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賞金首の空賊を退治しろ!

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賞金首の空賊を退治しろ!

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開戦



「あまり乗り気はしネェが……しょうがない、テストに付き合うか」
 ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)は気だるげにそう言うと、「よし、アヴァロン。実戦テストだぜ」とつぶやいた。
 そして突然戦場のどまんなかに出現する。ワープをしたようだった。
「ふんぐるい むぐるうなふ いあ つぁーる!」
 そしてパートナーのシメオン・カタストロフ(しめおん・かたすとろふ)が『ツァールの長き触腕』を召喚する。
 それは小型飛空艇の群れに伸びて行って、そのまま回転し周囲をなぎ払う。10から20の小型飛空艇似たメージを与える。
 撃墜することまではいかなかったが、それなりに傷を与えたようではあった。
「ふむ……なかなか順調」
 シメオンはそうつぶやくと、ふと思い出した様にこういった。
「ああ、嵐の儀式がありましたねえ。行きますよ、アヴァロン」
 シメオンはそう言って大自然に祈りを捧げ、【アヴァロン】のスピアに魔力を集中させる。
「吹けよ嵐! その暴風を持って我が怨敵を打ち砕け! フィル ソロ グラ ズム!」
 そしてその魔力を天上に放出すると急に戦場には暗雲が立ち込め始め、滝の如き雨とたたきつけるような突風が襲ってきた。
「はは……落ちるがいい」
 そう言い残して【アヴァロン】はワープアウトして何処へかと消えた。
 そうして嵐に翻弄されて小型飛空艇が次々と落ちて行く。中には自分から着陸するものも居る。
「何よこの嵐は!」
 蓮花・ウォーティア(れんか・うぉーてぃあ)は低空飛行して落下者用のネットを張る作業をしていたのだが、この嵐のためになかなかうまく行かない。
 敵、味方含め、多くの航空歩兵が墜落してくる。その大半は命を失ってしまった。
 運良く蓮花のネットに拾われたものだけが生き延びることができた。
 蓮花は落ちてきて息のあるものにはとりあえず治療を施し、それが空賊団のメンバーだとロープで縛り上げる。
「まったく、何よこの嵐は!」
 蓮花は叫ぶと救命作業に走りまわった。

「この程度の嵐にひるむんじゃないよ。ちょうどあそこにウロウロしてる下手糞そうなイコンがいるじゃないかい。ぶんどりな!」
 それはノア・サフィルス(のあ・さふぃるす)の擬態の演技だった。囮役として敵の護衛が飛空艇から離れるのを狙っていたのだ。
 機晶ロケットランチャーが【アクア・スノー】に何発も飛んでくる。だが、
「私の積んだ《歴戦の立ち回り》を見なさい!」
 《超感覚》や《行動予測》も駆使した火村 加夜(ひむら・かや)の懸命の回避によってロケットランチャーの弾丸が避けられ、あるいは《両手利き》からのダブルビームサーベルで切り裂かれていく。
 そしてスモークディスチャージャーで煙幕を出すと、敵の視界から隠れる。
「なんでえ!」
「このけむりはどうしたんだ!」
 空賊団の兵士たちが騒いでいると、背後に回った加夜が出力を絞ったビームサーベルで小型飛空艇の動力部分を攻撃して破壊していく。
「うまく助かるといいんだけどな……蓮花、たのんだよ」
「あいよ、任せな」
 やがて嵐の影響も薄くなってきて、蓮花は縦横無尽に駆け回る。
 そして加夜は護衛の飛空艇にマジックカノンを放つ。
「んー、手応えはあったんだけどなあ。あたっただけかあ……」
「加夜、全弾ぶち込もう」
「わかった」
 ノアの言葉に応じ、加夜はマジックカノンを連射する。もちろんその間にも味方のフォローがあるわけだが今は割愛する。そうして10連射のマジックカノンは敵飛空艇を半壊させることに成功。
 敵飛空艇の船長は慌てて着陸を命令した。
「【月の宮殿】へ。こちら【アクア・スノー】。補給のための着艦を要請します」
「【月の宮殿】のアポロン。了解」
 加夜からの通信を受けた【月の宮殿】は着陸してハッチを開けると、イコンの受け入れ態勢に入る。
 アポロン・サン(あぽろん・さん)が飛空艇の操縦をしている間、フレイ・アスク(ふれい・あすく)はブリッジで歌を歌っていた。


 燃え上がれ 暗黒の空を焼き払え
 光と影のロンド 巡りゆく歴史の中に
 今こそ 力示せ 勇者よ

 雄々しく立ち上がり 敵を切り捨てろ
 必殺の一撃が 打ち砕くだろう
 銃持て戦士よ いま 我らの大地のために
 

「イーグリットアサルト……本来の持ち主に返してもらおか?」
 大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)はゆっくりと敵のイーグリット・アサルトに近づくと、ノアのようにわざと操縦に不慣れな様子を見せる。
 接敵し幾度か剣を打ち合わせると、ハンドガンで牽制しながら引いていく。
「ふむ。これで敵も油断したであろうな」
 讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)がそう言うと、確かに2機のイーグリット・アサルトが【フォイエルスパー】に近づいてくる。
「今や!」
「《禁猟区》! 【フォイエルスパー】、援護します」
 クナイ・アヤシ(くない・あやし)がそう言って機体を寄せる。
「こちら【アシュラム】連携攻撃でいくぞ! 《高速機動》、《心眼》!」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)が叫ぶ。
 【アシュラム】がレイピアで敵の駆動部を的確につくと、【フォイエルスパー】がダブルビームサーベルで切り返す。
「一の太刀、ニの閃、三の払い!」
 もともと地球人の載っていないイコンは30%ほどの力しか出ない。そのため敵の反応速度も遅く、熟練のパイロットたちにとってはまともな相手にはならない。
「殺すつもりはない。脱出しろ」
 北都がそう言うと、半壊したイーグリット・アサルトから、座席が射出され、パラシュートが開く。
「ジーハ空賊団バンザイ!」
 空賊のパイロットは最後にそう通信を残した。
「さて、もう一機いこか?」
 泰輔がそう言って残ったイーグリット・アサルトに向き直る。
「さてさて、賞金はいくらになるかねぇ。今晩銭勘定するのが楽しみや!」
 そしてスピアのチャージが入る。
「さて、追い打ちと行こか」
 そしてダブルビームサーベルがスピアが貫いた点を線にして切り裂く。
 半壊したイーグリット・アサルトからパイロットが脱出していく。
 たしかに、たしかに商船程度ならこのイーグリット・アサルトでもどうにかなっただろう。だが、相手は契約者である。その上数も少なく相手としては力不足であった。
「さて、北都はんだったかいな?」
「そうだけど〜」
「僕と君が組むとちょうどいい具合にイコンが半壊するねん。このまましばらくコンビ組もや」
「いいよ〜」
 そして即席で結成されたこのコンビは、敵パイロットを殺すことなく敵の戦力を奪っていったのであった。
「悪党に情けは無用……ゆうても、できれば捕えて裁きにかけたいしな」
「まあ、そうは言っても、戦闘する覚悟は向こうもできているのであろう? ならば命を落とすこともあると思っているであろうよ」
 顕仁がそう言って泰輔をなぐさめる(?)と、【フォイエルスパー】と【アシュラム】は敵の中心に向かってイコンで剣舞を披露する。要するに撹乱だ。そしてそこにできた隙を突いて本命の対イコン部隊が突入する。