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リアクション
血戦
「敵歩兵、敵イコンなおも健在。だけどイコンはシャンバラの種族のみがパイロットだ。地求人と契約したシャンバラ人の二人乗りのイコンが負けるわけがない。各員奮闘励起せよ!」
ソニックブラスターを通じて再びリカインの《激励》が飛ぶ。
補給のために地上に降りている【月の宮殿】は非常に無防備で、回転式レーザー、全方位バルカン、対空ミサイルなどで迎撃して入るが、その隙間を縫って接近しようという空賊団はかなりな数がいるのだった。
アレックス・キャッツアイ(あれっくす・きゃっつあい)とサンドラ・キャッツアイ(さんどら・きゃっつあい)は後ろ詰めの要員だったが、ここまで敵が侵入してくればそんなことも言ってられない。
イーグリット用ビームライフルで敵を撃ち落としながら戦闘の無事終結を祈願する。
「兄貴! 上40度、左22度!」
「分かったっス!」
サンドラのナビゲートに従ってアレックスは敵航空歩兵を迎撃する。
「次は上25度の、左100度!」
「了解!」
侵入してくる敵をひとりずつ確実に撃ち落としていくアレックス。
しかしそれだけでは撃ち漏らしがある。
そこで【月の宮殿】は狙いを味方の撃ち漏らしに変えながらハリネズミのように全方位にバルカンの弾をばらまく。
「つまんない。ここにいてもつまんない。ってことで護衛の船落としてくる」
シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)はそう言うと突出して旗艦を護衛している飛空艇に向けてペガサスで飛んでいった。
「《加速》から《高速機動》の《急所狙い》で、あとは神に任せた!」
そしてペガサススピアで敵護衛飛空艇を攻撃する。
シルフィスティの攻撃はパイロットランク30というせいもあって一撃で敵の飛空艇を大破に追い込む。
轟々と燃え上がるデッキ。慌てて脱出する乗組員たち。
「まあ、命までは取らないから、せいぜい脱出してよ」
シルフィスティはそれらを無視すると次の護衛船に向かった。
「そこのお嬢ちゃんデートはいかがー? あ、君も可愛いね。どうだい、おじさんとデートしない?」
ルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)は妻帯者であるにもかかわらず戦場で敵方の女の子をナンパしまくっていた。
無論そんなものが成立するはずもないし地上しか移動できないクェイルに乘っているのでそもそも空までその声は届かない。
「わ〜ん、結婚したら落ちつくと思ったのにマスターはやっぱり駄目駄目だ〜〜〜このクソ親父〜」
パートナーのソフィア・クロケット(そふぃあ・くろけっと)が嘆くがそんなことはお構いなしにナンパを続ける。
そして山葉 聡(やまは・さとし)もサクラがいないのを良い事に飛行翼で戦場を飛び回りながら女の子のナンパを続ける。
これで敵の銃弾に当たらないあたり奇跡的といえるのかもしれない。
「誰に断わって空賊稼業(しょうばい)しているのかしら? 少々やりすぎね……ジーハ空賊団。覚悟なさい!」
義賊である【シャーウッドの森空賊団】のリネン・エルフト(りねん・えるふと)は同じ空族として非道を働くジーハ空賊団が許せなかった。
「はっ! 空賊に許可なんているもんかい」
「そう、わかってくれないんだね。ユウナ、覚悟! ヘイリー、任せたわよ」
ボブカットの黒髪、小柄だが胸が大きいリネンはタシガン空峡の義賊。通称【天空騎士】と呼ばれていた。そしてその義賊を率いるのがリネンのパートナーヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)である。
「了解 【アイランド・イーリー】、エンジン励起。これより敵旗艦に突っ込むよ!」
そして【アイランド・イーリ】が敵旗艦に接近する。
「《絶対命中》! ガトリングガン発射!」
【アイランド・イーリ】の護衛をしている者の一人小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がガトリングガンを発射する。
「敵砲座、完全に沈黙!」
サブパイロットのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が戦果を美羽に報告する。
まずは鬱陶しい迎撃を避けるため、美羽は砲台の破壊を目論んだのである。
「御嬢、陛下、ちぃと揺れますぜ!気ぃつけておくんなせぇ!」
フランシス・ドレーク(ふらんしす・どれーく)が大型飛空艇【HMS・ウォースパイト】を操縦しながらパートナーのローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)とグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)に警告する。
