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レターズ・オブ・バレンタイン

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レターズ・オブ・バレンタイン
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44)

スキー場にて。
快晴のゲレンデに現れた、
セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)を見て、
武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は息をのんだ。
「綺麗だ、セイニィ」
「……バカ」
かわいいスキーウェアは、
ゴールデンカラーと黒を基調とした、セイニィによく似合うものだった。
「とっとと滑りに行くわよ」
「ああ。セイニィは、スキーの経験はあるのか?」
「こんなの、見てればわかるわよ」

セイニィは、さっそく、空中で宙返りをやってのける。
おお、と、スキー場で喝采がわいた。
「さすが、セイニィ。飛行中の飛空挺を八艘飛びで次々と撃墜してただけのことはあるな」
あれから、3年以上の時が経ったこと。
平穏な時を過ごせる幸せを、牙竜はかみしめていた。

ぽふっと、牙竜の頭に雪玉が直撃する。
「なにぼやっとしてるの?
そのカメラであたしを撮ってくれるんでしょ?」
「ああ、そうだった」
あまりにも綺麗だったので、見とれていた、とは、さすがに言えない。

運動神経抜群のセイニィは、
アクロバティックな動きを次々とこなし、
歓声を浴びていた。

「ウィンタースポーツの女王だな」
牙竜は、シャッターを切りながら、ほれぼれとコメントする。

「牙竜、こっちこっち!」
セイニィが眩しい笑顔を向ける。
「ああ、今、行くよ」
2人は、美しい冬山を背に、並んで立った。
「じゃあ、行くわよ」
「おう」
セイニィと牙竜が、並んで滑走する。
息の合ったその姿は、
美しい軌跡を描いて、ゲレンデまで滑り降りていった。

楽しい時間はあっという間に過ぎて、
やがて、帰る時間が近づいてくる。
「しまった、楽しいからって、今日の記念になるような写真を残してなかった」
セイニィの写真をたくさん撮ってはいたが、
2人の記念写真はなかったのだ。

カメラを三脚にセットして、
牙竜が急いでセイニィの元に走る。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
その時、牙竜がつまづいて、セイニィにキスしそうになる。

カシャッ!

ちょうど、その時、シャッターが切れる音がした。

「バ、バカッ!」
照れるセイニィが、牙竜からカメラを奪おうとするが。
「いてて、やめろ、セイニィ」
牙竜はカメラを死守して思い出を永久保存したのであった。