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まほろば大奥譚 第四回/全四回(最終回)

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まほろば大奥譚 第四回/全四回(最終回)

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第五章 燃ゆる扶桑の都1

「狼煙(のろし)があがったか。貞康公の時とは勝手が違うだろうけど、やるしかないぜ」
 幕府・葦原陣営では、鬼城忍者部隊『八咫烏』頭領武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が将軍の傍らに立っている。
 そうしている間にも、彼の部下の忍者達が入れ替わり立ち替わり情報を届けていた。
 牙竜はしきりに時間を気にしながら、周りを見ている。
「俺にも大仕事があるしな」
 貞継は総大将として戦国武将のような出で立ちで、陣中に腰掛けていた。
 将軍は今や主戦で鬼城家の忍者部隊を指揮している男を見上げていった。
「牙竜……」
「何だ」
「何を企んでいる?」
「人聞きの悪いこと言うなよ。俺は、将軍やマホロバのことを考えてるよ。それでいて、瑞穂のこともだ。この内乱は、あっちゃならかったんだよ」
 それでだ……といって、牙竜は両手の平を差し出した。
「俺の言った血判状、書いてくれたか」
「無理だ。瑞穂にこちらから頭を下げて共闘を持ちかける筋がどこにある」
「――ああ〜!? 分からず屋だな! 俺はそんなことをいってんじゃない。互いにマホロバを守る気があるのかってことだ。天子様の言ったマホロバを守る資格のことだ。認めて貰う気があるのかってことだ!」
「将軍が……瑞穂に対しての誓うということはできない。だが、天子様には誓う。これならば、良いだろう?」
 貞継は桐の箱から書状を取り出し、牙竜に手渡した。
「なんだ、書いてんじゃねえか」
「そこには、鬼城家の……将軍としてのマホロバへの統治に対する想いをしたためてある。それに対して、瑞穂がどう思うかは知らん。敵対するなら制裁する。それだけだ」
「いや……これで十分だ。一世一代の大舞台なんだからさ。派手にやろうぜ」
 牙竜が書状を懐に入れて、その場を立とうとしたとき、将軍が彼を呼び止めた。
「何だ、まだ何か……」
「この戦が終わったら、お前や篠宮 悠(しのみや・ゆう)たち御従人、他戦績のあった者たちを幕府直参、つまり『旗本』に取り立てる手筈になっているから、そのつもりでいろ」
「……は? 何を急に……」
「葦原の第四階梯にもなれるだろう。それがお前の望みだったはずだ」
 将軍の腹積もりが分からず牙竜が不審がると、彼が待ちわびていた知らせを持って重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)がやってきた。
日数谷 現示(ひかずや・げんじ)殿の居場所を特定しました。雅様と灯様からも準備が整ったとのご報告を受けております。牙竜様、お急ぎください」
 龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)武神 雅(たけがみ・みやび)の元へリュウライザーが牙竜を誘導する。
 主(あるじ)を前に、リュウライザーは音声を上げた。
「『八咫烏』の忍者諸君! これまでの我々の努力を結実させる時です! 今日は、日の当たる任務ですぞ!」