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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】綺麗な花には何がある?

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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】綺麗な花には何がある?

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 女性のみが住む常艶(とこつや)の島、ティブルシー。
 ここにホーティ盗賊団が到着してから程なくして、
 盗賊団一の怪力「バルク」が鈍い光を放つ緑の機晶石を埋め込まれて暴走した。
 ただでさえある怪力が更なる力を持って暴れまわるのを見過ごすことはできず、
 フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)と契約者はバルクを止めようとしていた。

「空からでも人目でわかったけど、近くで見ると更に爽快な暴れっぷりね」

 暴れるバルクを前に愛用する槍を構える。
 が、それを制してレン・オズワルド(れん・おずわるど)が前に出る。
「俺たちの目的は奴じゃない。奪われた機晶石だ。だからこそ全員がここで戦うわけにはいかない」
「……なるほど、確かにそうね」
「ひと段落着いたら酒でも飲もう」
「うん。ここは任せた!」
 バルクとの戦闘の場を任せ、機晶石の反応があるところへ向うフリューネ。
「あら、先に言われちゃった。でもフリューネ全然迷わず行ったね。信頼されてるんだね」
 自分も同じようなこと言おうとしていたルカルカ・ルー(るかるか・るー)がレンに話しかける。
「そうだな。……まずは俺に任せてほしい」
「うん。フリューネに信頼されるほどの腕前、見せてもらうね」
「恩に着る。さて、待たせたな」
「――――ッッ!!」
 もはや人語すら危ういバルクの轟きに臆することなく、真っ向から受けるレン。
「悪いが、お前にはここで留まってもらう」
 サングラスの奥にある瞳が光る。周りの空気が重くなる。それは幻想ではない、物理的にだ。
 重力のベクトルに干渉し、操作することによって敵を重力波にて押しつぶす『グラビティコントロール』。
「う、うぐあっ……?!」
「逃れられまい。おまけに『潜在解放』を俺自身にかけておいた。そう簡単に振りほどけるものか。……メティス」
「了解です。ターゲット、頭部の機晶石ですね」
「やれるか?」
「やります。バルクさんのためにも」
 レンのパートナーであるメティス・ボルト(めてぃす・ぼると)が、丁寧な口調ながらも決意をあらわにする。
 レンがバルクを止めている今こそ好奇。
 だが彼女は銃や刃物での攻撃は避けたいと考えていた。暴走状態とはいえ万一の可能性があるからだ。
「この隙を存分にチャージ時間に……」
 『チャージブレイク』を使い、その威力をのせた【ロケットパンチ】で一気にカタをつけようとする。
 それを見たティブルシーの住人達がレンとメティスに襲い掛かる。
 だが、その攻撃はレンとメティスには届かない。
 彼には心強い空賊という仲間がいた。
「早々に終わらせる。機晶石の一件もあることだ……」
「が、ああ、ああああっ!!」
 バルクの体が、動き始めた。
 それまでピクリともしなかったバルクの体が、ゆっくりと、だが確実に動いていた。
「そんな……! これでは万一の可能性が……!」
「……こいつ、強くなってるのか? ……! メティス!」
 レンがメティスを抱えて飛び退く。ティブルシーの住人たちの魔法攻撃が飛来したからだ。
 態勢を立て直すもバルクは重力波から解き放たれていた。
「してやられましたか。ですが諦めません」
「ああ。何度でもやってやろう」

「その通り。バルクが動かなくなるまで何度でも、このバットで!」
 可憐な魔法少女コスチュームで空を舞い、その手には魔法のステッキが握られている。
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)ちゃん、参上! お仕置き開始!」
 魔法のステッキ(ミスリルバット)を華麗に振り回し、ティブルシー美女の手に握られた武器を次々と破壊。
 その姿を見ていたベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が叫ぶ。
「美羽さん! スカート、スカート!」
「だーいじょうぶだよー! いつも平気なところ見てるでしょー?」
「それでもやっぱり、気になるんですー!」
 ベアトリーチェが気にしていること。それは美羽のスカートの丈。
 彼女が魔法少女マジカル美羽に変身している時、
 本来ならありえないだろうというレベルの超超ミニのスカートを履いている。
 何をしたってそれ中見えちゃいますよ、というくらいなのだが、
 魔法を使って見えないようにしているため本人はなんら気にしていない。
 だが他人から見ればやはり気になるのだ。
「さあ、次はバルク! 君に、きめたーっ!」
 思い切り飛んで、バルクの頭部に埋め込まれた機晶石に狙いを定めた美羽。
 咄嗟にバルクが両腕で頭部をガードする。が、
「でりゃりゃりゃりゃりゃー!」
 お構いなしにガードの上からミスリルバットを滅多打ち。壮絶な光景に、息を呑むベアトリーチェ。
「あ、ああ。そんなことしたらさすがにバルクさんの腕が……」
「く、クレイジーだわ。あの子、可愛い顔してクレイジーだわ……」
「美女の私達でもさすがに引くわ……」
 と、敵と味方にも関わらず阿吽の呼吸で美羽の攻撃にドン引きするベアトリーチェとティブルシー美女たち。
 そのドン引きの原因である美羽の心中は穏やかではなかった。
「……これだけやって、どうして身動き一つしないの?」
「……ガアアッ!」
「うそっ!?」
 それまで微動だにしなかったバルクが両腕を振り払う。
 痛烈な両腕の一撃をミスリルバッドで受けた美羽だったが、反動に耐え切れず後ろに飛ばされる。
「バットが……!」
 空中で何回転かした後、華麗に着地。ふと、愛用していたバットを見る。
 僅かだが、凹んでいた。あれだけのことをやっても欠片も凹まなかったバットが、
 バルクの一撃で僅かながら凹んだ。
「……もうただの人間の頑丈さや怪力じゃないね」
 事の重大さを改めて認識する美羽。それは美羽だけではないない。
 その場にいた全員が認識を改める。
 今のバルクはちょっとやそっとじゃ止まらないのだと。