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Entracte ~それぞれの日常~

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Entracte ~それぞれの日常~

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『……』


 ――何が起こっているの?
 
 少女の前にあるのは二つの影。
 一つは自分と同じ年頃の少女……いや少年か。
 そしてもう一つは侍女服姿の女性。
 両者の間に生じている、闘い。
 それはあまりにも常軌を逸していて、彼女の目では追いきれるものではなかった。
 
 ――どうしよう……
 
 あの二人を止めたい。
 だが、それを成すだけの力を彼女は持っていない。
 そのとき、声が聞こえた。それは直接彼女の頭の中に響いてくる。

 ――こっちよ、早く!

 その声に、彼女は聞き覚えがあった。
 前に夢の中で聞いた女性の声。

「あなたは、誰?」
「わたしは――」

 声のする方向にあった姿、それは――

* * *


「……夢?」
 奇妙な夢だった。
 ヴェロニカ・シュルツは目を覚ますなり、夢の出来事を思い出そうとする。
 だが、はっきりと思い出せない。
 それでも、女性の声だけははっきりと覚えている。
「あの声は一体、誰なの?」
 考えても、答えは出ない。
 ベッドから起き上がり、身支度を進める。
 天御柱学院に転入して二日目、今日は朝から転入生向けのオリエンテーションに参加することになっているのだ。
 昨日は挨拶だけだったが、今日から本当の意味で学院での生活が始まる。
(忘れ物は……ないかな)
 期待と不安を胸に抱き、彼女は玄関のドアを開いて一歩踏み出した。

 しかし、このときの彼女は、まだ己に待ち受ける運命を知らなかった――