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リアクション
2 襲撃会議・洞窟
人数は少しずつ増えている。
「ダージュ、これじゃ泥棒じゃなく、戦争だよ」
シー・イー(しー・いー)はいっそうむっとしている。
クラブに潜入していたレンも参加している。
「でよぉ、幽霊電車ってのは、いつ走るんだい?わかんねぇなら、毎晩、見張りでも立てるかぁ」
大鋸がいう。
「今夜ですよ。今日が最後です。盛大に運ぶようですよ」
レンの情報だ。
「ふふふのふー」
幾嶋 冬華(いくしま・ふゆか)が機嫌よく叫ぶ。
「きっとお金いっぱいあるのだわ。私たちどうしてもお金が必要なのだわ、ねえ」
問いかけられたテレシア・ラヴァーズ(てれしあ・らう゛ぁーず)が大きく頷く。
「妹がお腹を空かせておうちで待ってるのですぅ。だからどーしてもお金が欲しいのですぅ。」
大鋸は、うんうん頷いている。
「おぅ、俺たちについて来いっ!学校が出来たらよぉ、学食も作るんだぜっ。お前の妹にも腹いっぱい食わせてやるぞっ!」
大鋸は、また涙ぐんでいる。
パートナーを組織側に潜入させている吉永 竜司は、大鋸の元に来ている。
「ところでお前らはなんでいるんだ?」
シャンバラ教導団の生徒が、この場にいることが不思議なのだ。
戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)とパートナーのリース・バーロット(りーす・ばーろっと)は、シャンバラ教導団に所属している。
「我も我慢できないのです。教導団の線路を利用して、アングラで稼いで、密輸して儲けているなど許せません。悪を叩くためには、時には、清濁併せ呑むと言う事も必要だと我は思います」
小次郎は理路整然と大鋸に語りかける。
「きっとお力になれます」
ふーん、竜司は鼻で笑う。
「で、そっちのお姉ちゃんは」
洞窟の隅にいる天槻 真士(あまつき・まこと)に声を掛ける。
いかつい竜司に話しかけられても、真士はまるで怯まない。
「ただ、暴れたいだけよ」
パートナーのセラフィス・ローレンティア(せらふぃす・ろーれんてぃあ)とレヴィス・ストレチア・レギーネ(れう゛ぃす・すとれちあれぎーね)は、真士と竜司のやり取りに聞き耳を立てている。
「しかしお嬢、モヒカンやらリーゼントやらと並んで立っても違和感があんまりないです…」
レヴィスがボソッと呟く。
「お嬢はやっぱりパラ実に入った方が良かったんじゃ……いや何でもないっす」
二人は、この計画に気乗りしていないようだ。
「・・・やれやれ」
そして、一番違和感があるのは、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)とセシリア・ライト(せしりあ・らいと)だ。
竜司が二人の顔を見ながら、首をひねる。
「なんかバザーと間違ったんじゃねえか。ここは強盗団だぞ」
「はい。強盗をしにきたのですぅ」
メイベルは、ニコニコ笑っている。
「お前は、強そうだ」
生前は英国ガーター騎士団に所属していたフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)は頷く。
「当然ですわ」
朱 黎明(しゅ・れいめい)は、特に口を挟むことなく場をうろうろしている。朱 全忠(しゅ・ぜんちゅう)になにやら頼みごとをしているようだ。
カーシュ・レイノグロス(かーしゅ・れいのぐろす)は、洞窟の入り口付近で足を投げ出していた。
「面白くねぇし。」
襲撃方法を言い合うメンバーには他校生や女生徒も多い。
「素人ばっかだ・・」
貧民街で育ち、一通りの悪事に手を染めたカーシュには、この列車強盗計画自体がおままごとのようだ。
「ちぇ!」舌打ちと共に、カーシュの姿は消えている。
大鋸はレイの話を熱心に聴いている。
レイは、すぐに怪しまれぬよう、クラブに戻ってゆく。
その後姿をみて、蒼空学園のカライラ・ルグリア(からいら・るぐりあ)がそっと大鋸に耳打ちする。
「デマですよ」
「デマだぁ?」
