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アーデルハイト・ワルプルギス連続殺人事件 【後編】

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アーデルハイト・ワルプルギス連続殺人事件 【後編】

リアクション

 第5章 真・設定崩壊返し! そして終幕のこと

■□■1■□■

 そのころ、水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)は、思いつめていた。
 (霧島さん……。普段から、好きの一言も言えない私だけど、ビームの力でもっと近づきたいの!)
 かくして、睡蓮は、設定ビームを浴びる。
 「私、水無月 睡蓮。16歳。気が小さくて、クラスのいじめられっ子だった私を、ある日、霧島さんが助けてくれたの。そんな霧島さんに、私は勇気を出して告白して、OKの返事をもらったわ。でも、だけど、彼は浮気性で、周りにはいつも女の子が一杯……。他の誰かに取られるくらいならいっそ私の手で……うふっ、うふ……うふふふふ」
 睡蓮のパートナーの黒色の装甲の機晶姫鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)が慌てる。
 「ど、どうしたんだ、睡蓮。まさかの学園化設定か!? というか、元々学園ものなわけなんだが。ハッ!? 自分は発声機関がなかったのに、しゃべれるようになっている!?」
 九頭切丸もビーム浴びたのである。
 「そう、そうすれば霧島さんはずっと私のもの。ちゃんと体の中のものも取り出してきれいにして、そう、ずっと今のままの姿で、ずっと一緒に……」
 匕首を手にしたヤンデレ睡蓮を、九頭切丸が止めようとする。
 「やめるんだ、睡蓮。そんなことをしてなんになるっていうんだ!」
 「ねえどうして、どうして九頭切丸までそんなことするの? 貴方は私の味方だと思ってたのに……どうして? そんな子なんかいらないわ、九頭切丸なんかいらない」
 「!?」
 いらないと言われてショックを受け、その隙に刺され、九頭切丸が倒れる。
 一方、霧島 玖朔(きりしま・くざく)は、教導団からイルミンスールに急いでやってきていた。
 (イルミンスールの方で変な奴が現れたと聞いたが……。水無月が巻き込まれてなければ良いが確認しない事には始まらない。凄く嫌な予感がするんだが腹を括るしかないな)
 「霧島さん!! いつもいつも他の女の子とばかり……。死んでしまえば、あなたはもう、私だけのものよ!」
 「み、水無月!? お、落ち着くんだ! 恋愛は複雑だ。時にはリスクを犯さなきゃ行けない事が……! 俺は、水無月のことも、他の子のことも、本気で愛しているんだ!」
 「いやあ! 私だけを見てくれなきゃ、嫌なの!」
 「うわああああああ!?」
 金属音が響く。
 「「く、九頭切丸!?」」
 「こんな風にはなってしまったが睡蓮は大事なパートナーだ。普段から引っ込み思案でなかなか人と打ち解けられない彼女に手を差し伸べてくれたのはお前だけだ。自分には睡蓮を止められない、きっと彼女を止められるのもお前だけだろう」
 匕首で刺された九頭切丸が、霧島に言葉を残し、倒れる。
 「ふふ。うふふふふふふふふふ。みんな、みんな、死んでしまえばいいのよ!」
 「ぎゃあああああ!?」
 今度こそ、霧島が睡蓮に刺される。
 そこへ、ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)が現れる。
 「百合園に現れた凄腕の医者、それこそが私、超執刀ミューレリア! どんな重症患者も、メス代わりの雅刀で完全治療! ブラインドナイブス・オペは、患者を刺す事で逆に治療する、物理法則無視の必殺医術だ!」
 「やっぱり頼れるのはお前だけだ……そんなお前が大好きだ。ああ可愛いよミューたん」
 「驚異の無免許医、ミューレリアのブラインドナイブス・オペだぜ! ということで、思いっきり刺すぜ!」
 「ぐはあ!?」
 霧島は、ミューレリアにも刺される。
 「あ、治ってる」
 「さあさあ、それじゃあ、料金を支払ってもらおうか! 私の治療費は高くつくぜ! 1000万円いただくぜ!」
 「ええっ!? ミューたん!? ひどくないか!?」
 「ひどくないぜ! お金儲けするのが私が設定崩壊ビームを浴びた目的だったんだ。さあ、命とお金とどっちが大事なんだ? 匕首持った睡蓮が迫っているぜ!」
 ミューレリアが、雅刀をぶんぶん振り回して言う。
 その隙に、九頭切丸が立ち上がり、睡蓮と霧島とミューレリアを殴って、全員気絶させた。


