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Entracte ~それぞれの日常~

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Entracte ~それぞれの日常~

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11:30〜


・公開試運転後


「パイロットに異常なし」
 モニタリングをしていたドクトルが確認を行う。
「公開試運転は無事成功ですね」
 ハンガーに帰投していくレイヴンの姿を見つめ、風間が呟いた。
「今回試運転を行った生徒に関しては、今後も引き続きテストパイロットとして搭乗したもらいましょう」
 微笑を浮かべる。
「レイヴンの力はこんなものではありません。パイロットに応え『進化』する機体なのですから」
 ドクトルが風間を睨む。
「風間君。確かに今回の試運転は成功だ。だが……」
 データ上では、何ら問題はない。
 だが、ドクトルは言い知れぬ危惧を抱いていた。
「あなたの言う『強靭な精神力』、意志の力とやらを彼らが持っているのなら、大丈夫でしょう……この先もずっと」
 そう残し、風間が去っていった。
「大佐、どうされましたか?」
 ホワイトスノー博士の顔を見やる。彼女にも思うところがあるようだ。
「いや、何でもない。シンクロ率による段階的な武装反映プログラムを組んだのは私だ。あの男が何を企んでいようと、機体をどうにか出来るはずがない」
 博士が静かに呟いた。
「なのに……なんだ? この胸騒ぎは」

* * *


 レイヴンから降り、杏は早苗に指示した。
「早苗、レポートは任せたわ。いつもの【アレ】でいいわ」
「えー、またですかぁ」
 その場でフリーのメールアドレスを取得して、レイヴンの情報提供者にレポートを送らせる。
 相手の連絡先は聞いておきながら自分のメアドを簡単に教えないのは、アイドルとしての自覚をまだ持っているからだ。
「もっと上手く乗りこなせるようにならないとね」

「御空先輩、白滝先輩!」
 ハンガーで、和葉は試運転を終えた二人を労いに行った。
「身体、何ともない?」
「うん、大丈夫だよ。だけど、乗り慣れてないせいかちょっと疲れたかな」
 本人達は平気そうだ。
「いろいろ噂を聞いてたから心配だったんだよ。だけど、もう問題はなさそうだね」
 一度テストパイロットでミーティングをするらしく、一旦別れる。
「……どうしたの、ルアーク」
「いんや、何でもない」
 遠くなっていく二人のテストパイロットを見つめ、小さな声で呟いた。
「気のせいならいいんだけど……」
 
「大丈夫か?」
 レオナルドもまた、降りてきた茉莉とダミアンに歩み寄る。
「平気よ」
 疲労感はあるようだが、気にするほどでもないようだ。
「まだ完全に乗りこなせてないけど、これならアイツを――」
 自信を取り戻したかのように口元を緩めていた。その笑みは、どこか攻撃的なものに見える。
(…………?)
 新たな力を手にしたパートナーに、レオナルドは言い知れぬ不安を感じずにはいられなかった。

* * *


「ふう、まさかボクが駆り出されるとは思いませんでしたよ」
 転入者、転入希望者の前でアルテッツァが苦笑した。
「以上で、学院案内は一通り終わりました。ここからはお昼休みまで、自由行動とします。もっと見たい場所があれば、そちらへどうぞ。公開されている場所でしたら問題ありませんので」
 そんな中、ヴェロニカはイコンデッキに残り、パイロット科の授業を見学し続けようとしてた。
 その様子に気付いたのは、綺雲 菜織(あやくも・なおり)だ。
 公開試運転が終わって訓練に戻る前に、彼女は五月田教官とパイロット科長に提案を持ちかけた。
「どうした、訓練に戻るぞ綺雲」
「五月田教官、パイロット科長――サトー教官と模擬戦をさせて頂きたい」
 そこからが本題だ。
「万一、勝利出来れば……要救助者を乗せた移動訓練をさせて頂きたい」
 転入生の中にはまだイコンに乗ったことがない者もいる。
「いいだろう。こちらのチームは、私、五月田、野川でいく。ただし、ハンデというわけではないが、こちらは覚醒を使わない。ダールトンは覚醒した学院のイコン数機をスペックが劣る機体で相手していたという話もあるからな。こちらの機体に有効打を与えられたら、そちらの勝ちだ」
 科長も科長で、対抗心を抱いているらしい。
「というわけで、準備を始めてくれ。編成は三対三、コームラント一機、イーグリット二機で合わせよう」
 菜織達と組むことになったのは、大羽 薫(おおば・かおる)リディア・カンター(りでぃあ・かんたー)、そして雨月 晴人(うづき・はると)アンジェラ・クラウディ(あんじぇら・くらうでぃ)だ。
「教官、お願いしますっ!」
 薫が気合を入れた。
 訓練再開である。