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虹色巨大卵救出作戦

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虹色巨大卵救出作戦

リアクション



Scene2

 妖精たちを救出に向かうものたちと入れ替わるように、正面突撃隊とともに、見世物小屋出演者たち、スタッフ、見物客らがやってきたので、現場はさらに大混乱だ。
 それらと一緒に、高崎 悠司とレティシア・トワイニングが人ごみに流されるようにやってきた。
「ねー見世物小屋っていつもこんなんなのかなぁ?」
「んなわけねーだろっ!?」
 さすがの悠司も誰かの攻撃のとばっちりを受けたときにおかしいと気づいた。
「おい、こら! ここの見世は客に怪我させる気かよ!!」
 目に付いた男性をつかまえて文句を言ってみるが、スタッフらしき彼は「それどころじゃない」と悠司を振り切り行ってしまう。
「ふ、ふ〜ん……そっちがその気なら、俺にだって考えがあるもんね……」
 腹の虫の治まらない悠司は、さきほど見た妖精たちを拉致して見世物小屋に興行的な打撃をあたえてやろうと思いつく。
「悠司……無視されて腹立つのはわかるけど、あの人の言うとおり“それどころ”じゃないと思うよ」
「うるさい、れち子」

 そんなこんなでテント内は大混乱。
 あちらこちらで、思い思いに戦闘が繰り広げられていた。
「さあ、怪人さん! 私が相手よ!」
 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)が対峙しているのは跳躍猿ことチャウイェであった。
 猿人間と称される彼は、その名のとおりすばしっこい動きでアリアを翻弄する。
「はぁ、はぁ、、、妖精さんたちの、ために、負けられない……」
「おらおら、どーした?」
「きゃぁぁぁぁぁっ!!」
 チャウイェのジャマダハルがアリアの蒼空学園制服を切り裂き、彼女の珠の素肌が露わになる。
 真っ赤になるアリアだが、それでも気丈に顔をあげ……ふと、感じた違和感に足元を見ると、無数の蛇がアリアを取り囲み、その足に絡み付いていた。
「いっ、やっ、あぁぁぁぁんん! はあっ……あっ……あ…んんっ」
 這い上がろうとする蛇たちの神経を逆なでするような感覚に、アリアは悲鳴とともに、あえぎ声が漏れる。
「ふふ……かわいい声を聞かせてちょうだいな」
「姐さん……やりすぎ」
「うっさいわねぇ……あの娘だって楽しんでるじゃない」
 チャウイェの非難に蛇女ことショウメイニィが赤い唇を尖らせた。
「そもそも、私たちの興行をめちゃくちゃにして、どう落とし前をつけてくれるのかしらねぇ?」
 見世物小屋側の率直な意見。
 ボスがなにをしたか想像はつくが、真昼間から興行営業中に襲撃を受ける謂れはない。

 そんなふたりの前に現れる影がいくつか……
「そこまでよ! この世に悪がいる限り! 正義の心が煌き燃える! 陽光の輝き、【紅炎】のルビー! 虹色卵は返して貰うわ!」
「え、えっと……この身に宿すは極光の光!禍祓いが私の使命、【氷雪】のダイア! 行きます!」
 赤い髪のヴァルキリー【美少女戦士部】リーダーアメリア・レーヴァンテイン(あめりあ・れーう゛ぁんていん)と銀の髪のアイシア・ウェスリンド(あいしあ・うぇすりんど)だ。
 ふたりともに蒼空学園の改造制服(それぞれに真紅と純白)で名乗りをあげる。
 そして―――
「悪の闇に咲く正義の大輪! ヴァルキュリア・サクラ!」
「真実の瞳の騎士、ベルセルク。ここに見参だ」
 蒼空学園の改造制服と和服を合わせた衣装をまとった飛鳥 桜(あすか・さくら)と、仮面アイマスクで鎧のない騎士のような姿のアルフ・グラディオス(あるふ・ぐらでぃおす)が現れた。
 ノリノリの桜とは対照的に乗り気ではないアルフだ。
「覚悟ぉ!!」
 桜はチャウイェとショウメイニィに向かってカルスノウトを振り下ろす。
 しかしそれは、チャウイェに阻止され、跳ね返された。
 反対にチェウイェのジャマダハルが桜の咽もとに突きつけられる。
 それを助けようとするアルフの前に、ショウメイニィがいた。
 ショウメイニィに冷たい視線を向けられアルフ・グラディオスは、彼女の姿(細身の美女が大蛇を身に絡みつかせている)を見て絶句した。
「毒殺と絞め殺されるの、どちらがお好み?」
「うっ……」
 アルフ、蛇が大の苦手である。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「きゃっ」
 火事場のクソ力……アルフはショウメイニィと彼女の大蛇を突き飛ばし、パートナーのもとへと突進しようとして、大蛇に足を取られて派手に転んだ。
「アルフ!?」
 【美少女戦士部】の仲間たちが……一斉に叫ぶ。
 桜に向かってスライディングするアルフに、騒ぎを静めようと奔走している見世物小屋スタッフの面々が数名覆いかぶさる。
 この場合、スタッフたちの役どころは戦隊ヒーローにおける戦闘員だろうか……とりあえず、数に負けてピンチな【美少女戦士部】だ。

