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【2019修学旅行】安倍晴明への挑戦!

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【2019修学旅行】安倍晴明への挑戦!

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これにて閉幕



 晴明神社。
 空の月は雲によって隠れ、不思議な静寂に包まれていた。
 日の暮れた境内には提灯がずらりと並び、淡い光で辺りを照らしている。
 体験学習の修了を祝し、式神たちによるささやかな宵の祭りが開かれているのだった。


 一の鳥居の下では、天乙貴人に破れた二人が敗北の余韻に浸っている。
 ぼろぼろに傷つき満身創痍の状態で、空にを見ていた。
「くそお! 負けたーっ!」
「十二神将のリーダーって言うのは、伊達じゃないね、ベア……」
 十二神将を統べる者の実力は計り知れなかった。
 結局、彼らが入れられたのは、最初の一撃だけだった。
 気が付けば二人は敗北し、貴人は事後処理のためどこかへ消えていった。
「……またいつか絶対に挑戦するぞ。そして、今度こそ!」


 火のコースを攻略した生徒たちは、各々の活躍を語り合っている所だ。
 朱雀と騰蛇は、浮かない顔で境内の隅にいる。
 その性格の悪さが知ってなお、わざわざお近づきになりたいと思う生徒はいなかった。
 ただ一人、御凪真人だけは説教をするため出向いている。
 二神は甘んじてその屈辱に耐えていた。
「なあ……、朱雀。旦那ぁ、怒ってるかなぁ……」
「我にそんな事を聞くな、考えたくもない。今はこの人間の小言に耐えるのが精一杯だ」
 この説教の後に待ち受けている、晴明の説教の事を思うと、酷く憂鬱でたまらなかった。


 木のコースを攻略した生徒たちは、屋台料理を食べている。
 迷惑をかけた詫びにと、六合が腕によりをかけて作ったものだ。
 救出された青龍は驚くほど素直な式神で、また騙されないかと皆心配していた。
「もうなんでも信じてついていっちゃ駄目ですよ」
 雨宮夏希がそう言うと、青龍はぼんやりした顔で首を振った。
「大丈夫ですよぉ。六合さんが守ってくれるって言いましたからぁ」
 少々頼りないボディガードだが、彼は本当に大切な事について学び始めたばかりだ。
 そう遠くない将来、安心して六合に任せられる日が来るだろう。


 土のコースを攻略した生徒たちは、境内に設営されたブースの前にいる。
 勾陳のオフィシャルグッズの即売会が開かれているのだ。
 多くの生徒は勾陳の顔に見飽きて辟易していたが、カーチェ・シルヴァンティエだけは違う。
「勾陳さん、握手お願いします!」
 オフィシャルTシャツにサインをしてもらい、とても上機嫌である。
 駒姫ちあきは、もう絶対にカーチェとプロレス観戦だけはしないと深く誓ったが。
「晴明神社で、俺と握手!」
 勾陳はカーチェの手を取り、力強い握手を交わした。


 金のコースを攻略した生徒たちは、白虎と戯れている真っ最中である。
「はあ……。夢心地……」
「なあなあ、朱華。そ、そろそろ俺と代わろうか」
「まだ一分も経ってないでしょ?」
 十倉朱華と東條カガチは、十分交代でもっふもふの毛を堪能している所だ。
 一方、肉球のほうは久世沙幸の独壇場である。
 独占禁止法が適用されるなら、間違いなくブタ箱送りのぷにりっぷりだ。
「十二神将の肉球はやっぱり格別ぷにぷにだぁ……!」
 そんな光景を、赤月速人はスケッチ、葛葉翔はカメラで記念におさめてる。
「ねぇ、速人。そんなに絵を描いてどうするつもりなの?」
 が持参したマタタビ酒を皿に入れながら、カミュ・フローライトは尋ねた。
「柳川先生にプレゼントだよ。ほら、司書って修学旅行行けないだろ?」
 蒼空学園図書館司書・柳川さつき先生もきっと喜んでくれるはずだ。
 一方、佐々良縁とそのパートナー達は大陰と友達になったようだ。
 やはり歳が近いと……、失礼、精神年齢が近いとすぐ仲良くなるものなのかもしれない。


 水のコースを攻略した生徒たちは、まだ戻ってこない。
 どうやら鴨川での宴会が相当盛り上がってるらしく、二次会で神社に顔を出すと連絡があった。


「如何でしたか、橘さん?」
 去ろうとしていた橘柚子と初代安倍晴明は、59代晴明に呼び止められた。
 二人は顔を見合わせ、初代は答えた。
「問題が起こったら喝を入れようかと思ったが、課題自体が問題だらけでは、呆れて言葉も失う。青龍をハンドバッグにする者はいるし、天后はいつからあれほど性格が歪んだのか。まったく、千年の時は長過ぎるな」
「皆、現代に生きようと必死なのですよ。その生きようを見守るのも主のつとめではありませんか?」
 59代晴明が微笑むと、初代は静かに笑って答えた。
「今はおまえが当主なのだ。どうせ私が言っても聞かないのだろう?」
 そう言って振り向くと、柚子と初代は歩き始めた。
「ここに私のすべき事は残されていない。私のなすべき事は空の大陸にあるのだ」


 気が付けば、群雲から光がこぼれて、空には月が見えていた。





 おわり。

担当マスターより

▼担当マスター

梅村象山

▼マスターコメント

マスターの梅村です。
本シナリオに参加して下さった皆さま、ありがとうございました。
京都への修学旅行はいかがでしたでしょうか。楽しんでもらえたなら、私も嬉しいです。

今回は修学旅行シナリオと言う事で、
名所は数あれど行ける場所は時間的に一カ所だけ、と言う修学旅行感覚を味わってもらうのが目的でした。
そのため、コースが五つと多くなってしまいましたが、各コース均等に別れてくれたので、とても助かりました。
一人しか行かない場所が出て来たりしたら、悲しい事になりやしないかと思いましたが……。
皆さま、無事で何よりです。

今回の称号は、各コース三名ずつ付与させて頂きました。
よろしければ、是非是非ご活用ください。