空京

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戦乱の絆 第二部 第三回

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戦乱の絆 第二部 第三回
戦乱の絆 第二部 第三回 戦乱の絆 第二部 第三回

リアクション


■蒼十字と、地上の救助活動

空中要塞や機械化モンスターとの戦闘と並行して、
地上では救助活動も行われていた。
グロリア・クレイン(ぐろりあ・くれいん)
レイラ・リンジー(れいら・りんじー)が、
パワードスーツに身を包んで、戦場を駆ける。
2人は、撃墜されたイコンや、
空中要塞からはがれおちて落下したイコンから、
パイロットの救出作業を行っていた。
「……」
レイラが、グロリアの手を引いた。
グロリアが、レイラの指し示したイコンのコックピットを見た。
2人は、パワードアームで強化された筋力で、コックピットをこじ開けた。
「よかった、まだ息があります」
グロリアがパワードマスクの下で薄く笑みを浮かべる。
パイロットたちを運び出すと、
グロリアとレイラは後方へと搬送した。

新風 燕馬(にいかぜ・えんま)
サツキ・シャルフリヒター(さつき・しゃるふりひたー)が、
馬に乗せて軽傷の負傷者を搬送し、
伊礼 悠(いらい・ゆう)
ディートハルト・ゾルガー(でぃーとはると・ぞるがー)が、
小型飛空艇で重傷者を搬送した。
「触手には襲われないが、やはり、重傷者に馬はきついな」
「代わりに素早く移動できます。気合を入れてください」
燕馬が言い、サツキが答えた。

「私、本当にお役に立ててるんでしょうか……」
悠が、空中要塞を見上げながら言った。
ワイヤーのことがあり、小型飛空艇をなかなか近づけられないため、
救助がうまく進められないことに、
苛立ちを感じていたのもあるが。
(近づけないのは、結局、私が怖がってるから……)
「こんなんじゃ、全然駄目なのに……!」
悠が額に手を当てた。
(私以上に頑張ってる人だっているのに……どうしてこんな事で怖がるの……?)
ディートハルトが何か言おうとした時だった。
「悠! 走れ!」
「え……?」
ワイヤーが、小型飛空艇に迫ってきていた。
「私が食い止める。その間に!」
燕馬とサツキが、顔を見合わせ、同時に馬に鞭を入れた。
「すまない、今は逃げさせてもらうぜ!」
「カッコ悪いですね、燕馬」
サツキが、パートナーに毒づきながら、思った。
(私もですが)
燕馬とサツキは、ディートハルトが自分を犠牲にしてくれたことに感謝する。
この間に、今連れている軽傷者だけでも運ぶことができるからだ。

「悠、早く!」
「ディートさん!」
パートナーに叫びながらも、悠が小型飛空艇を引っ張って走らせた。
怪我をしている人を置いていくわけにいかなかった。

ディートハルトの腕と脚に、ワイヤーが突き刺さる。
「ここで倒れるわけには……!」
ディートハルトがバスタードソードでワイヤーを断ち切った。
金属のぶつかる音が何度も戦場に響いた。
「大丈夫ですか!」
グロリアとレイラが駆けつけた。
地に膝をついたディートハルトが、グロリアとレイラに運ばれていった。

メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)
セシリア・ライト(せしりあ・らいと)の用意した
輸送用トラック、汎用移動基地 出動さん一号には、
戦場の負傷者が集められていた。
治療所までのピストン輸送をするのが、メイベル達の役目だった。
地球の技術で動くトラックなら、ワイヤーに襲われずにすむと考えたこと、
また、一度に大勢運べることが利点だった。
「ディートさん、ディートさん!」
グロリアとレイラが運んできたパートナーを見て、
悠が駆け寄った。
「ごめんなさい、私……」
「悠、君は自分の役目をきちんと果たした。
悔やむことはない」
悠に、ディートハルトが微笑して見せた。
「でも、でも……」
悠が、涙を止めることができずに言った。
「大丈夫、ここにいる人は皆、一人じゃないですぅ」
「うん、ここにいる人は皆、がんばってる。
でも、無理はしすぎなくていいんだよ」
メイベルとセシリアが、優しく言った。
「貴方の想いは、他の人が受け継いで必ず実ると思うから、安心して休んでほしいな」
「ありがとう」
ディートハルトが礼を言った。
「きっと、作戦は成功するはずですぅ」
メイベルが言った。
一同は、励ましあい、救助活動を再開した。