合うことも大事だと思うが、
いっしょに同じ方向を見つめることで未来へと進んでいく、
困難もあるだろうしぶつかり合うこともあると思うけど、
傷ついた事が無駄ではなく、その先に今よりももっと素晴らしい未来を見ることができる」
セイニィの青い瞳を見つめて、牙竜がゆっくりと続けた。
「愛する人と共有の目標をもって生きていけたら、幸せになれる。
愛する人と共有できる……幸せの目標を見つけて提案できたら、
とても素敵な強い『絆』になると思う」
セイニィをじっと見つめながら、そう告げる牙竜に、
セイニィは、返す言葉を選んでいるようであった。

「あたしは……」
セイニィがそれだけ言って、沈黙が訪れた時。
ふと、牙竜はステージの方を見た。
「セイニィ、少し恥をかかせてしまう非礼を先に詫びておく」
「え?」
「『大告白大会』でセイニィへの愛を告白してくる……聞いててくれ」
「ちょ、待っ……!?」
セイニィの制止を振り切り、牙竜はつかつかとステージへと歩みより、
堂々とマイクを持ち、大きく息を吸った。

「愛する人へ見つめ合うって愛の言葉を告白したら、
いっしょに同じ方向を見つめて、君と一緒に同じ未来に向かって共に歩いていきたい!」

会場から、おお、とどよめきが上がる。
牙竜はセイニィの名前こそ出さないものの、
直前の会話から、セイニィに向けた発言ということは明らかだ。
もっとも、2人を知るものからすれば、
牙竜の言葉が誰に向けたものかは、一目瞭然であったが。

戻ってきた牙竜に、セイニィが顔を真っ赤にして詰め寄る。
「バカ、恥ずかしいでしょ!
どうしてあんなことするのよ!」
ツインテールが動揺した猫の尻尾のようにばさばさと振られる。
一方、牙竜は、照れている様子もなく、
至極当然のことを伝えるように言った。
「愛することって、態度だけじゃ伝わらない……言葉を伝えてこそ伝わるものだと思う」
「だからって!」
「囁く愛の言葉も大切だけど、
恥じることなく威風堂々と愛の言葉を伝えたいと思ったから参加した」
堂々と言う牙竜の態度に。
「あんたってほんとに、どーしよーもないバカ……」
セイニィは、顔を赤らめてうつむいた。

牙竜は、微笑を浮かべて、うつむいているセイニィの手を、そっと取った。
「今は返事もらえないだろうから少しの時間だけ、
君の青い瞳を見つめさせてはくれないだろうか?」
「牙竜……」
「いっしょに同じ方向を見つめるのは返事をもらってから……」

お互いの吐息が触れ合いそうな至近距離で、
2人は見つめあう。
年の瀬の特別な時間は、とてもゆっくりと流れていくようだった。