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リアクション
どさっ。
プリーストの佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)が倒れこんだ。代わりに姿が見えたのは百合園女学院のソルジャー、桐生 円(きりゅう・まどか)である。円の足元には弥十郎のパートナー仁科 響(にしな・ひびき)が横たわっていた。
北の山脈、中腹下。チーム「ノーザンライト」が襲撃されているのである。
円は膝を付いているウィザードの御凪 真人(みなぎ・まこと)の胸ぐらを掴んで引き持ち上げた。
「どうせみんな倒れるんだ、早く出しなって」
「くっ」
雷撃音が響いた。円のパートナーでウィザードのオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)が練り込んだ雷撃を八方へ放っていた。人の影が幾つか倒れた。
「あっちも終わったみたいだね」
オリヴィアの足元で倒れているのは、真人のパートナーセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)とナイトのアラン・ブラック(あらん・ぶらっく)である。そこから少し離れた所にはセイバーのルカルカ・ルー(るかるか・るー)をパートナーのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が覆うようにして倒れていた。雷撃から守ろうとしたのであろうか、それでも雷撃の威力に沈んでしまったようである。
真人に冷たい笑みを見せて、円は言った。
「ゆずってくれるよね♪」
真人の瞳はしっかりと円を刺していたが、円が繰り出した腹への打撃で再びに顔を歪めた。
食べるように顔を近づけながら円は、
「出せ」
と低い声で言い放った。
チーム「ノーザンライト」は実に5体もの数字兵を倒していたが、それが今まさに円の元へ渡ってしまった。
円とオリヴィアに手も足も出ずに敗れたチームだが、原因はSP不足に他ならなかった。5体を倒したという功績が仇となってしまったようだ。
無論に一同に悔しさを滲ませながら、もどかしさを堪えて横たわっていた。
本陣へ向かって歩いていた、セイバーのアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)とローグのヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)は突如、足を止めさせられた。
平地であるが故の見渡しの良さ、その空間の中央に3メートル程のピエロ像が立っている…… 、いや、二人の視線を感じた事で疼いてきたのであろう、笑みを見せると声を上げて笑い始めたのだ。
「くけけけけけけ」
3メートルもの巨体を四方八方に跳ねさせている。
言葉を発する事なくアリアはカルスノウトを握りしめた。ヴェルチェはと言うと瞳を大きく見開いて、顔には嬉しさが溢れ過ぎていた。
それでも先に飛び出したのはアリアだった。
「ちょっと、独り占めするつもり?」
一歩を遅れてヴェルチェが飛びだした。
二人に気付いたピエロは裂けた口を大きく歪ませ笑みながら、巨大なアサルトカービンを空へ向け、放った。
東の大滝の滝上から本陣へ歩き戻っていたチーム「数奇兵」は進行方向のその先に「ハートのクイーン(12)」が歩んでいるのを見つけた。
クイーンも「数奇兵」を見つけて、身構えた。
ため息を大きく大きく吐いたのは和原 樹(なぎはら・いつき)である。樹の顔に問いかけたのはパートナーのフォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)である。
「はぁ…… 、よりによって、ハートのクイーンか」
「嫌なのか? なぜだ?」
「…… 、何でもないよ」
冷静にクイーンを見つめ見るはナイトの白砂 司(しらすな・つかさ)とローグのガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)である。
「やはり、歩み戻るという判断は正解だったな」
「えぇ、しかし絵柄兵とは。みなSPが少ないですよ」
ガートルードが言った時、鋭い破裂音が聞こえてきた。
「銃声か?」
破裂音が響き終えたとき、クイーンは不意に振り向いて、本陣の方向へ走り始めた。
絵柄兵が逃げる??
