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見えざる姿とパンツとヒーロー

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見えざる姿とパンツとヒーロー

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第四章

 段々と騒ぎが大きくなってきた魔法学校イルミンスール。
 あちこちで、囮としてパンツが干されたり、落ちていたり、ミニスカートを穿いた女子が行ったり来たりしていたりと、男子と一部の女子の目に大変優しい学校となっていた。

 そんな学校のある階段に、薄茶のベリーショートの髪をした、精悍な顔つきのナイト一色仁(いっしき・じん)がいた。正確には物影に隠れていた。
 そして、階段には茶髪のセミロングのパートナー、胸が大きいシャンバラ人のナイトミラ・アシュフォーヂ(みら・あしゅふぉーぢ)が、異常に短いスカートを穿いて階段の上部に腰かけていた。
 スカートは仁の異様な熱意に押され、この囮作戦に同意した。下着は見られる可能性が極大だった為、お気に入りの白地に青の縞模様、縞パンを穿いていた。
 「とにかく、パンツを見せろ」
 というのが仁のアドバイスだったが、誰かが通るたびに反射的に隠してしまうミラ。それを見てニヨニヨしている仁。
 インヴィジプルポーズを発見したら飛び蹴りによって見えるパンツによって、相手の目を釘づけにしつつ攻撃、という事だったが、ミラはこの作戦に同意した事を後悔し始めた。

 その上の階の階段でも、似たような事が起きていた。
 緑色の髪をツインテールにした小柄でかわいいナイト小鳥遊美羽(たかなし・みわ)が、超ミニスカートで座っていた。
 同じく囮だったが、彼女 はパンツは見せる気は全くない。むしろ、見た者を許す気が無い。見えそうで見えないを保とうとするが、超ミニな事を忘れているようで、位置によっては丸見えだ。純白のパンツが。
 その下の方では、パートナーの茶髪をポニーテールにした剣の花嫁のプリーストベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が物影に隠れていた。
 上と下で挟み撃ちにする作戦だった。美羽とベアトリーチェの手には石灰袋がある。いざという時は、床に撒き、透明されても追跡できるようにと用意したものだ。美羽はぶつけて、真っ白になった所を蹴りつけてやろうと考えていた。
「さあ、来るなら来なさいよね!」

 その更に上の階の階段では。
 金髪をツインテールにした巨乳美少女のウィザード藤林 エリス(ふじばやし・えりす)が、これまた超ミニスカートを穿いて座っていた。
 その位置は、覗こうとすれば完全に見える位置だったが、全て計画通り。
 パンツ、いや、パンティは勝負用のセクシーなものを用意。足元にはバケツを置き、携帯で誰かと話しているその姿は、一見、美術室に画材を運ぶ途中といった風だ。
 このバケツの中、実は赤いペンキに油を混ぜたもので、ぶちまける事によって透明になって逃げられても追跡しやすいようにする為のものだった。可能ならば、火術によって火刑に処すという、容赦の無い作戦だ。
 そして、階段の下の方にはパートナーの赤髪ロングの魔女、巨乳美少女のウィザードアスカ・ランチェスター(あすか・らんちぇすたー)がいた。
 物影に隠れ、挟み撃ちにする予定だ。さらにアスカは体操服の上着にジャージのズボンという一見一部の人にしか受けない格好だが、激しい運動をすると胸が揺れるという、巨乳で美少女を武器にした二重の罠だった。

 そんな、ある種異空間と化した階段に、銀髪オールバックの八重歯がチャームポイントのプリースト佐々木弥十郎(ささき・やじゅうろう)がやって来た。
 インヴィジブルポーズを探して階段に来たのだが、の光景に驚く。
 パンツが見えそうな女の子がいたからだ。
 しかし、そこは騎士道精神によって目を逸らし、横を通りすぎる。