 そこに現れる暗黒のロングコートを羽織った銀の仮面の人物。
 彼は現れた勢いで、抜刀術による攻撃にで戦闘員たちを切り捨てようと―――
「そこまでだ! ……月光の【ムーンライト】……覚えておかなくてもいいぞ……早く終わらせて帰りたいんだ……速攻で終わらせてもらう……疾き事風の如く……」
「ク……クルード? クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)か?」
「―――!!!!?」
 村雨 焔の声に、クルードの動きは停止した。
「……ひ、人違い……だ」
「そ、そう……か?」
 気まずい空気が流れる……
 そこへ「なにをしている」と割って入る戦闘員たちを叩きのめす焔と月光の【ムーンライト】。
「相手に不足だが、俺が【埋服の毒】だということに気づかなかったネルソンを恨むんだな!」
「……【閃光の銀狼】の爪牙……見せてやろう……その身に刻め!」


※ ※ ※


 そんな混戦乱戦の中、リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)はわき目も振らずにテント中央に鎮座する虹色の巨大卵に近づいた。
 途中、戦闘員(スタッフ)たちたちに止められそうになったが、それは『氷術』の一撃で一蹴。
 そして、卵の表面に手を当て内部の様子を感じ取ろうと“気”を集中させる。
「……やはり、これはコンロン巨大蛾の卵なのだ」
 かなり決め打ちである。
 もしかしたら、巨大な鳥だったり、亀だったり、ナントカザウルスの卵かもしれないぞ。
 もとい。
「うごいているのか? ……まさか、ここで孵化する?」
 といって、どうすることもできない。
 リリは、この卵の持ち主であろう双子の妖精を探すために駆け出した。
 一方、リリのパートナー ララ サーズデイは剣舞姫ジーニャンと対峙していた。
 ジーニャンは一見、剣や武道などに縁のないように見える様子だが、その細い両の腕先が手のひらから鋭い長剣に変化した様子は、彼女がどういった過去を背負い見世物小屋へ流れてきたのか想像に難くなかった。
 ララの身軽さとスピードを身上とした戦い方に、ジーニャンはなんなくついてくる。
 氷の美貌に表情すら浮かべず、ただ淡々とララの剣を受け流し、切り返す。
 その姿はその名のとおり、舞を舞っているかのようだ。
 ララが必殺技「水鳥斬舞」で白鳥のように華麗に宙を舞い、ジーニャンの背後を取ろうとするが、ジーニャンは、ララの着地を待たず振り向きざまに斬りはらった。
「やるじゃないか……君が戦う理由を知りたいね」
「べつに……私が戦いたいわけじゃないもの」
「そうかい? だったら、卵を妖精に返して彼女たちを解放してくれないかな?」
「それも、私が決めることじゃないわ……」
 再度、斬り結ぶ。
「そこまでだぜ!」
 戦うララとジーニャンの間に【E級四天王】ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)が割って入り、ララに向かって機関銃を撃ち放つ。
「む。」
 ララがすばやく身を翻し、ナガンの銃撃から身をそらす。
 それを尻目に、ナガンはジーニャンに振り返った。
「あぶないところだったな」
「別に……」
 派手な道化師の衣装のナガンと対照的なモノトーンの剣舞姫。
「おいおい、そりゃねーだろ? そんなことよりさ――」
 ナガンはジーニャンの肩に腕を回す。
「……」
「ネルソンにこのままついていくのかァ? 旗色ワリぃし、もっとふさわしいナガンについてこいよ」
「ついていってどうなるの?」
「なに、頭がネルソンからナガンに代わるだけだ」
 そして【D級四天王】になったナガンの下で、それぞれの能力を有効に使ってくれれば良いだけだ。
「……お断りよ」
「ん?」
 ジーニャンはナガンの腕をすり抜ける。
「私が、ネルソンの見世物小屋にいるのは、ボスに強要されてるわけでもなんでもないのよ……」
 ネルソンは、いろいろと問題のある人物ではあるが、行く場所がなかったジーニャンを拾い、居場所を作ってくれた恩人である。他の出演者たちも似たような境遇だと聞く。
「あの人が【四天王】だからついてるのではないの、ネルソンだからなの……あなたでは無理」
「……ま、気が向いたら声かけてくれよ」
 ジーニャンにフラレたナガンだが、行ってしまう彼女の背にそう声をかけた。



 リチェル・フィアレット(りちぇる・ふぃあれっと)は蛇女らしき大蛇を身にまとった女性を見つけると駆け寄っていき話しかける。
「へ、蛇女さんですが……? 確かお話だと綺麗な歌声で人を魅了するとか……」
「? なに言ってるのかしら?」
 ショウメイニィは怪訝そうな表情でリチェルを見る。
「あの、よろしければ、一緒に歌を……」
「興味ないわ」
 一緒に歌を歌おうというリチェルに対して、取り付く島もなさそうなショウメイニィ。
 そこへ七瀬 瑠菜(ななせ・るな)が割って入った。
「もし、見世物小屋で無理に働かされているんだったら、一緒にネルソンの悪事を暴露しちゃわない?」
「あなたがどういうイメージを見世物小屋に対して持って、私たちをどういう目で見ているのかわかるご意見をありがとう」
 ショウメイニィは、屈辱を受けたという表情をして答える。
「私たちは、好きで見世物小屋にいるのよ、誰にも強要なんかされてないわ、自分たちの芸に誇りを持って演じているわ」
 そう言い捨て、ショウメイニィは瑠菜たちを残して行ってしまう。
 それを瑠菜とリチェル、フィーニ・レウィシア(ふぃーに・れうぃしあ)は見送るしかなかった。
「……人間火炎放射器さんと一緒にパフォーマンスできないかな?
「わからないけど……怪人さんたちみんなが、蛇女さんと一緒の考えだったら、無理かも……」
 つまらなさそうなに言うフィーに瑠菜はそう答えた。
「もし、一緒にお話したり、ご飯食べたりしたかったら、もっと相手の立場を考えないといけないのかも……」
 ま、悪いのはネルソンだけどな。