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リアクション
6.男の娘登場!
コンテスト当日、部室の前に小さな女の子がいた。
彼女は「ちぎのたくらみ」で幼くなり、女装をした譲葉大和(ゆずりは・やまと)だった。
部室へ向かっていたヤチェルと篤子は、すぐに大和を見つけて声をかける。
「あら、何か用かしら?」
目線を合わせるように屈んだヤチェルを見て、大和は言う。
「あ、あのね、ボクもコンテストに出たいんだけど……」
ヤチェルは篤子と目を合わせた。
「衣裳、確かまだ余ってたわよね?」
「え、まさか出させる気ですか?」
「うん、だって可愛いじゃない。ショートカットも似合いそうだし」
大和はそれを聞いて内心、ほくそ笑む。
「一人くらいならどうにかなるでしょう。というわけで、君の名前は?」
「ヤマコ」
「ヤマコちゃんね。じゃあ、あとお願い」
と、ヤチェルは大和の頭を軽く撫でると、来た道を戻り始めた。
残された篤子は溜め息をこらえ、大和の手を取り、部室へ入る。
控室の中はショートカットの少女で溢れていた。
当初は更衣室を貸し切ることになっていたのだが、数が足りなく、やむなく教室を貸し切っていた。
アリアは用意された服を着て、初めてそれが露出の高いものだと知る。
背中の半分ほどがまる見え状態で、それに合わせるように胸元も開いている。下は黒のミニスカートに白黒のボーダー柄のタイツなので良かったが、セクシーであることに変わりはない。
一体誰が用意したのか、アリアは不思議でたまらなかった。
一方、廊下の真ん中で騒々しくする者たちがいた。
レイディス・アルフェインを狙う宇都宮祥子(うつのみや・さちこ)と、同人誌静かな秘め事(どうじんし・しずかなひめごと)(略して静香)、朝野未沙(あさの・みさ)とザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)、浅葱翡翠(あさぎ・ひすい)である。
「やめろ、離せ!」
と、嫌がるレイディスを捕まえているのは静香とザカコ。
「落ち着きなさい、レイ。髪が上手く整えられないでしょ」
と、祥子は櫛を手にレイディスの頭を整えている。
「やっぱりここはメイド服かな?」
「いえいえ、清楚系お嬢様で行きましょう」
本人の気持ちを無視して話を進める未沙と翡翠。
「あえての制服っていうのもありですわ」
と、静香が口をはさむ。
「あ、それいいかも!」
「よし、とりあえずこんなところね」
最後に祥子がレイディスの前髪を下ろしてやると、少年だった彼はすっかりショートカットの女の子になっていた。
「それでは、さっそく行きましょうか」
と、翡翠がレイディスの腕を掴む。
「え、どこ行くの?」
「男子トイレです」
「私たちも手伝うわ」
「駄目です。さすがに、レイおねーさまがかわいそうです」
「まあ、それは確かに」
と、ザカコ。
「えー、衣装は?」
男子トイレへレイディスを連行しながら、翡翠は言った。
「私の持ってきた衣装で良いでしょう」
――全ては思惑通り。
不満げな女子たちを残し、翡翠は意気揚々と歩いていく。
会場で進行台本を確認したヤチェルは、着々と出来上がっていく会場に満足していた。
「ミスロングヘアーコンテストも開かなきゃならないな」
ふとそんな声がして振り返ると、牙竜が立っていた。
「とことん対抗してやるぜ!」
「コンテストっていっても、形式だけよ?」
と、ヤチェルは返す。
「え? それってコンテストの意味なくないか?」
「本当に重要なのは、彼女たちの写真を撮ること。一応、審査もするけどね」
備え付けられた時計は四時半を差していた。
はっとしたヤチェルが駆け出そうとして牙竜にぶつかる。
「ぐぁっ!」
ヤチェルの頭部が顎にクリーンヒットした。その衝撃でよろける牙竜。――何てちょうど良い身長差!
「あ、ごめん! 悪気はないの、また後でね!」
と、ヤチェルは走りだしていった。
会場の外へ出ると、何やらぎゃーぎゃーとうるさい声が聞こえてきた。祥子たちである。
「あ、会長さんですか?」
と、ヤチェルへ声をかけてくるザカコ。
前方を塞がれてしまい、仕方なくヤチェルは立ち止まった。
「見てください、この子」
レイディスは浅葱色のワンピースにピンクのカーディガン、頭には大きなリボンをつけていた。
「似合うでしょう? こう見えても、男の子なんですよ!」
ヤチェルはレイディスをまじまじと眺める。表情は不愛想だが、確かに可愛らしい。
「よく似合ってますでしょう?」
「まさしく、男の娘ですわ」
「これほど可愛い子は他にいないよ」
「何といっても、男の娘ですから」
レイディスがそっぽを向いた。逃げられないように周りを囲まれているせいで、身動きが取れないのだ。
「会長さん、本当にショートカットが好きならば、似合いさえすれば男女限る必要はないはずです」
「……」
「それなのにミスショートカットコンテストだなんて。つまり、あなたは上辺しか見ていないのです!」
びしぃっと、ザカコがヤチェルへ指を突き出す。
ヤチェルは、だって男に興味はないと言いそうになった。――言わなかった、何故なら彼らが本気すぎて怖かったから!
「あ、こんなところにいたー」
ふとそんな声がして、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)が現れる。
「あなた、会長さんよね?」
「え、はい」
「あのね、コンテストを開くなら主催者であるあなたも、お洒落をする必要があると思うの」
「え?」
ルカルカは持っていた服を広げて見せると、にっこり笑った。
「着てみない?」
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