敵の砲座は潰れたがまだ反撃を警戒し不規則な軌道で航行を続ける。
「ユウナとやら何処にいるか!? わらわはイギリス女王エリザベスI世であるぞ。一騎打ちを申し込む所存!」
【HMS・ウォースパイト】に搭載していた小型飛空艇ヴォルケーノでローザとライザが敵旗艦に突入する。
天城 一輝(あまぎ・いっき)はそれを見届けると、彼も旗艦に乗り込んだ。
そのパートナーのローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)は周囲で暴れて陽動を行う。
旗艦内部から敵の目をそらすためだった。
「ぐっ! まだまだぁ!」
長原 淳二(ながはら・じゅんじ)は不慣れなイコン戦でしかも射撃武器を持たないために、銃弾を受けながら突撃し、敵イコンを鬼刀で切り裂くという『肉を切らせて骨を断つ』という戦法を地で行っていた。
しかし地球人一人乗りという条件のため出力が低くあっという間に半壊して飛空艇に修理に戻ることになったのであった。
「よし、行くぞ!」
グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)はパートナーのエルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)に命じてイコン【シュヴァルツ】を敵旗艦死角にワープさせると、そこから《ダメージ上昇》で、ダブルビームサーベルで切り裂く。
旗艦護衛の敵飛行歩兵集団にはクラッカーをお見舞いする。
しかし敵旗艦の砲台を潰したとはいえ護衛の船からの砲撃がある。それで【シュヴァルツ】も少なからずダメージを受けていた。
紫月 唯斗(しづき・ゆいと)も旗艦を狙う一人だ。
「アダマントの剣よ磁気嵐を発生させよ!」
磁気嵐を発生させて敵のセンサーを狂わせると、《加速》で一気に突入する。
「行くぞエクス! 《絶対命中》、《急所狙い》!」
「わかったよ。《ダメージ上昇》」
エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)の力も借りながら、イコンホースで地上のみの機体と見せかけていた【荒人】が急に飛び上がったので空賊団たちは混乱を見せる。
そしてその隙に旗艦にダメージを与える。
それでも完全破壊とは至らないがそれなりに大きなダメージを叩き出している。
「さてみんな、ここらでもう一曲行くよ。オラトリオ・メサイア!」
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)が叫ぶとイコンや【月の宮殿】に搭載されたソニックブラスターから音楽が流れて来る。
そのBGMを聞きながらルカルカのパートナーダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は【月の宮殿】の位置からヴリトラ砲を叩きこむ。
「この【天空騎士】が直々に相手をして差し上げるわ。覚悟なさい! まずは、《タービュランス》!」
乱気流が発生し飛行することが難しくなる。皆乱気流を避けて地上に降りる。
【アイランド・イーリ】も地上に降りたので、その搭乗員も続々と出てくる。
「あたしはシャーウッドの森空賊団団長ヘイリー・ウェイクよ。我こそはと思うものはかかって来なさい!」
ヘイリーも着陸した飛空艇から飛び出し、ユウナの旗艦へ向かう。
「オルトリンデ少女遊撃隊出撃!」
フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)が配下の少女遊撃隊を出撃させる。
「ユウナとやら何処にいるか!? わらわはイギリス女王エリザベスI世であるぞ。一騎打ちを申し込む所存!」
ライザが再びそう言うと
「あたしはここだよ」
とユウナが姿を表す。
「一騎打ちか。面白いじゃないかい。よかろう、受けて立つさね」
「これより神聖な一騎打ちの場である。余計な手出しは無用!」
ローザマリアがそう言うと、周囲は一気に静かになった。
「まずは《超人的肉体》! それから《超人的精神》! そして、《真空波》!」
「なんの《歴戦の防御術》! 《奈落の鉄鎖》! 《サイコキネシス》! 《銃舞》!」
しかしライザの防御術を持ってしても大きく吹き飛ばされる。
「ぐふぅ……いきなり半分を持って行かれるか……だがしかし、今度はこちらの番だ」
ライザは呻きつつ攻撃態勢に入る。
「《絶対暗黒領域》の《疾風突き》! これでどうだ!」
しかしダメージは軽微。
「まずいな……このままでは勝ち目がない……」
いつも超然としているライザらしくない狼狽の表情を見せる。
「その勝負ここまで!」
朝霧 垂(あさぎり・しづり)の声が響く。