大声を出す大鋸を制して、
「大きな声を出さないで下さい。・・・敵はそんな人数はいません。お宝も鉱物ばかりで軽く換金しやすいものです。ボクも潜入してましたから、知っています」
くすくす笑いをするカライラ。
「何で笑う?」
「いや、敵は弱いです。王さんならすぐに倒せますよ」
カライラは、人当たりもよく好青年に見える。
「お前、信用できんのか?」
カライラは、勿論、と言いたかった。
しかし、大鋸の迫力に負けて返事が出来ない。
「まあいい、人数なんて1人でも100人でも同じだぜっ!戦って倒せばいいんだからなっ!」
ウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)は、泣いたり叫んだりの作戦会議に、少し不安を覚えている。
「悪いお金なら、まあとってもいいか」
困っている人をみるとほっとけないウェイルは、闇組織がはびこることが我慢できない。意を決してやってきたのだが、なんだかいつのまにか宴会のようになっている。
「まあ、自分で頑張るしかないよな」
パートナーを置いてきてよかった。ウェイルは心の中で呟いた。
そして作戦会議が終わった。
「ふうっ」
なんとも適当な襲撃会議の帰り道、ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)は伊達メガネを外して溜め息をついた。
プラチナブロンドの髪を黒く染め、トレードマークのポニーテールを解いたミューレリアは、ローグらしく、かなり見事に変装している。
「どう言い訳したって、強盗は犯罪だぜ?私は許さないぞ」
それにしても、
「あんな計画で、っていうか計画もないが、それで、うまくいくのか?」
3 調べる人々
シャンバラ教導団でも、列車強盗の噂は耳に入って来る。鉄道を不正利用されているのだとしたら、かなりの問題だ。
担当部署は処分されかねない。
衛生科の一年生朝霧 垂(あさぎり・しづり)は、できるだけ穏便にことを済まそうと画策している。
パートナーのライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)と里見 伏姫(さとみ・ふせひめ)と共に調べているのは、ここ一年の消失物・盗難物リストだ。闇組織に狙われそうなものをピックアップしてゆく。
夜、垂は「幽霊なんていやだ〜、絶対にいきたくない〜〜〜!!!」と嫌がるライゼを背中にくくりつけ、伏姫と共に二台の軍用バイクで列車を目指す。
その少し後ろをルカルカ・ルー(るかるか・るー)のバイクが追走する。特殊部隊で訓練を受けていたルカルカにとって、気付かれず後をつけることは、そう難しいことではない。
隠密潜入操作なので単独で行動する予定だったが、他にも列車探索を行う生徒がいると知り、その後をつけることにしたのだ。
軍用バイクにレオタード姿は少しセクシーすぎるが、ルカルカに似合っている。
すでに列車の内部情報は軍の情報網で入手済みだ。
同じシャンバラ教導団のプリモ・リボルテック(ぷりも・りぼるてっく)とジョーカー・オルジナ(じょーかー・おるじな)もほぼ同時刻に出発している。
しかし、垂やルカルカとは少しだけ異なる方角にバイクを進めている。
青 野武(せい・やぶ)と黒 金烏(こく・きんう)は、全く異なる理由で教導団を出発している。
持ち物は、資機材や工具、カンテラや非常用の信号弾だ。
数日前に、幽霊電車の噂を聞いた野武は、該当区間の作業員が幽霊に怯えて夜間の作業を怠っているのでは、と心配したのだ。
「このままでは、ヒラニプラや空京の市民生活に影響がでるであろう。ここは我輩が一肌脱ぐぞ」
野武は、詰め所を訪れ、、「列車が通っていない筈の時間帯を見計らって」の保線作業を認めさせてしまった。
シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)も伴って、もろもろの機材を抱えて、線路に向かう。
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