 「と、このような寸劇が繰り広げられたわけですが」
 エル・ウィンド(える・うぃんど)が、アーデルハイトとエリザベートを前に、提案する。
 「ウィニングも、愛と生命の大切さを知ると改心すると思います。愛と生命の大切さをテーマにした劇をやりましょう! 心をぶつけることもバトルです!」
 「なんだかいかがわしいのですぅ」
 「この事態を収拾できるのなら、なんでもよい……」
 エリザベートは眉間にしわを寄せ、アーデルハイトは、ざんすかと本気で戦ってボロボロになり、疲れきった状況で言った。

 こうして、劇が上演されることになり、その前に、望月 あかり(もちづき・あかり)の制作したアニメが上映された。

 〜スタッフ〜
 【原作・脚本・監督】望月あかり
 【絵コンテ・演出】望月あかり
 【音楽】望月あかり
 【撮影】望月あかり
 【作画】望月あかり

 〜キャスト〜
 【望月あかり】望月あかり
 【エリザベート】望月あかり
 【アーデルハイト】ラップ音
 【ざんすか】じゃた(時給カレー5リットル)
 【セバス】油性マーカー(ピンク)
 【じゃ子】パラミタ内海産鮮魚市でせりをやってたおいちゃん

 「わたし不良じゃけぇ、ターミネートされても前作の設定を引きつがねぇ。望月あかりは、人間界で暮らすごく普通の女の子。でも、人には言えない秘密があるの。実はわたし、魔法界「イルミン」の王女エリザベートさまの魔法で変身して、人間界を悪の何たらハイトから守る魔法少女(仮)なの! 人間界の平和を守るため、マジカル★スコップで今日も落とし穴を掘るよ!」
 「あかりはいい子ですねえ」
 「何たらハイトぶっ殺すざんすじゃた。……これでいいのか、じゃた?」
 「550! 560!」

 「なんですかぁ、この内容はぁ……ていうか、わたしの台詞らしきものを、あかりが言っていますぅ」
 「ははははは! このアニメの設定崩壊効果で、えら呼吸でぬめぬめしている、という設定になるがよい!」
 「ふざけるなあああああああああああ!!」
 あかりはアーデルハイトにぶっ飛ばされた。

