校長室
四季の彩り・冬~X’mas遊戯~
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〜エピローグ〜 「いい色になりましたね。じゃあ、そろそろ注ぎましょうか」 自宅に戻り、涼介はミリィとミリアと3人でテーブルを囲んでいた。それぞれの前には、スライスされたシュトーレンが用意されている。クリスマスに向けて涼介が焼いておいたものだ。 家族お揃いのカップに、蒸らしたての紅茶を注いでいく。クリスマス用にブレンドされた、この日の為にあるような紅茶だ。 今日という穏やかな日がこれからも続くように、願いを込めて…… 「来年も再来年も……いいや、これからもずっとクリスマスは家族みんなで過ごそうね。約束だ」 「はい〜。きっと、約束です」 「今から、とっても楽しみですね」 湯気上るカップを、3人で軽く合わせて乾杯する。 その音には、全員の想いが込められていた。 〜おまけ〜 「わー、ねえおにいちゃん、花琳ちゃんから写真が届いたよ!」 後日、クリスマスパーティーに参加した皆の下に花琳と大佐から郵便が届いた。内容はそれぞれ手紙と写真で、大佐からの方には動画データの入った記録媒体も同封されている――ちなみに、大佐はルイには追加で、もう1枚謝罪の手紙を入れていたらしい―― ピノは大佐からの手紙をラスに渡し、兄妹連名の宛名であった花琳からの封筒を開けてたくさんの写真を広げている。 「みんな、良い笑顔だなあ……あ、そうそう、あさにゃんちゃんはそのままあさにゃんちゃんの格好で帰ったんだよね! イディアちゃんもプレゼントいっぱいで、嬉しそうだなあ……」 テーブルの中央には集合写真が置いてあって、ピノはパーティ当日の思い出を楽しそうに話していた。だが、ラスは彼女の話など碌に聞かず、届いた記録媒体をパソコンに突っ込んで画面を食い入るように見つめていた。机には、 「犯人は私でした! ごめんね! (・ω<)ミ☆」と書かれた手紙が放り出されている。ラスにとって、この記録映像はある意味どんなプレゼントより有用な物だった。犯人が誰かなどということは極々些細な事で、もっとも重要な問題は―― 「くっそ、暗くて殆ど見えねーじゃねーか。これじゃあ判らね……あーーーーーーもう! 何で自分のエロ動画をこんな真剣に見なきゃいけねーんだよ!」 アクアとどこまでいったのか、ということだった。 同日、イルミンスール魔法学校にあるアクアの寮部屋では―― 「……また、貴女ですか……」 大佐からの手紙を手に、アクアは少々の呆れを込めた溜息を吐いた。何だかもう、怒る気にもならずに何となく脱力してしまう。その首にはアクアマリンの石のついたペンダントが掛かっていて、彼女は封から出しただけの記録媒体をちらりと見る。部屋にはパソコンも在ったが、中身を見るつもりは無い。現実を直視したくない、ということではなく事実が判明したからであり。 アクア自身の記憶はおぼろげでも、彼女は触れられた箇所、感覚を体内の自動記録装置と同期させることで真実を思い出すことが出来たのだ。 「……一番大切なものは何とか守れたようですし、今回は、許してあげます」 大佐に対して『許す』など、本人が居ない場所での発言とはいえ、少しばかり抵抗があるが。そんな立場ではない、という思いと、一度は壊されかけたしこのくらいは、という思いが同時に過ぎる。 同期した時に改めて自覚した、記憶が完全に飛ぶ前の会話を思い出す。 (私はもしかしたら、ずっと“彼に”謝りたかったのかもしれません。そして、彼は……)