この事実と現実に足が止まった事が大きな遅れを生んだのだが、何よりも、空気が変わった、誰もがそう感じていた。
「一体、何なんだ?」
走りゆくクイーンの背が、みるみる内に小さくなっていった。
本陣へ戻り来ていたチーム「PLANT」も動き出した巨大ピエロを視界に捉えていた。
「何だ、あれ」
見上げ見たプリーストの鈴倉 虚雲(すずくら・きょん)が声を零した。
虚雲のパートナー紅 射月(くれない・いつき)もローグの柳生 匠(やぎゅう・たくみ)も見上げていたが、匠には心当たりがあった。
「ジョーカー」
「ジョーカー?」
「なるほど、ジョーカーですか。興味深いですねぇ」
「呑気な事言ってる場合か!戦ってる奴がいる」
虚雲が指差した先では、アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)とヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)がジョーカーと戦っていた。
アリアの斬撃をジョーカーはアサルトカービンの銃身で受け弾き、ヴェルチェのダガーはカルスノウトの柄で叩き落とした。
着地と共に飛び出す二人、ヴェルチェは手持ちのトランプをジョーカーの眼前に撒き散らした。
「ちょっと、何してるの?」
「いいのよ、偽物なんだから」
ダミートランプの死角から連続でヴェルチェはダガーを放った。
確実に反応は遅れたはずなのに、ジョーカーは表情を変える事無くアサルトカービンを回転させてダガーを防いだ。間髪入れずに剣を薙ぎ払った。
3メートルの巨体に合った巨大なカルスノウトの一撃に、アリアとヴェルチェは共に吹き飛ばされた。
二人が地面を抉ってから止まった時、匠は狼煙を上げ終えていた。
「ジョーカーだ、遙遠、ウィング、見つけたぞ」
空を捜索しているチーム「ワイルドカード」への連絡、狼煙が上がる。
間もなくに、すぐに、4機の小型飛空挺が上空に現れた。
セイバーのウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)が上空から見下ろした時、ジョーカーの姿に驚いた。
「何ですか、あの大きさは」
「ウィングっ、あそこ、倒れてる人がいる」
パートナーのファティ・クラーヴィス(ふぁてぃ・くらーう゛ぃす)の視線を追うと、倒れているアリアとヴェルチェの姿を見る事ができた。
「行くぜ、ウィング」
通信の声、緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)の生き生きとした声がウィングに届いた。
「えぇ、行きましょう」
「お二人ともっ、待ってください」
遙遠のパートナー紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)の声に、ウィングと遙遠はジョーカーへと目を向けた。
「なっ!」
誰もが目と瞳を見開いた。
ジョーカーは巨大な箒を取り出すと、片足で乗りて宙に浮かんだ。
「おぃおぃ、マジか」
「空飛ぶ箒、ですよね……」
通信の声にも動揺が見えた。ウィング自身もファティも動揺を隠しきれていなかった。
ジョーカーがピエロの笑みを見せる、4機に向いて。ついに箒ごと向かって来た。
遙遠が放った雷撃を、ジョーカーはカービンを撃ちて相殺させた。
飛空挺で向い飛ぶファティがジョーカーの視線を引いた瞬間、飛空挺から飛び出したウィングは轟雷閃を打ち下ろしたが、カルスノウトで簡単に受け防がれた。間髪入れずに遥遠も爆炎波を放ったが、今度は体を箒を中心に回転させて大きく速く避けたのだ。
「くけけけけけけ」
適切な動きをしていない、選んでいない。楽しんでいる、そのようだった。
「ん〜〜、見つかっちゃったみたいだねぇ、ジョーカーの彼」
本陣から遠きの空を見つめたノーム教諭は嬉しそうに言った。
「時間も程良いねぇ。アリシア、トランプの討伐状況はどうだぃ?」
「はい、こちらになります」
助手のアリシアはノーム教諭に一枚の紙を渡した。実に細かい字で書かれているようだった。
「素晴らしい、ほとんどの兵がやられてるね。ふふふ、そろそろ次の段階に進もうかねぇ」
「はい、残っている絵柄兵も間もなく到着するかと」
「よぃよぃ。じゃあ私は義魂造転機の所にいるからね、準備ができたら呼びに来てよ」
「かしこまりました」
そう言ってノーム教諭は背を見せてしまい、いや、首だけを振り向かせましたよ。
ノーム教諭は「サニーのエース(1)」をヒラヒラと笑み見せていた。
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