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四季の彩り・冬~X’mas遊戯~

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四季の彩り・冬~X’mas遊戯~
四季の彩り・冬~X’mas遊戯~ 四季の彩り・冬~X’mas遊戯~

リアクション

 25−11

「パレードがもうすぐ始まるみたいですよ。早めに前に行きましょう」
 レストランを出ると、ザカコはアーデルハイトの先に立って集まり始めた人々の間を抜けてパレードが良く見えるポイントへと移動していった。彼女の手を取ってはぐれないようにしながら、うまく前の位置を確保する。
 時を待たずして、ナイトパレードは始まった。
「綺麗ですね……」
「そうじゃなあ……」
 掌大の電飾が、連なり集まることで大きな1つの形になる。次々と現れるキャラクター達のパレードを視界に留めつつ、ザカコはアーデルハイトの横顔を見る。
(……何だかんだとありましたが、アーデルさんが笑顔でいてくれたら、自分はそれだけで幸せです)
 人々のざわめきとパレードの音楽が空気を揺らす中、隣の彼女の耳に届く位の声で話しかける。
「アーデルさんと一緒に来れて今日はとても楽しかったです」
「……そうじゃな。私も悪い1日ではなかったぞ」
 アーデルハイトは満足そうに頷いた。真実、充実したクリスマスだったと思う。
「……また来年も、こうしてゆっくりと遊べたらいいですね」
 色とりどりの光が心からの願いを込めて、ザカコは言った。

              ◇◇◇◇◇◇

 色々なアトラクションを周り、日もとっぷりと暮れた頃。
 真言はマーリンと園内に作られた湖の傍を散策していた。多くの施設で賑わう通りよりも照明が控えめに抑えられた石畳の道を、景色を楽しむようにのんびりと歩く。メインストリートの方で始まったパレードに人が集まり、この辺りはひっそりとして誰の姿も見えなかった。湖の周囲に植えられた沢山の花々が、見る者の目を楽しませてくれる。
(あれは……)
 歩道から外れた位置、数本の常緑樹と人口岩に囲まれた場所にぽつん、と白い木製のアーチが設置されている。アーチの上部にはヤドリギで作られたクリスマスリースが飾られていて、真言は逸る気持ちの中でマーリンを見上げる。
 できれば、このまま通り過ぎないであの下に行きたい。
 貴方が好きです、なんて言えないけれど、せめて、その――
「……マーリン、あの……」
 そっと、袖を摘ままれる。迷いと願いを内包した瞳が、彼とヤドリギの間を行き来する。
「真言……」
 その想いを感じ取ったマーリンが、足を止めないわけもなかった。
 2人は、ヤドリギの下でキスをした。彼女の緊張を和らげるように優しい手つきで肩を抱いて、柔らかな唇に軽く触れる。僅かなその時間の後に視線を交わし、マーリンは真言に今の気持ちを告げた。
「……俺は、真言の一番じゃなくてもいい」
「え……」
 驚きの含まれた目が見返してくる。真言としても色々と悩んでいそうなのは伝わってきていて、何に悩んでいるのかも薄らと分かる気がして。だから、はっきりと言ってもいいのかもと思った。今までずっと見てきた分、彼女の大事にしたいものは十分に解っている。
「でも、どうしても譲れないところもある」
 そこだけは、俺が一番だったらいいなと思っている。
「総合も、大好きな人の一番もあの子にくれてやる。……だから、大好きな異性だけは、俺が一番であってほしい」
「……それで、いいんですか……?」
 呆然としたままに、真言はおそるおそると口を開く。「ああ」と断言すると彼女の瞳に涙が浮かんで。
「はい、それは……それは、絶対です……」
 彼の胸に額を預けて、真言はこくこくと、何度も一生懸命に頷いた。

 そして、2人は宿泊券を使ってホテルに行って――
(確信犯か……!!)
 ダブルベッドにマーリンが絶句したのはその後の話で。気持ちを確認してもいきなり色々早い……と、さすがに踏み切ることはできなくて。
 2人は微妙にお互いベッドの端で、緊張と共に朝を迎えた。