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Entracte ~それぞれの日常~

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Entracte ~それぞれの日常~

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・胎動


「そろそろ来ると思っていたヨ」
 メニエス・レイン(めにえす・れいん)ミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)を連れ、ヴィクター・ウェストの研究施設を訪れた。
「例のものは?」
「こっちダ」
 ヴィクターに続いていく。
「へえ、これが……」
 カプセルの培養液の中には、赤い瞳の幼い少女が浮いていた。
 全能の書、その紙片を本体とし『復元』した人型だ。本来の『書』としての存在に比べれば著しく弱体化しているが、それでも並みの魔道書よりは強力だろう。
「お前の主人が迎えにきたゾ」
 液体が抜け、ガラスが下りていく。そして少女が赤い双眸でメニエスの見る。
「あたしのこと、覚えているかしら?」
 無表情のまま白い少女が告げる。
「データの初期化を完了。それに伴い、再起動前の記憶は消去致しました」
 完全にゼロの状態から、というわけである。
 それでも、元が元であるため、次第に強力な力を発現していくだろう。
「これが本体ダ」
 ヴィクターから手渡されたのは、薄いハードカバーのファイルに綴じられた紙片だった。それが完全に密閉されている。
「こんな形でこれを手に入れることになるとはね。ここまであなたを大事に保存して、蘇らせてあげたんだから、あたしのために尽くしなさい」
「了解致しました。マスター」
 こうして、全能の書はメニエスのパートナーとなった。彼女の本体を受け取った時点で、彼女との契約は成立した。
「そういえば、あなたは以前に円環を作り魔力を補い続けるシステムのことを言っていたわね。それ、心当たりがあるわ」
「ほウ……」
 ヴィクターが興味を示す。
「『魔導力連動システム』。それがあたしの知ってるものよ。まず言っておくけれど、それを本格的に行うのは難しいわ。だけど、あたしに各魔法の術式を刻み、そこを魔力の中心として出力を全能の書全体、魔力の吸収・還元を全能の書の実体にとすれば、移動も出来、汎用的に使える簡易的魔導力システムとなり得ると思うわ」
 無限の魔力、といかないまでも上手く使えば魔力切れに悩まされることはなくなるだろう。
「面白そうダ。だガ、そのためには全能の書の魔力がキミと同程度でなくてはならなイ。まだ目覚めたばかりのそれでは不十分ダ」
 だが、将来的には十分可能だとウェストは説明する。
「そう……なるべく早くしたいのだけれど」
「ならバ、それを鍛えればいイ。元が強大な魔導書である以上、断片であってもかなりの力があるはずダ。データが初期化したというのなラ、またインストールしてやればいイ。それに、簡易版ならばキミへのリスクも少なイ」
 全能の書を連れて歩いてデータを収集させればいい、ということらしい。
「それよりも、キミなら知っているだろうガ、エドワードの死は想像以上に痛手だっタ。総帥が戻ったとはいエ、一部の有力者がシャンバラ側に反旗を翻し始めタ」
「ああ、そのこと? 枢機卿が対策を始めるつもりみたいよ」
 シャンバラを内から崩す、エドワードのやり方から多少の軌道修正を図ることになった。
「ふフ、助かるヨ。こっちも、大量の『在庫』を抱えて困っているところダ。そうそウ、日本という国でハ、今『冬物一斉処分セール』なるものをやっているそうだナ。ならバ、こちらもバーゲンセールといこうじゃないカ」
 ヴィクターがクククと笑い出す。
 そのとき、彼の電話が鳴った。
「オレだ。へエ、そいつは面白イ」
「どうしたの?」
「オレと近い嗜好を持った者ヲ、ミスター・テンジュがここに呼んだそうダ」
 その人物会うため、また場所を変える。
 そして、メニエスはここで会うとは思っていなかった人物との邂逅を果たす。
「まさかこんなところで会うとはね」
「こちらも驚きですよ。まさかあなたが出てくるとは」
 そこにいたのは、東園寺 雄軒と彼のパートナー達だった。
「クク、ここの責任者のヴィクター・ウェストダ。宜しく頼むヨ、我が同士」