 ミラは再び見えないようにと反射的に隠してしまったが、仁が合図を送り続けている。これでは囮にならないのだろう。
 次は隠してはいけない。覚悟を決めようとした時、身に危険が迫っている事を感じる。
 それは『女王の加護』によるものだった。頭の中に、ピリリリリッ! という音が鳴ったような、閃光が走ったような。
 とにかく第六感が告げるように感じた。危険。
 咄嗟にスカートを押さえ、下着が絶対に見えないようにする。
 そして、ゆっくりと周りを見回すと、目がぼやける。
 それは、直ぐ下、自分の真下の空間が揺らいで見えていた。
 ミラは息を飲む。蹴ろうと思ったが、近すぎる。仁も気づいているのかわからない。
 ゆらぎがゆっくりと動く。ミラは動けず目を瞑る事しかできなかった。
「どけェェ!」
 ミラの目の前を仁の足が薙ぐ。しかし、空振り、そのゆらぎは消えていた。
「大丈夫か、ミラ?」
「じ、じ〜ん〜!」
「なんだ、泣いてんのか?」
 ミラの瞳は若干潤んでいた。
「な、そそそ、そんな事ありませんわ! これから思いきり蹴って差し上げようと思ってた所ですわ!」
「そうかい」
「その目は信じてませんわね!? ま、まあでも、あ、ありがとう……ですわ
「おうっ」
 ミラは顔が赤くなるのを感じ、見られないように顔を逸らす。
 それを見て、ニヨニヨと笑う仁。そして思う、やっぱりミラをからかうのは楽しいな、と。

 弥十郎が階段を登る途中、またパンツが見えそうになっている女の子がいた。
 再び目を逸らすと、急に目がぼやける。
 何かがいた。それは階段を上っていく。
 立ち止った弥十郎を見ていた美羽も、その何かに気づく。
 そして、ベアトリーチェと美羽の間に来た時、石灰を振りまいた。
 ベアトリーチェは一瞬遅れて投げつける。
 石灰に包まれ何も見えなくなる階段。
 その中を何かは通りぬける。
「よ〜っし! いまだ!」
 美羽がハイキックを見舞おうと足を思い切りあげる。その時、自分が超ミニスカートを穿いている事に気づき足を止める。
「くっ、しまった……」
「危ないです!」
 ベアトリーチェが叫ぶ。何かが美羽に迫る。
「っ!」
 スカートを押さえていた美羽は回し蹴りを放つ。ギリギリ見えない。
 何かに当たった感触があり、衝撃で後退する美羽。
 体勢を整え、構える。だが、どこにも見当たらない。
「……ふふ、さては敵わないと見て逃げたな〜? やったよベアトリーチェ!」
「でも、逃げられてしまいましたよ?」
「あ、そうだった……」
 見れば弥十郎が後を追いかけて行く所だった。

 弥十郎は階段を登りながら携帯から電話を掛けようとする。援軍を呼ぼうとしたのだが、しかし、それより先に赤い何かが全身に降りかかる。
「あら、ごめんなさい」
 そこにいたのはアスカ、手にはバケツを持っている。
 どうやら今のは彼女が何かをかけたのだと気づく。
 それはペンキ、に油を混ぜたもの。全身真っ赤で、ヌルンヌルンで最悪だ。
 上には赤い下半身と、エリスがバケツを持っていた。
 透明になっている下半身だけにペンキがかかったらしく、かなり不気味な姿だ。
「よ〜し、このまま丸焼の刑だ!」
 火術により、両手に炎が出現する。しかし、その腕を掴まれる。
「な、離して!」
「下にいる彼も巻き込まれます。離す訳にはいきません」
 それは弥十郎の事だった。エリスはそれに気づいておらず、手を振りほどこうと抵抗する。
 そこに、青髪のロングウェーブの貧乳ウィザード立川るる(たちかわ・るる)がやって来た。
「どこだ〜インヴィジブルポーズ〜!」
 そこで目にしたのは、下半身が赤く上半身が無い何かと、抵抗を続ける度に胸が上下に左右にゆっさゆっさと揺れるエリスだった。
 後から続いて来たのはパートナーの黄色い髪をショートウェーブにした守護天使、プリーストのラピス・ラズリ(らぴす・らずり)だ。
「どうしたの、るるちゃん?」
「……結局っ! ……結局っ! 男は胸かァ〜!?」
 るるから炎が発せられ、インヴィジブルポーズに襲いかかる。
 炎から逃れるため、更に上へと向かう。どうやら屋上に向かったようだ。
「逃がさないよ……って、何?」
 エリスが追おうとすると、るるが服を引っ張る。
「ねぇ、どうしたらおっぱい大きくなるの? どうしたらおっぱい大きくなるの?」
 本人にとっては大事な事なのだろう。二回も聞いて来た。
 結局、アスカと供に小一時間質問され続けたエリス。
 弥十郎は携帯が壊れてないか確認していたが、がっくりしながら去っていった。
 後に携帯は一時的に調子が悪くなっていただけで復旧した。
 そして、下半身が赤い男子が倒れているのが発見されたが、どうしてそうなったのか、何も覚えていなかった。