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ガーディアンナイツVS空賊ブラッティローズ

リアクション公開中!

ガーディアンナイツVS空賊ブラッティローズ

リアクション


ACT5 ソーン3兄弟

 青い空に火線が伸びて、激しい銃撃音や爆発音があちこちで鳴り響く。
 ブラックローズ号に向かうガーディアンナイツの部隊をほとんど無視して目標である商船へと一直線に向かってきた敵集団の姿が、だんだんと肉眼でもはっきりと見えるようになってきた。
「……ライトニングと呼ばれた僕の射撃の腕を見せる時が来たようだな」
 機関銃手として護衛船の銃座についていたガーディアンナイツの藤原 雅人(ふじわら・まさと)は、そうつぶやく。
 そして敵たちを照準サイトに捉えるとトリガーを引き絞った。
「もらったあッ!」
 連続する射撃音と共に銃口ではマズルフラッシュが絶え間なく生じ、次々と空へと飛び出していった数百発の銃弾は容赦なく敵集団に襲いかかる。
 だが敵も止まっているわけではない。その射撃を受けて固まっていた敵たちは空中で一斉に散開する。
「逃がすか!」
 雅人は狙いを定めた敵機を追いかけて機関銃を動かし、射撃を続行。敵機の後を火線が追う。
「雅人様!」
 と、雅人の後ろでその様子を見守っていたパートナーのローゼ・ローランド(ろーぜ・ろーらんど)が機関銃の音に負けないように声を張り上げて言った。
「なんだ、ローゼ?」
 雅人は一旦銃撃をやめて、ローゼの方を振り返る。
「相手は高速で移動しているので、敵機を直接狙うのではなく、未来位置を予測してそこに向けるべきだと思います」
「……えっ、あっ、ああっ!」
 雅人はローゼの言ったことを聞いて、何かに気付いたような表情を浮かべて声を上げた。
 だがすぐにその表情を正すと、コホンと咳払いをして言った。
「そっ、そんなことライトニングと呼ばれた僕には最初からわかっていたさ。まあ、いまのはちょっとした試し撃ちだよ、試し撃ち。うんうん、そうそう」
「あっ、そうだったのですか。それは出過ぎたことを申しました……ところで、雅人様がライトニングなどと呼ばれていたことははじめて聞きましたが?」
「えっ、ああっ、そうだな。そう! 君と出会う前にそう呼ばれてたことがあるんだよ、アハハハッ!」
 わざとらしい笑いで誤魔化す雅人。ローゼは少し不審に思ったものの深くは追求することはしなかった。
「とっ、とにかく! ローゼ、君は僕のサポートを頼んだ!」
「わかりました雅人様。私が距離や方角をお教えしてサポートしますので一緒にがんばりましょう」
 ローゼのその言葉を聞くと、雅人はニッと笑って再び機関銃を空に向けた。
 そしてローゼの指示を受けて雅人が機関銃で敵を狙い撃つと、数機の敵が弾に当たって火を吹いた。
「大切な美術品、空賊たちに奪われるわけにはいかないよ!」
 と、その被弾した敵に向かって突っ込んでいくのは綺人が乗った小型飛空挺。
「えいっ! やあっ!!」
 雅人の攻撃で被弾し、動きの鈍った2機の間をすり抜ける瞬間、綺人は手にしていた忍刀を華麗に振るう。
「くそっ!? 脱出だぁ!!」
 その攻撃が致命打となり、2機の飛空挺は空中で爆発した。
「よし、次だね!」
 綺人はそう言うと飛空艇を操って再び敵に向かっていく。
「こっちに来ちゃダメです!」
 そう叫びながら商船の上空を守るのは綺人のパートナー・クリス。
