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機晶石アクセサリー盗難事件発生!

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機晶石アクセサリー盗難事件発生!

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第一章

「許せぬ! 今すぐ成敗してくれる!」
エメネア・ゴアドー(えめねあ・ごあどー)からの相談を受けるやいなや、そう声高に叫んだのはフラメル・セルフォニア(ふらめる・せるふぉにあ)だった。
「落ち着け、フラン」
鼻息荒く飛び出していこうとするフラメルを抑えながら、マクシベリス・ゴードレー(まくしべりす・ごーどれー)は紫煙を吐き出した。
「気持ちはわかるが、闇雲に飛び出していったところで無駄足を踏むだけだ。どうやら相手は複数のようだしな」
「だが……ッ」
「敵を叩く前に、もう少し情報が欲しい。戦力や規模がわかれば、それだけでも対策を立てられる」
「うーん、そうだね」
マクシベリスに同意を返したのは久世 沙幸(くぜ・さゆき)
「そうだ! じゃあ、あたしが囮になるのはどうかな?」
「囮?」
首を傾げるエメネアに、沙幸はうんうんと大きく頷く。
「エメネアちゃんのアクセサリーを身につけて街を歩いて、泥棒をおびき寄せるの!」
「ふぅん、悪くない考えじゃないか。学園の生徒なら戦えるし、実際交戦してみれば相手のこともわかるだろうしな」
「ふむ、一理あるな」
「となれば囮は多い方がいいな。盗難が起きている場所に関連性も見えないし。エメネア、いくつかアクセサリーを用意してもらうことはできるか?」
「は、はい!」
「それじゃあ、俺たちも囮になろう」
頷いたエメネアに向かって名乗りを上げたのは前原 拓海(まえばら・たくみ)と、パートナーのフィオナ・ストークス(ふぃおな・すとーくす)だった。
「私がアクセサリーをつけ囮になります」
「ええっ、でも危ないですよぅ」
「大丈夫だ。俺がついてる」
「でも……」
みなさんに何かあったら……! とエメネアはおろおろと皆を見回す。
けれど、皆は大丈夫、というように頷いて見せた。
「問題ない。ちゃんと戦える人間ばかりだからな」
日比谷 皐月(ひびや・さつき)が短くそう告げて、自らも囮として参加を申し出た。
「狙われている人間が無差別なら、年齢層もばらけさせたほうがいいな」
ふむ、と瞬時考え込んだ皐月はちぎのたくらみを発動。
「これでいいか」
と、子どもの姿になって見せる。悪くない、とマクシベリスが頷いた。
「エメネアさん! 此処にいたのですね」
そこへまた新たな声が割り込んできた。
エメネアが訪れている、と聞きつけたのだろう、ルイ・フリード(るい・ふりーど)が笑顔を浮かべて歩み寄ってきた。
「先日注文したアクセサリーが出来たと連絡をいただいたので探していたのです!」
「あっ、フリードさん」
ニコニコと笑みを浮かべながらルイは、何か紙切れのようなものを取り出して見せた。
「注文控?」
覗き込んだ皐月が、そこに書かれた文字を読み上げて首を傾げた。
それに頷いたルイは、少しはにかむような笑みを浮かべて頷いた。
「いつも苦労をかけている娘たちに贈ろうと思いましてね」
「へぇ……」
「それで、エメネアさん。さっそく拝見してもいいでしょうか」
「それが、そのう……」
「うん? どうしたんです」
訝るルイに、マクシベリスたちが事情を説明する。それを聞いていたルイは、なるほどと頷いた。
「だから、アクセサリーの受け取りはこの件が片付くまで待ってくれないか。できるだけ囮に奴らをひっかけたい」
「いいや、それなら私も力になりましょう。何、盗賊などに不覚をとりはしません」
「フリードさん……」
「大丈夫ですよ、エメネアさん。娘もアクセサリーも死守します」
「は、はい……」
「事件と聞いて」
「ひっ!?」
ルイの笑顔にエメネアが頷いた瞬間、ぬっとカメラが割り込んでくる。
一同が驚いて視線を向けると、そこには六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)が立っていた。
「最近エメネアさんのアクセサリーが盗難に遭っていると聞きました。私も微力ながらお手伝いをしたいと思いまして」
「お嬢が星槍の巫女の力になりたいというのでな、あたしは付き添いだ」
そう言ってパートナーである麗華・リンクス(れいか・りんくす)が付き添う後ろにいた、橘 恭司(たちばな・きょうじ)も頷いた。
「囮にかかるまでに聞き込みをするのも手だろう。アクセサリーに何かあるかもしれないしな」
「被害に遭っていない方々にアクセサリーを見せていただいて、共通点を探してみます。何かあるかもしれませんし」
「それならボクも手伝うよっ」
そう言って手を上げたのはカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)
「自分の持っているアクセサリーと比べてみるから、ボクにもひとつ作ってもらえるかな」
「うむ、その後図書館で調べてみようと思う」
カレンの言葉の後を継いで、ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が言う。
「だから、少しは休んでおくといい」
「……ジュレールさん……」
小さい声で呟かれた言葉に、エメネアは瞬時驚いたように瞠目し、すぐに破顔する。
「はい、みなさんのお言葉に甘えるですよぅ」
「む、任せておけ」
「それでは私は念のため、裏ルートで捌かれていないか調べておこう」
クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)の申し出に恭司が頷いて、エメネアを振り返る。
「調べがついたら連絡する。だからエメネアはファクトリーに戻っているといい」
「えっ」
「ああ、そうだな。これ以上被害を広げないためにもその方がいい。それに、一度囮用のアクセサリーを用意しに戻る必要があるだろう」
「な、なるほどです」
「それじゃあ、作戦を固めよう。そうしたら一刻も早く強盗団を殲滅させないとな」
マクシベリスの言葉に皆が頷き、改めて話をまとめるべくテーブルを囲む。
そうしてみんながそれぞれ散ることになった。

「さて、それじゃあ行こうか」
きらりと光る機晶石のペンダントを身に付けたリア・リム(りあ・りむ)は、そう言って家族を振り返った。
「うん! 行こう! どこに行こうかなぁ〜、ねっ、マリー」
「は、はい! 何だかわくわくしますぅ」
「二人とも、これは遊びではないのだぞ」
嬉々として辺りを見回すシュリュズベリィ著・セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)マリオン・フリード(まりおん・ふりーど)に、リアは溜息まじりに注意を促す。
「わかってるって。でもそんなに警戒してたら来る盗賊も来なくなっちゃうよ。せっかくのお出かけなんだから楽しまなくちゃ」
「ははは、そうですね。囮とはいえせっかくみんなで出かけるのですから、楽しみましょう」
ぽんぽんとリアたちの頭を撫でてやりながら、ルイは快活に笑った。
「だよねー! ねぇ、ルイ。セラのチョーカー似合ってる?」
「もちろんです。マリーも、もちろんリアも似合ってますよ」
「えへへ、嬉しいですぅ」
「まったく……しょうがないのだから」
困ったように息を吐きながらも、リアは口角を緩ませた。
けれど、だからこそ自分がしっかりしなければと思いなおし、三人を促した。
「此処でじっとしていても何も始まらないぞ。早く出発しよう」
「はーいっ」
「は、はいっ」
マリオンたちの元気な返事と共に、ルイたちも囮という名の観光に出かけたのだった。