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第3章 猫の恩返し

 スナジゴク退治は、それから数日間続いた。そしてついに、村の周囲には生きているスナジゴクは居なくなった。
 「よーし! スナジゴクの殻を剥ぎ取りに行くニャー!」
 ミャオル族の大人や青年たちは、鉈や斧を手にいそいそと準備を始めた(何と彼らは、砂鉄から鉄を精製する技術は持っているのである)。普段はこうやって、砂漠にいる小動物を狩ったり、死骸から骨や皮を採取して、生活の糧と道具を得ているらしい。
 「ボクも仲間に入れてー!」
 シーマ・アールは、嬉々としてミャオル族たちに申し出た。
 「実はさ、スナジゴクっておいしいのかな、と思って……ちょっと試してみたいんだ」
 こそこそ、とミャオル族に耳打ちをすると、ミャオル族はうーん、と首を傾げた。
 「湖に泳いでいる虫は、炒って食うと美味いニャ。あめがけにして子供たちのおやつにもするニャ。だけど、スナジゴクは固すぎると思うニャ」
 「うーん、そうか……。でも、殻ごとじゃなければ食べられるんじゃない?」
 そう言って結局ミャオル族たちについて行ったシーマは、その後数日間、(本人以外)原因不明の動作不能に陥ることになる。


 大勢の生徒が長居をすれば、ミャオル族に負担をかけてしまうことになる。役目を果たした生徒たちは、早々に空京に戻ることにした。
 「皆さん、本当に本当にありがとうございましたニャ。このご恩は決して忘れませんニャ」
 村を去る生徒たちを見送りに来たミャオル族の中にいたアイリを見つけて、
 「アイリくんアイリくん、ちょっと」
 大草 義純(おおくさ・よしずみ)が手招きをした。
 「……どうしたニャ? 何かご用かニャ?」
 アイリは首を傾げながら、義純のところへやって来た。
 「アイリくんたちを助けるために、ミス・スウェンソンが色々と力を貸してくれたり、僕たちに食料を持たせてくれたことは、アイリくんも知っていますよね?」
 義純の言葉に、アイリはこっくりとうなずいた。
 「アイリくんは空京に居る間、ミスドで手伝いをしてたけど、本当はそれだけじゃ足らないくらい、ミス・スウェンソンは力を貸してくれてるんです。……もちろん、僕たちも、ミス・スウェンソンには恩がある。だから、君たちミャオル族と僕たちと、みんなで『ミスド』にご恩返しをしませんか?」
 「ご恩返しが出来るニャ? ボクたちにも出来ることニャ?」
 義純が提案すると、アイリは目を輝かせた。義純は、自分の計画をこそこそ……とアイリに話した。
 「うん。ちょっと人手を貸して欲しいんですけどね……」
 「わかったニャ。皆に聞いてみるニャ!」
 何だ何だと集まり始めたミャオル族たちに、アイリは一生懸命説明を始めた。ミャオル族たちはうなずきながら、アイリの話を聞いている。
 「提案、聞いてもらえそうじゃん?」
 義純のパートナー、ジェニファー・グリーン(じぇにふぁー・ぐりーん)が、義純の肩をつついた。
 「戻ったら忙しくなりそうですね。手伝ってくれますか?」
 義純が訊ねると、ジェニファーは、
 「パートナーなんだから、あったりまえじゃん!」
 と、今度は少し強く義純の背中を叩いた。