 彼女は闘気の波動を敵に放ち、商船に近づいてこようとする敵を打ち倒していく。
 そんなクリスの死角から敵が接近してきた。だが彼女はまだ気付いていない。
「もらったぁ!」
 空賊はハンドアックスを振りかざし、クリスに襲いかかる。
 クリスはその時になってようやく脅威に気付き、後ろを振り向いた。
「えっ……きゃあああっ!」
「クリス――危ない!」
 だがそこへ、クリスの危険を察知した綺人が猛スピードでやってきて、敵の腕を斬りつける。
「ぐあああっ!」
 敵はその攻撃を受けて武器を落とした。
「クリス、いまだよ!」
「アヤ……はいッ!」
 クリスは自分を狙っていた敵に武器から繰り出した爆炎破をお見舞いし、撃退した。
「うおりゃッ!!」
 と、綺人やクリスと同じように商船を守るように動いている久も、小型飛空挺を操り敵と渡り合っていた。
 槍を得物とする久は空賊機を追って急旋回に入り、敵の後ろを狙う。だが敵も簡単にはやらせまいと、旋回を行う。
 2機の飛空挺はもつれるように旋回を繰り返し、お互いに距離を縮め、後ろを取ろうとせめぎ合う。
「ちょこまかと動きやがって!」
 と、久が飛空艇の機首を上げて空高く舞い上がる。そしてある程度の高度まで達するとそこから敵機に向かって一気に降下を始めた。
 急降下によって得られた速度エネルギーによって速さを増した飛空挺に乗る久は、槍を前に突き出して敵機に迫る。
「終わりだ!」
「――うわぁっ!?」
 空賊機は弾丸のように突っ込んできた久をかわしきれず、槍に貫かれて爆発した。
「ふぅ、一丁上がりと――さて、豊実さんは大丈夫か?」
 久はそう言ってパートナーの姿を探す。
 その豊実はというと――。
「美術品を奪おうなんて奴らは許さないッ! 一隻でも多く落として、二度と美術品には手を出せなくしちゃうよ!!」
 そう叫びながら空賊機を執拗に追い回し、激しい攻撃を加えているのだった。
「……こりゃあ、心配する必要はなさそうだな」
 久は苦笑いを浮かべてそう言うと、さらに周囲を見渡した。
「そういえば、ルルールの姿も見えねぇな」
 久が探していたもうひとりのパートナー・ルルールは何をしているかというと、空飛ぶ箒に乗って商船の影に隠れていた。
「んふふっ、鬼さんこーちら」
 そうとは知らずに数機の空賊機が守りを固めていたガーディアンナイツの隙をついて商船へ近づいてくる。
「ヒャッハー! 俺たちがお宝に一番乗りだぜ!!」
 と、敵が迫ってくるのを確認したルルールは、敵の意表をついて商船の影から勢い良く飛び出した。
「なっ、なんだァッ! 待ち伏せか!?」
「はぁい、セクシーなお姉さんからあなた達にプレゼントよ」
 ルルールはそう言いながら片手を天高く振り上げる。するとその掌から紫電を帯びた魔力の塊が生じていく。
「――んふっ、サンダーブラスト☆」
 そしてそう言うと、ルルールは片手を前に突き出した。
 すると魔力の塊は大きく膨らみ、弾け、稲妻となって空賊たちに襲い掛かる。
「うがががががっ!」
 空賊たちは滝のごとく打ちつける稲妻に体を真っ黒に焼かれ、プスプスと煙りを立ちのぼらせた。
「あへっ、あへへっ……」
 そして白目を剥いて、ドカドカと商船の上に墜落していく空賊たち。ルールルはそれを見てクスクスと笑いながら、彼らを魔法の鎖で縛り上げるとこう言った。
「あなた達は殺さないであとでたぁーっぷり可愛がってあげるわ♪」



