空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【2】獅子の牙 1

 名だたる戦艦隊列、そのぽっかりと空いた穴に。
 漆黒に身を包んだ、攻撃的なフォルムの戦艦が入った。
 鋼鉄の獅子を率いたラグナロクである。
 搭乗者、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は戦艦に内蔵されているコンピュータで機動要塞の動力室と制御室がどこにあるか割り出そうとしている。
 それをルカルカ・ルー(るかるか・るー)は静かに待った。
 セレスを介して鋭峰から来た通達、それは『撃墜された戦艦のために協力して欲しい』というものだった。
「……ダリル、どうかな?」
 ルカルカがダリルに一言だけ尋ねる。
 それに対してダリルは、無念そうに首を横に振った。
「すまない。調査範囲が大規模すぎて、動力室と制御室を割り出すのにまだ時間がかかる。
 代わりではないが、荷電粒子砲に類似した攻撃を行う発射口ならばもう突き止めている」
「そう……。なら、プラン変更ね。鋼鉄の獅子の各員に連絡!
 敵機動要塞への突入はなし、他戦艦・イコンと連携して外から迎撃するわ!」
 テメレーア不在、鋭峰からの通達、
 また他戦艦やイコン等が機動要塞へと攻撃を続けている今、
 突入するのは得策ではないとのことからルカルカは突入を諦め、仲間達に連絡を行う。
「ダリル、全味方に発射口の位置データを渡して」
「既に共有済みだ」
「さっすが!」
 プラン変更を行っても二人は至って冷静だった。
 いや、冷静だからこそこれだけの決断ができたのだろう。

 突入はしない、とのルカルカからの一報があったものの、
 鋼鉄の獅子隊員はまったくうろたえていなかった。
「……とのことです。俺達は群がるイコン達を蹴散らしましょう」
「了解だぜ! 何にしたって、仲間のために全身全霊尽くすことに、代わりはないんだからな!」
 ジャーマに乗るウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)ジュノ・シェンノート(じゅの・しぇんのーと)もいつもの調子だった。

 Nachtigallの搭乗者である、ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)音羽 逢(おとわ・あい)もウォーレン達と同様だった。
「なるほど。この状況下であれば、やむなしですかね」
「ということはこのままイコン戦でありますな! 腕がなりますな!」
 すぐさま状況を理解したナナに対して、逢は元気にブースターを吹かした。

 程なくして戦艦を破壊しにきている敵イコンが、ラグナロクに向かってくる。
『敵イコンが接近中。迎撃を頼めるだろうか』
「勿論ですよ。元より、お手伝いをするつもりで来たのですから。
 それではオルフェリア・アリス(おるふぇりあ・ありす)、出撃します!」
 カムパネルラがラグナロクから飛び立つ。
 目の前の敵を倒すために、だ。
「ずいぶんと気合が入っていますね」
 いつもより気合が入っているオルフェリアにミリオン・アインカノック(みりおん・あいんかのっく)が問いかける。
「そんなこと、ないと思いますけどね?」
「実は鋼鉄の獅子の皆さんと一緒に戦えるのが嬉しいのでは?」
「それはそうですね。だから、絶対守るですよ。ラグナロクも、ルカルカさんも」
 僚機二機を連れて敵イコンへと向かっていく。
『フォローは任してくれよな! ただ、あんまり無茶しないようにな?』
「はい、ウォーレンさん。信頼しています」
 ウォーレンからの通信に笑顔で答えると、ナナからも通信が入る。
『ナナ達も基本的には支援に回ります。どうかお気をつけて』
「ナナさんの支援があれば心強いです!
 何があってもラグナロクは守り抜きますよー!」
 カムパネルラが空を舞った、かのように見えたのは大間違い。
 迫り来る敵の攻撃を、鮮やかにかわしたと思えば、次の瞬間にタブルビームサーベルで敵を貫いていた。
 
 その動きを見た敵イコンは真っ先にカムパネルラを破壊すべく群がる。
 だが、オルフェリアには心強い味方がいる。
「それ以上近づくのはご法度であります!」
 Nachtigallに乗る逢がカムパネルラの右側面にいる敵イコンを、スピアで持ってすれ違いざまに突き、頭部を破壊した。
 その直進上に入る別のイコンにはアサルトライフルを乱射して注意を引きつつ、そのまま旋回して離脱する。

「さっすがだね! 負けてらんないな、こりゃ!」
 軽快な口調ながらもツインレーザーライフルの照準を合わせるウォーレン。
 逢に引き付けられ注意散漫になっているイコンを射抜き、
 続けざまにカムパネルラの真下に来た敵イコンを射撃。
 その一撃は動力部を一部損傷させ、操作制御機能を損なわせた。
「じゃあとよろしく! オルフェリアちゃんっ」

「ありがとうございます!」

 ザンッ!

 オルフェリアがウォーレンに感謝しつつ、
 頭部から下へ真っ直ぐに、敵イコンを一刀両断にした。
「ナナさん、そしても逢さんもお見事な支援でした!」
『そんなことないですよ。さあ、次が来ますよ』
『まだまだフォローしてくっかんな!』
 二人の優しげな声にオルフェリアは「はいですっ」と明るく告げた。