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リアクション
Scene5
テント内を燃やし広がる炎の中でラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)は、チャンスとばかりにネルソンに近づこうとしていた。
「うっし!! ここからが本番だ! いっくぜ!!」
混乱するテントの中、避難する人々をかき分けラルクは、ネルソンを見つけると機関銃を乱射する。
乱射だから確実に相手に当たるわけではないが、ラルクはかまわず撃ちまくる。
さすがに、攻撃から防御体制へ移らざるをえないネルソンだ。
「さって……少しだけ切り札を使わせてもらうぜ」
ラルクは間合いをはかりながら『ブラインドナイブス』でさらに強化した銃撃を続ける。
足元から、肩、頭部を狙う。
当たる当たらない以前にさすがに動きを封じられるネルソン。
「くっ……」
「どうだ? 行動を制限される感じはよ! ……ん?」
「またせたな!」
勝利を確信して、勝ち誇った表情を浮かべるラルクの前に国頭武尊(くにがみ・たける)がふいに現れ、ライトブレードでラルクの機関銃を一刀両断のもと葬り去った。
武尊は『光学迷彩』で隠れていたが、ネルソンがおされ気味になったところで姿を現したのだ。
援軍の登場にほっとするネルソンだが、武尊は一瞬の不意を付いて『光条兵器・銃剣付き大型拳銃』をネルソンの目の前に突きつけた。
「う……うらぎりもの」
「オレがお前を裏切ったんじゃねぇ。ただ表返っただけだ!!」
うそぶく武尊。
……ま、いいけど。
「おいこら?! 武尊?!」
「ああん? 大将首とったもんが勝ちなんだよ、君は最後の最後で油断したな」
文句を言うラルクに武尊は平然と言ってのけ、ネルソンを見た。
「で、俺が【四天王】だ。文句はねぇな?」
「……しかたがあるまい」
ネルソンの言葉に武尊はニヤリと笑った。
「確かに私は【四天王】の座を返上するし、貴様が【四天王】を名乗るのは自由だが……」
負けを認めたネルソンは立ち上がり衣服の埃を払いつつ、武尊を見た。
「まだなんかあるのかよ?」
「譲るのは【名誉】だけだ、その他は貴様の才覚しだいだ」
【四天王】の称号を得るのは時と場合によっては容易いが、それ以上でもそれ以下でもない。
とりあえずは電光のネルソンから武尊が得たものは【D級四天王】の座だけである。
※ ※ ※
「……」
虹色巨大卵を温めて孵化させようとしていたマシュ・ペトリファイアたちは、爆発炎上するテント内で呆然としていた。
「すごいのだ!」
ロミー・トラヴァーズの歓声にマシュは我に返る。
「ロミー殿! そんな暢気なこと言ってる場合じゃないですって!」
マシュはロミーを抱え上げ、メイベルたちを促すとテントの外へ向かって走り出した。
と、避難してくる人々を出口で待ち構えている人物がひとり。
ユルルのおじさん(ゆるるの・おじさん)だ。
「逃げ出せませんよ、ユルルのルー♪」
とか言いながら、ホウキで避難してきた人々をテント内へ押し戻そうとしている。
そこへ譲葉 大和とロミーを抱えたマシュが、別々の方向から駆けつけてくるなりユルルのおじさんを力いっぱいぶん殴った。
「関係のない人々を」
「殺す気か!」
「い、いたいのです〜」
見世物小屋のテントは、中の虹色巨大卵を包み込んだまま炎上する。
「ああ……」
「どうしましょう」
妖精たちが悲痛な声をあげる。
はじめ試そうとしていた弱めの『火術』で温め卵を孵化させるという計画よりも、かなり強火で卵を熱している。
「そう心配しなくても大丈夫だよ」
「あたしたちがなんとかしてあげるよ」
羽高 魅世瑠(はだか・みせる)とフローレンス・モントゴメリー(ふろーれんす・もんとごめりー)が妖精たちを元気付けるが、妖精たちは不安そうな表情を隠せない。
「もし、タマゴ、焼けたら、ラズ、食べる、心配ない」
「だめだよ、ラズ、卵は妖精たちに返す約束だ」
ラズ・ヴィシャ(らず・う゛ぃしゃ)は卵を食べる気でいるらしいのを、フローレンスはやんわりと止めた。
「それに、あれだけ大きな卵だよ、あの程度で蒸し焼きになるとも思えないね」
そう燃えるテントを見上げる魅世瑠。
それに釣られて大鋸たちも燃えるテントを見た。
そしてどこからか妖しげな音楽が聞こえ始める。
「なんだ?」
大鋸が音楽の流れる方向を見ると、魅世瑠たちが音楽に合わせて身体を動かし始めるところだった。
♪タマゴヤ タマゴ〜
ドンガラホンダラヘンダッタ〜
インドゥガビガフン!
3人の肌もあらわな少女たちが、歌い踊り続ける。
全裸に近い彼女たちの踊る様子はかなりエロチックだ。
この謎の歌と妖しい踊りを虹色の巨大卵に捧げ、その奇跡を願う。のだという。
「……効くのか?」
「さあ?」
「ほらほら、キミたちも歌う、踊る!」
大鋸の質問に妖精たちは小首を傾げ、魅世瑠がそんな彼らに一緒に歌い踊ろうと誘う。
♪タマゴヤ タマゴ〜
ドンガラホンダラヘンダッタ〜
インドゥガビガフン!
無理やりに、現場で見守る者たちを歌と踊りに参加させ。
それが、その場にいた全員に広がった頃、テント燃え尽き、その残骸から虹色巨大卵が姿を現す。
そして、卵の表面に亀裂が入り―――――
それは出現した。
「……」
「……予想を裏切らなかったな」
おおきなお世話である。
とりあえず、虹色巨大卵から出てきたのは、体長13メートルほどのつぶらな瞳がカワイイ巨大イモムシだった。
「フル、ラズ、続けて感謝の踊りだよ!」
魅世瑠たちは、巨大幼虫の誕生に感謝の歌と踊りを捧げるために再び踊りだした。
♪タマゴヤ タマゴ〜
ドンガラホンダラヘンダッタ〜
インドゥガビガフン……」
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