 そんなルルールの姿を護衛船から眺めていた新堂 祐司(しんどう・ゆうじ)は、口笛を鳴らす。
「やるねぇ、あの子。こりゃあ、俺様も負けてらんねぇな!」
 祐司はそう言うと銃座について機関銃を空へと向けた。
「そらそら、踊り狂え!」
 そして商船に接近してくる敵に向かって、銃弾をばら撒く。
 と、見境のないその射撃に腹を立てたのか、敵の一機が護衛船に向かって突っ込んできた。
「的が向こうからきてくれたってか!」
 そんな敵の姿に気づいた祐司は素早く機関銃の向きを変え、そいつに照準を合わせると撃鉄を引いた。
 空賊機は祐司の攻撃に慌てた様子で上昇し、銃弾をかわす。
「へっ、俺様から逃げられると思ってんのか!?」
 だが祐司は敵を逃がすまいと追撃し、銃弾を発射し続ける。態勢が悪くなったその空賊機は空中で反転すると護衛船から逃げるように遠ざかっていった。
「くそっ、逃げられちまったぜ」
 それを見た祐司は悔しそうにそうつぶやく。だがすぐに気を取り直し、商船というエサに近づく他の獲物を狙って攻撃を開始した。
「よし、それじゃあやりますか」
 と、祐司と同じ護衛船に乗るの紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、舳先に立って屈伸運動をしながらそうつぶやいた。
「んっ、やるとは何をやるのだ唯斗?」
 護衛船から商船に近づく空賊たちを攻撃していたエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)は唯斗のつぶやきに首をかしげながらそう聞いた。
 すると唯斗はエクスを振り返り言う。
「ああ、セイニィがやってた八艘跳びってやつ」
「は? 八艘跳び!? ま、待て無茶だ!」
「大丈夫だって、足場はたくさん飛んでるし。というわけでエクス、サポートは任せた。ちょっと行って来るわ」
「こ、こらッ! 勝手なことをするな! やっ、やめんかぁーっ!!」
 エクスは必死にそう叫んで唯斗の行動を阻止しようとするが、唯斗は聞く耳持たずという感じで舳先から空へと飛び出してしまった。
「まずは、あの飛空艇に――……!」
「ばっ、バカモノ! だからやめろと……って、あれ?」
 恐ろしさのあまり目を閉じたエクスだったが、唯斗のことが心配になりすぐに目をあけて見てれば、少しバランスを崩しながらもなんとか唯斗は敵船の上に飛び乗れていた。
 その光景を見てエクスは目をパチクリさせる。
「で、出来とる……ああ、もう! 心配して損したわ!」
 さきほどまで取り乱していた自分が少し恥ずかしく、それを隠すようにエクスはひとり怒った。
 と、飛空挺にいきなり飛び乗ってきた唯斗を見て驚いた空賊は、激しい動きで空を飛び、彼を振り落とそうする。
「くそっ、なんだコイツは!? 落ちやがれ!!」
「うわぁっ、うわわっ!!」
 唯斗はセイニィのように上手く攻撃しようとするが足場が安定せずに力が思うように出せないばかりか、しがみついているので精一杯だ。
「唯斗、一度戻れ!」
 それを見たエクスが唯斗にそう叫ぶ。唯斗はその言葉を聞いて飛空挺から飛び降りて、護衛船の甲板へと体を転がして着地した。
「くそーっ、やっぱりセイニィのようには上手くいかないか。まだまだ修行が足りないのかな」
「うむ、唯斗はまだまだ力不足なのだ。だからわらわが力を貸してやろう」
 そういうとエクスは唯斗にパワーブレスをかける。
 そして先ほど外から見ていて気付いたことを唯斗にアドバイスとして聞かせた。
「そうか、わかった。今度はもっと上手くやってみる」
「うむ、行ってこい!」
 エクスに送り出された唯斗は、飛空挺の動きの先の先を読みながら軽身功で敵機に飛びつくと今度こそはと敵に一撃をお見舞いする。
「うわあっ!」
 動力部分をやられた飛空挺は爆散。唯斗はその爆発風を追風にしてまた空に飛び出し、別の飛空挺へと飛び移って攻撃を繰り出す。
「……あら、面白いことをしている人がいますね」
 そんな唯斗の姿を見て、そうつぶやいたのは藤原優梨子。
 彼女はニコリと笑うと小型飛空挺の出力を上げて、唯斗に接近していく。
「よし、次はアイツにしよう!」
 と、唯斗はこちらに向かってくる優梨子の飛空挺に気付くと、空賊機は足蹴にして飛び掛った。
「もらった!」
 飛び掛り様に渾身の一撃を放つ唯斗。その攻撃に優梨子の飛空挺は派手に煙りを吹き出した。
「きゃあっ!」
 優梨子の悲鳴を乗せて、飛空挺はそのままきりもみ回転をしながらは空の中へ消えた。
「次!」
 撃墜を確認した唯斗は攻撃の反動を利用して再び空を舞う。だがそんな彼の横に突如として黒い影が現れた。
「ふふっ、あなたに次はありませんよ」
「えっ!?」
 唯斗が目を見開いて横をみると、そこには背中から黒い影で出来た翼を生やした優梨子が悠然と佇んでいた。
「お返しです」
 と、優梨子が手にしていた忘却の槍を振るって唯斗を狙う。
 唯斗は空中で姿勢を変えられない状態だったがなんとか体を捻ってそれを回避しようと試みた。
 だが無常にもそれは叶わず、優梨子の槍は唯斗を貫いた。
「がは――ッ!」
「ゆっ、唯斗ぉッ!!」
 その光景を護衛船から目撃したエクスが張り裂けんばかりの大声を上げて叫ぶ。
「ふふふっ、もずのはやにえのようになった気分はいかがです? 痛いですか? 苦しいですか?」
 串刺しになっている唯斗に笑顔を向けながらそう訊ねる優梨子。
 唯斗は血反吐を吐きながらも、そんな優梨子を睨みつけて言った。
「こっ、殺すなら……早くしろ!」
「私は感想が聞きたかったんですけど……しょうがありませんね。さようなら」
 そう言うと優梨子は唯斗の体から槍を引き抜いた。
 支えを失った唯斗はそのまま下へ下へと落下していく。
「いやああッ! 唯斗っ!! 誰か、唯斗を助けてくれ!!」
 空を飛ぶすべを持たないエクスが護衛船の縁まで駆け寄ってそう叫んだ。
 と、そんなエクスの横を一機の小型飛空挺が猛スピードで駆け抜けていく。