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リアクション
そして呆然とするダンツオを残し、バーストダッシュで、別の集団に目星をつける。その次には、涼は極力戦う時はエリート層と思しきものと戦った。
「あんた、上級隊士なんだってな…俺は下級隊士が言ってたぞ。『もう、我慢が出来ない』『許せない』『クーデターだ』ってよ。俺はあんたたちと同じ、上級層の出身だから、あんたたちとは戦闘したくなくてね…ただ、話を耳には入れておいてやりたいと思ってな」
と、嘘をつき、戦闘に関してはできるだけ混乱を大きくさせるため自分からは極力控える。
「…本当なのか」
バッソ派の上級隊士は情報攪乱のせいもあり、混乱して居るようだった。
「自分で確認するといいさ」
首尾よく混乱させることに成功すると、涼はリリィと【バーストダッシュ】を使い戦闘場所を抜けて奥へと急ぐ。
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、いがみ合っているバッソとダンツオを発見する。
「どういうことだ、バッソ! この戦いが終われば、庶民層の、そう、我らダンツオ派を排除つもりなのか!」
「ダンツオ、貴様も我らに対して、クーデターを起こそうとしているそうだな、好い加減、愚かしい連中だと思っていたが、そこまでとはな!」
「何を!」
すっかりと今までの影響もあって、判断力が衰えているふたりを刺激するつもりの美羽は、ふたりの前に現れた。
「あんたたちが、バッソたんとダンツオたん? だよねえ? …私ねぇ、すっごい強いの。弱い人だと、可哀想だから、強い相手としか戦いたくないんだけど、あんたたちはどっちのほうが強いの?」
その言葉にバッソとダンツオが「俺のほうが強い!」と更に仲違いをさせることとなった。
ふたりは情報攪乱などのせいで、本音が出てきてしまっているのだ。
今までの抑圧もあったのだろう。
「そっかー大変だね」
美羽はそういうと、いきなりブライトマシンガンでSPが続く限り、バッソとダンツオに弾撃を繰り出す。
さすがのバッソとダンツオはそれを避けたが、部下達が数名、犠牲となった。
丁度、バッソとダンツオの仲が険悪になるのを待っていた葉月 ショウ(はづき・しょう)や、エヴァルト、ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)も攻撃に参加する。
ショウは隠れ身を使い、物陰や人影に姿を隠しながら近づきブラインドナイブスでグサリと一撃をダンツオに与えようとするのを、察知した部下が
「ダンツオ様! 危ない!」
と身を挺して、守り、自分が刺されてしまう。
「くそ…! ダンツオを討ち取れば、確実にバッソ様のためとなったのに…!」
倒れていたバッソ隊の隊士の服を着用していた葉月はわざとそんなセリフを吐く。
「ジョヴァンニ! くそう、お前はバッソの手先か!」
ショウに向かってダンツオは、腕に装着していたスティレットでショウに斬りかかるが、ショウも籠手型HCでそれを防ぐと、隠れ身を使い、姿を消してしまう。
今度はエヴァルトが隠れ身のスキルとブラックコートの効果で忍び寄り、ブラインドナイブスのスキルでバッソの顔を狙うが、顔に一筋の傷をつけることが出来ただけだった。
しかし、バッソは他の連中からみても確かに美形であり、バッソ自身、自分の美貌に自信をもっていたのだ。だから、顔にかすり傷をつけられただけでも、その神経は崩壊へと向かいはじめる。
「な、なにをする!!」
ヒステリックに叫ぶバッソ。
「…さらに良い男に整形してやったぞ。いい顔になったじゃないか、これでダンツオ様もお喜びだ!」
とエヴァルトもダンツオ側の兵士のフリをしながら嘲笑する。
ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)は、アルマゲストたちとは違う手法で、記録してあった赫夜の余裕綽々な振る舞いを、メモリープロジェクターで投影し、気を散らす。
「赫夜たちは、すでにバッソ隊と手を組んだようだぞ」
「いや、ダンツオが手を貸したようだ!」
ショウやロートラウトが声音を変えて、戦闘中の煙幕ファンデーションの中で、混乱度を増すため、流言蜚語してまわると、ダンツオもバッソもどう指揮を取って良いか、うろたえはじめた。
そんな中、最も不幸であったのはダンツオではなく、バッソであったろう。
諸葛涼 天華(しょかつりょう・てんか)がバッソの「エリートとしての矜持」に目をつけ、幻覚に掛けたのだ。
まず目を合わせた瞬間、【その身を蝕む妄執】を仕掛けて幻覚を見せる。バッソの心の中にはたったいま傷つけられた傷が全身に広がり、ダンツオやダンツオの部下達に嬲られ、拷問をかけられると言う恐ろしいものだった。
さらにその深層心理の中に、過去に父から受けた凄まじい折檻に近い訓練がよみがえってくる。
『アミルカレ、オマエハバッソイチゾクノアトツギダ。マケルコトハユルサレナイ』
アミルカレ・バッソはエリート貴族のもとに生まれなかった方が幸せだったのだろう。
一般人であれば、本好きの優しい男性として、一生を過ごしたかも知れない。
バッソはもともと、精神的には惰弱なところがあったが、それを矜持で包み込み、バッソの家の名を汚さぬよう、ここまで登り詰めたエリートだったのだ。
「どうだ? 恐ろしいものを見たか? 地を這いつくばったか、ダンツオたちに無様に切り刻まれたか。お前の未来はそうなるのだよ?」
その言葉が引き金になってしまったようだった。
バッソの元来の精神のもろさが露呈し、何かをわめくとオートマティックライフルを構え、敵味方なく、射撃し始めたのだ。
「バカにしやがってバカにしやがって!!」
そのバッソの連続射撃が止まったのは、ダンツオの繰り出したスティレットがバッソののど元を貫いたためだった。
白目を剥き、血を吐いて倒れるバッソ。
「…哀れな男だ…」
ダンツオもそれなりに感じるところがあったのか、バッソの目を閉じさせると、そのまま隊士達に
「王座の間へ、退避する。各員、撤退せよ! バッソ隊長は無念の死を遂げられた! これ以降は私、エンリコ・ダンツオに従え!」
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