リアクション
(5)夜
その日の夜、クラリスの家では両親たちが伽羅とクラリスたちから今日のことについての報告を聞いていた。
「結論から言いますと、去年までに比べて大幅に来客数が増えました。そしてこちらがお店に設置したアンケートの結果です。料理や内装など、どれも高い評価を得ています」
「ほお、すごいじゃないか」
クラリスの父親が報告を読みながら言った。クラリスはとてもうれしそうだった。
「ただし、売り上げも大幅アップしましたが、料理の材料費や人件費で利益はそこまで上がっていません。それだけが個人的に不満ですわ」
伽羅の語気が荒くなるが、うんちょうやエリオットたちがなんとか抑える。
「いえいえ、十分です。これで改装しなくても海の家が続けていけるということが良くわかりましたし、これからは私たちもお店をできるだけ手伝いますから、人件費も少しは抑えられます」
クラリスは母の言葉に、少し驚いた。
「お母さん、どういうこと?」
「おどろくことじゃないでしょう。あなたたちがみんなで協力して新しい海の家を作ったのよ。だったら海の家はこれからもあなたが責任を持って続けていくべきだわ」
クラリスは目を丸くした。
「……つまり、私のお店になるの?」
母が頷いた。クラリスは父の方をみると、父は申し訳なさそうに笑った。
「すまない、最初にあの商人に店を売ろうと俺が思わなければ……実は結構前から、そろそろ店をクラリスに任せようという話はあったんだよ」
父は先ほどベアトリーチェたちから商人と例の手下たちとの関係も聞いていた。いままではあくまで噂レベルの関係だったが、ここではっきりとした証拠が現れた。 であればそのような卑怯な手を使う商人に店を売るわけには行かない、と父は店の売却を撤回したのであった。
「私たちのお店……か」
クラリスは不思議そうにもう一度つぶやいた。
これからは自分の大好きな思い出の地を自分で守っていくのだ。大変だがそれはとてもうれしいことだった。
次の日。
何人かの学生たちはアルバイトで海の家の仕事を続けていたが、他の用事がある者などは帰る準備を進めていた。
「皆さん、昨日は本当にありがとうございました」
涼介たちが帰る際、クラリスがやってきて挨拶した。
「そんな、大したことはしてないさ。困ってた人がいたら助けるのは当然だろ?」
「そうそう」
クレアも同意する。
クラリスは、本当にいい人たちに恵まれたのだと感じだ。そうでなければ、この店を続けることはできなかったろう。
「ありがとうございます。来年も是非来てください、今度はお客さまとして!」
「うーん、俺はどちらかというとバイトがいいかな」
樹が言うと、クラリスはもちろん喜んで、と答えた。
「またきてくださいねー」
クラリスたちは長いこと皆に向かって手を振っていた。
また彼らにいつか会えるように、店をしっかり続けていこう。彼女はそう決心したのだった。
シナリオ参加ありがとうございました。皆さんのキャラクターは海を満喫できましたでしょうか?
海の家は無事に続くことになりましたので、もしかしたら来年も続編があるかもしれません。
もしかしたら、ですよ。
それではまた別のシナリオで、よろしくお願いいたします。