シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

若葉種もみ祭開催! ~パラ実分校学園祭~

リアクション公開中!

若葉種もみ祭開催! ~パラ実分校学園祭~
若葉種もみ祭開催! ~パラ実分校学園祭~ 若葉種もみ祭開催! ~パラ実分校学園祭~ 若葉種もみ祭開催! ~パラ実分校学園祭~

リアクション


第8章 動物楽団とチャリティーライブ・第二部

 ステージ裏に幕を張り、急遽作った更衣室では第二部のための衣装替えが大急ぎで進められていた。
「わぁ! すごいっ。かわいい!」
 のメイドロボや空賊達が夜なべして作ったというのは、動物の仮装セットだった。
 歓声をアテナにエリシュカ・ルツィアがハムスターの仮装セットを渡した。
「うゅ……アテナは、ハムスター。エリーは、リス、なの」
「メイドロボちゃんはお裁縫得意だけど、空賊ちゃんは大変だったよね〜。菊おねーちゃん、みんなにありがとうって伝えておいてね」
「ええ、伝えておきます」
 やさしく微笑んで頷く菊が扮するのはウサギである。
 パパッと着替えたエリシュカは、少し手間取っているアテナを手伝った。
「アテナ、しっぽもちゃんと付けないとダメ、なの」
「あっ、忘れてたっ」
 アテナは尻尾の付いたスパッツを受け取る。
 瑛菜もこういうのはあまり経験がなく、先にヤマネコになったグロリアーナ・ライザの手を借りていた。
「肌を出さないってのが本格的でいいね」
「バニーガールやネコミミ娘では、ちといかがわしいであろう。テーマにも合わぬしな」
「それもそっか。……っと後はこれを被るだけだね」
 瑛菜はアライグマの被り物を取った。
 グロリアーナが垂れている紐を指して説明する。
「これは顎紐だ。脱げぬように、此処でしっかり顔に固定するのだ」
 被ったアライグマの位置を直され、瑛菜は言われた通りにしっかり紐を結んだ。
「へえ、ちゃんと見えるね。ちょっと狭いけどこれなら問題ないよ」
「みんな、準備できた?」
 キツネに仮装したローザマリアが全員を見渡した。
「第二部はしゃべりはNGよ。身振り手振りとドラムのリードで合わせていくわ」
 第二部は、学園祭で成立したカップルを森の動物達が祝福する、というコンセプトだ。
 もちろん、付き合いの深いカップルでも夫婦でも友達同士でも、参加は自由だ。
 幕の向こうから第二部開始を告げる声がした。
「がんばりましょう!」
 ローザマリアのかけ声に、全員が力強く頷いた。

 第一部の熱を残したまま、辻永 翔(つじなが・しょう)辻永 理知(つじなが・りち)の夫婦は第二部開始を待っていた。
「どう? 学生気分、味わえてる?」
「そんな言うほど昔じゃないけど、でもいいね。演奏も選曲もよかった」
「……それだけ?」
「もちろん、理知と踊るのも」
「私も! こんなに思い切り体動かしたのはちょっと久しぶりかも。それと……キャバクラも」
 前に夜の空京を二人で歩いた時は、まだ未成年であることと翔の職業を考慮して歓楽街には行かなかった。
「キャバクラ喫茶らしいよ。キャバ嬢もホストもいるけど健全な営業を行ってるんだって」
「健全なキャバクラって……」
 翔の説明に理知が首を傾げた時、二人についていたキャバ嬢が会話に加わった。
「喫茶店でもあるんです。おさわりバーじゃないですから、どんなお客様も安心して休めますよ」
 理知のグラスの中身が残り少ないことに気づいたキャバ嬢が、ノンアルコールワインを注ぎ足した。
 さらにつまみも追加する。
「荒野にがんばって作った畑での採れたてお野菜スティックでーす。特製のソースを絡めて召し上がれ! 怪しい野菜じゃないから大丈夫ですよ〜」
 荒野で手に入る自称小麦粉。その手のものではないとわざわざ主張するところが、荒野のキャバクラらしい。
 少しすると、再びステージがざわめき始めた。
「第二部開始だね。ごちそうさま、おいしかったよ」
「ありがとう、また来てくださいね!」
 会計をすませ、二人はキャバ嬢に見送られてダンススペースへ向かった。
 ステージ上には動物に仮装した瑛菜達。
 リスのエリシュカがスティックを振って合図をし、演奏が始まった。
 熱く激しい第一部に比べ、第二部はトーンを落とした大人っぽい雰囲気の曲だった。
 歌はなく、音だけですべてを表現している。
「被り物してかわいいね」
「のんびりいこうか」
 翔が理知の手を取る。
 何かを決めたわけでもないのに、二人の息はぴったりだった。
 もしかしたら、第一部の時よりも寄り添っているかもしれない。
 そう思うとなんとなく恥ずかしくなり、理知は翔のどこを見たらいいのかわからなくなってしまった。
 それでも、チラッと翔の顔を見上げると、理知と同じように感じていたのか照れた様子だった。
「もしかして、照れてる?」
 理知は、つい聞いてしまった。
「て、照れてない。そう言う理知こそさっきから落ち着かないようだけど?」
 こんなところで翔の負けず嫌いが発揮された。
「学園祭のダンスパーティだからかな。何ていうか、憧れてた人と思いがけずダンスのパートナーになったようなって言うか……」
「懐かしいような、新鮮なような?」
「うん。一言で言えば幸せなんだけどね。幸せにも、いろんな感覚があるんだなって思った」
 理知が翔の胸に額を寄せると、服越しに体温が伝わってくる。
 翔の手が、理知の頭をやさしく撫でた。
 不意に理知が顔をあげる。
「翔くん、もう少し踊ったらまた他のところに行ってみようよ。まだ行ってないとこあったよね?」
「闘技場にでも行ってみるか?」
「そうしよう! 出場するなら私がコントローラーを握るよ」
「なるほど。俺がイコンの役だな」
 二人は笑みを交わしながら曲に合わせてダンスを楽しんだ。