 気を取り直して、劇が上演される。
 「ああ、アーデルハイト様と、結婚式で死に別れたボクだが、彼女の親友エリザベート校長と仲良くなり、立ち直って結婚し、子どもをもうけたんだ! それなのに、ボクの愛するエリザベート校長は、産後の肥立ちが悪く、そのはかなき命の炎は今にも消えようとしている!」
 舞台の上、エリザベートはベッドに横たわらせられ、エルが駆け寄る。
 「身体は大丈夫か?」
 「いえ、大丈夫ですけどぉ、この設定はぁ……」
 「校長! 妻役としての台詞をちゃんと言ってください!」
 「……あなた、心配いらないですぅ」
 「ああ、ボクは、校長が死んだら、耐えられない!」
 「……ぐふっ、もうダメですぅ」
 「エリザベート校長おおおおおおおおおおおおおおお!!」
 エルが号泣する。
 「……さあ、いまのうちに、赤ちゃん役のアーデルハイト様も泣いてください!」
 「おぎゃーおぎゃー……無理がないか?」
 乳母役の風森 望(かぜもり・のぞみ)が、興奮して叫ぶ。
 「きゃー、赤ちゃんが泣いてます! おしめ! おしめを換えましょうね! 流石にX指定なので照明さーん、ライト落としてくださいねー♪ 台本にない? 私の台本にはありますから! ちゃんと赤ペンでト書きに加えましたから!」
 「こ、こら、何するんじゃ、服を引っ張るなー!!」
 「いいですか、巨乳なんて良いものじゃありません。アレみたく胸に栄養ばかりいってお馬鹿キャラになりますよ」
 望のパートナーのヴァルキリーノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)が、衝撃を受ける。
 「ひどっ! て、劇でのわたくしの出番これだけ!? こうなったら、勝手にアピールですわ! 由緒正しき名門のこのわたくし、ノート・シュヴェルトライテが見事にウィニングとやらを捕まえて見せますわ! お〜ほっほっほ! 台詞が説明くさい? 当たり前ですわ! 設定崩壊ビーム対策の為に自由設定を白紙にしてきたのですから! あ、痛いっ! 左右のロールをドリルドリルいいながら、引っ張らないでくださいな!」
 「このお馬鹿! 髪型とか性格とか外見とか自由設定以外の設定もあるでしょうに! というか、その説明口調でアクションの文字数がいっぱいいっぱいなんですよ! このお馬鹿! それに、アクション投稿時の自由設定だから、リアクション公開時には確認が取れないんですよ!」
 「な、なんですって!?」
 望のツッコミに、ノートが衝撃を受けているころ、メイコ・雷動(めいこ・らいどう)とパートナーのヴァルキリーマコト・闇音(まこと・やみね)が騒いでいた。
 「MK5、聞いたことがある! イロモノ揃いの鏖殺寺院の中でもいろんな意味で危険視されてるという話だ。しかし、設定が変えられるとは……わ、我もビーム浴びるぞ〜!」
 「まこち。あんた、既に壊れちまってるよ」
 「くぅ〜! 名門シュヴェルトライテ家の金髪ドリル!」
 ヴァルキリー相手だと勝手にライバル視するマコトが、ノートを見てわめく。
 「あちゃー。まこちが一番コンプレックスありそうなお嬢さんだね」
 「シュヴェルトライテ殿、さあ、一緒にビームを浴びて、いざ勝負!」
 「……あ、気づいてないみたいだけど、都合の良い設定になれるわけじゃないぜ……聞こえてない……行っちゃった」
 マコトが舞台に乱入する。
 「さあさあ金髪ドリル! 我と勝負だ!」
 「なんですって? 挑まれた勝負、受けないわけにはいきませんわ!」
 手袋を投げつけられ、ノートがマコトに向き直る。
 「そんなことより、おしめ換えましょうね!」
 「ぎゃあああ!! だから、やめろと言っておろうがー!!」
 望はガン無視して、アーデルハイトの腰に手を伸ばす。
 「ああ、エリザベートおおおおおおおおおおお!!」
 エルは、絶叫しながら、エリザベートの唇にキスする。
 「!? ちょ、何するですぅ!?」
 「ありがとう、最初の妻アーデルハイト様! ありがとう、二人目の妻エリザベート校長! キミたちのおかげで楽しかったよ! ボクはここに、生まれてきた最初の妻の面影もある赤ちゃんを必ず立派に育てると誓う!」
 エルは浸りつつ、宣言する。
 「ウィニイイイイイイイイイイイイイイング!? どの辺で感動しろっていうんだー!!」
 ウィニングが、設定崩壊ビームを舞台に放つ。

 しかし。

 「ふふふ。キミの攻撃は通用しない! なぜなら、崩壊したのは「劇の設定」だけだからだ!」
 「貴方の崩した設定は劇の登場人物としてのアーデルハイト様の設定なのですよ!」
 エルと望が勝ち誇って叫ぶ。
 「な、なんだとおおおおお!?」
 「ほう。では、これ以上こんなことを続けなくてもよいわけじゃな?」
 「よくもセクハラしてくれましたねぇ!!」
 アーデルハイトとエリザベートが、思いっきり魔法をぶっ放し、エル、望、ノート、マコト、メイコがぶっ飛ばされる。
 「ちょ!? なんであたしまで!? うんちょう タン(うんちょう・たん)を調べたかったのに!?」
 メイコが叫ぶ。

 そんな中、ヤジロ アイリ(やじろ・あいり)が、ウィニングの前に飛び出す。
 「真面目なこの俺を適当に設定崩壊させてみな!」
 「なんだとウィニイイイイング!」
 かくして、アイリはビームを浴びる。
 「ああ、封印の眼鏡が!」
 ビームの衝撃で、アイリの黒縁眼鏡が壊れる。
 緑から赤に変わった目を押さえ、アイリが叫ぶ。
 「くっ、深淵の吸血鬼、『ブラッディシリース』の狂気が! このままでは俺は、血に飢えた獣『ブラッディアイリ』と化してしまうっ!! くっ静まれ。静まるんだ、俺のブラッディアイ!」
 しかし、黒いオーラと牙をむき出しにして、アイリは暴走する。
 「血を啜らせろぉおおお!!」
 「ぎゃああああああ! またセクハラされますぅ!」
 「こっちくんなざんす!」
 エリザベートとざんすかに襲い掛かり、ボコられるアイリを見て、アーデルハイトがつぶやく。
 「うーむ、やはり、このビームはろくなものではないのかもしれんのう。だが、しかし……」
 実は、アイリの意図は、「邪気眼系吸血キャラ」になることで、アーデルハイトを設定崩壊ビームにげんなりさせることだった。
 他にも大勢の設定崩壊を見ていたアーデルハイトを、ちょっと考え直させるのに成功する。