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リアクション
ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)は、隠し芸大会のステージへと上がりつつ、
アルバ・フレスカ(あるば・ふれすか)に迫っていた。
「2018年のクリスマスパーティーで目を角でつかれたのは
全っ然怒っていないから……怒って……ないから」
ひきつった笑顔で言うネージュに、アルバ・フレスカが気圧される。
「よ、4年以上前の話じゃないですか……」
「そういえばそうだっけ。
でも、外見年齢と実年齢の差を超越したあたしに、
4年程度の時間は問題じゃないよ!」
「言ってることの意味がわかりませんよ!?」
ネージュは、用意してきた水筒を一気にあおった。
中身は、パートナー達のお手製激辛スープカレーである。
「辛れええええええええええええええええええええええええ!!」
天に向かって、ネージュが火柱を噴き上げる。
「セルフオーバーキル……出落ちにかけて、このあたしの右に出る者はいないよ!」
火柱を利用して、
マシュマロ、トウモロコシ、さつまいも、牛ヒレ肉を順番にいい感じで焼いていく。
最後に、最大出力の火力の火柱が噴き上がる。
そのまま、自らも黒コゲになり、ネージュは壇上に突っ伏す。
「ふふっ……燃え尽きた……よ……」
■
ナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)は、
プリンセスカルテットのグィネヴィア・フェリシカへの想いを秘めつつ、
隠し芸大会で楽しませようとしていた。
「水芸ってのは聞いたことあったんだが……」
別の百合園生のサイコキネシスやカタクリズムの水芸も楽しかったが、
黒コゲになったネージュを見て、
ナディムが、呆然とつぶやく。
「でも、あれ、おいしそうじゃないですか?」
「上手に焼けましたー」
グィネヴィアが、焼き上がった食材を指し示して言う。
「なんだか、どっかで聞いたことある気がする台詞だな……」
ネージュから焼きたての食材を受け取り、
ナディムがグィネヴィアに手渡す。
「まあ、本当においしそうですわ」
ほかほかの焼いもを、グィネヴィアが半分、ナディムに手渡してくれる。
「ま、いいか」
ナディムは、想い人の楽しげな姿に、
たとえ、一時の時間であっても、こんな一時を大切にしよう。
そう思ったのだった。
■
そこに、ステージの上へと、
百合園生の下川 忍(しもかわ・しのぶ)が乱入してくる。
「じ、実は、ボクは男なんだよ!
静香さんやラズィーヤさんには言ったのに、
何故か百合園に通う事になったんだよね!」
突然のカミングアウトに、会場がざわつく。
「なんですって!?
しかもラズィーヤおねえさまと秘密を共有しているなんて、ゆるせないわ!」
佐藤 花子(さとう・はなこ)が、忍に襲い掛かる。
「秘密の共有?
どうであれ、ラズィーヤさんや他の方々にぶっとばされてもかまわないんだよね!」
「ラズィーヤおねえさまにぶっ飛ばされたいですって!
なんてうらやま……ずうずうしいのかしら!」
■
一方、
風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)は。
忘年会に出席している、友人や知人にあいさつ回りをしていた。
「今年は大変お世話になりました。
来年も宜しくお願い致します」
「よろしくお願いしますわ」
やけに老成した感じで、優斗がラズィーヤにふかぶかとお辞儀をする。
大騒ぎの忘年会会場であって、やけに地味であった。
いや、そのせいで、花子に目をつけられたのかもしれない。
「ちょっと、そこのあなた!
私のラズィーヤおねえさまに近づかないでよ!」
「え、ちょ!?」
頭に血が上った花子が、優斗を捕まえると、
ステージの忍に向かって放り投げる。
「うわあああああああああああああああああ!?」
完全にとばっちりであった。
「きゃああああああああああああああああああああ!?」
優斗が激突してぶっ飛ばされた忍は、
最後の炎を噴き出して燃え尽きたネージュにも激突した。
「ガファッ!?」
ネージュたちはそのまま団子になってごろごろと転がっていく。
「あにゃーっ!?」
「なんでボクまで!?」
さらには、花子やアルバ・フレスカを巻き込み、
ネージュのカレーの残り火で大爆発する。
「「「「「うぎゃああああああああああああああああああああああ」」」」」
ぶっ飛ばされた優斗と忍とネージュと花子とアルバ・フレスカは、
会場の天井を突き破って、お星様になった。
「あれはいったい……」
風森 望(かぜもり・のぞみ)やナディムなど、隠し芸を見物していた者達は、
あっけにとられ、その様子を見つめる。
「まあ、すごい。身体を張った芸ですのね!」
「そ、そうだな、グィネヴィアのお嬢さん……」
ナディムは、全部、芸のうちだと思ってるグィネヴィアが、
楽しんでくれているのなら、まあいいか、と思ったのだった。